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大好きな人にアイアンクローされた話

私は何かに夢中の人に夢中になるらしい。
現に今も、推し活女子の推し活をしている。

だが、人が何かに夢中になっている時の姿ってものは、魅力的に映るものだ。
猫は普段から可愛いが、ちゅ〜るを前にすると更に可愛く見える。
どんなに目を剥き爪を立てても、真面目に必死で好きが溢れる時の推しは尊い。

猫、飼ったこと無いけどな!

私はBリーグの推し活の最中、偶然見つけた違う選手の推し活をしている夢子さんと(一方的に)出会った。
彼女の献身的な推し活に心を掴まれた私は「推し活をする夢子さんの推し活」を始める。
天皇杯で私の最推しのチームが夢子さんの最推しチームに負けた。
戸惑う情緒、震える拳、乱れたままのInstagram。突然の頭痛もあって急いで横になった私の夢に出てきたのは・・・・

全てが夢オチだったらなぁ、なあらすじ。

母上様、お元気ですか?

普段は大体、どんな事に対してもあっけらかんとした私だが、久しぶりの情緒の乱気流と、少し早い春の訪れにノックアウトされていた。
ギリギリぶっちぎり最強に凄い頭痛ではないが、立って振り向いたら目眩する気がする、小指のささくれくらいの頭痛にダウンした。

これを言い訳にInstagramの整理をサボった訳では断じて無い。
頭が痛い時のスマホはよろしく無い、見つめ合う画面のブルーのライトで夜空に描く色とりどりの恋模様は、睡眠妨害どころか痛みを増幅させる。

よし、寝よう。

大袈裟にコメカミをさすりながら、私はそそくさとベットに横になった。
あぁ、ここは天国だ。
人類は悲しいモンスターの私を伴侶に選んでくれないし、もういっそ布団と結婚したい。
心身ともに疲れ切った私を癒すのは、毎晩帰りを待っていて、黙って優しく私を抱きしめて温めてくれるこの羽毛布団だけなの。

でも、布団って誰とでも寝るのよね。

つくづく救いようねぇなぁ、私。
そうは言っても私だって歳の数だけ恋をした。浮気や不倫はしていないが、お付き合いした人の数だけ夜を共にしている。
布団のこと言えないよ、皆んなそんなに綺麗に生きれない。聖人君主では無いのだ。

私は夢を見た。

多分何かの合宿に来ている。
大きな黒いNIKEのバックパックを背負っていて、それをバスから降りた数人の女子達と、体育館の奥にある小部屋に固めて置いた。
全員、スポーツウェアを着ていて口々に練習内容の話をしている。
体育館に戻ると、何かの式典の準備なのかパイプ椅子の準備がされていて、まばらに人が座っていた。
「あ、荷物を入り口側に移動しておかないと」私は咄嗟に思う、式典が済むと私は一番早いバスに乗って宿泊地に行かなくてはならないからだ。
慌てて奥の小部屋に向かう私の顎を、誰かが突然掴んだ。

え?

それは、見紛う事無き富樫勇樹選手だった。

夢の中で私は、お揃いのスポーツウェアでパイプ椅子に座った最推しである富樫勇樹に、あろう事か顎を掴まれている。
それも、一昔前に流行った「顎クイ」なんて胸キュンものではない。アイアンクローだ。左手でガッチリと口元を覆うように顎を鷲掴みにされている。
少し冷たい指先の感触、そして細く可愛い小指がぎゅうっと頬に食い込み、少し前屈みで立ち止まる。
「なんふ(ス)か?」
「俺、スマホ忘れちゃったんだけどどうしよう?」
「わたふのふはう?(私の使う?)」
「よかったー」
満面の笑み。

か、可愛いかよ。

そこで目が覚めた。
余韻に浸る事、約20分。時に人はそれを“二度寝“とも呼ぶ。

最推し(バスケ選手)にプロレスの技かけてもらうとか尊すぎる。
昇天しかけた、今きっと空から光降りててちょっと背中浮いてる、5ミリ。

プロレスラーの最推し、YAMATOさんにヘッドロックかけてもらった時は、違う意味で昇天しかけたが、まさかバスケ選手の最推しにアイアンクローをかけられるとは!
いやはや、生きてて良かった!
ちなみに実際のアイアンクローはコメカミを締めるブレインクローや、首(頸動脈)を締めるコブラクローが主流です。物騒だね!

これはもうあれだな。最推しの啓示。
夢子さんばっか気にしちゃって、俺のこと忘れてない?だな。ごめんね、とがち。

よし、通常運転だな。よく寝たから頭痛も引いている。

ちなみにだが、私の最推しはかなり強火の推し活をしている。鏡と言ってもいい。

富樫勇樹選手は田中大貴選手のオタク(ズッ友)で有名、一目惚れから仲良しを拗らせた、ある意味かなり強火の田中大貴オタク。
一括りに推し活仲間と言っても過言ではない。

プライベートでもたびたび2人の公開デートが公式(田中大貴のアカウント)から供給される。
ちなみに誘って予定をたて、全ての手配をする富樫勇樹選手と思われる。
噂(姉)によると支払いは田中大貴選手らしい。なんの情報筋なのかはわからん。

去年は何かと不遇だった田中大貴選手へのメッセージも、SNSからだけではなく、ベストジーニスト授賞式でテレビカメラの前で伝えていた愛らしい年末の記憶も新しい。

「大好き・・・っていうか。あの、大好きな選手と同じ名前のジーンズ」発言は聞き捨てならなかった。
言い直しても言い直せない程の強火なのね、富樫?!

選手同士のリスペクトはあるが「目標にしている」「凄い選手」ではなく「大好き」って。
なぁ、大好きってなに?好きでえぇやん。
「好きな選手」やったら聞き逃せたけど大好きは、大好きは聞き捨てならんやろ?!

拾え!

全私よ聞き捨てるな!最推しが自分の最推しにする愛の告白を全力で拾え!!

私の最推しには最推しがいて、推し活をしている姿が更に推せる。
だが、田中大貴と言えば、比江島慎だろう!と言う人の方が圧倒的に多い。先輩後輩関係やもんね。

いや、あの夢子さん!喧嘩を売っている訳ではありません!

言い訳モンスターの日常↓

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