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旅先 睡眠 難しい

きっとこのホテルには妖怪「枕返し」がでる。

夜寝て、朝起きてみると、枕が思わぬ方向にいっている事がある。
これは「枕返し」と言う妖怪が夜寝ている間に出て枕を運ぶのだと言われている。
また、その部屋で死んだものの霊が「枕返し」となっていたずらするとか言われている。

水木しげる「日本妖怪大全」枕返しより抜粋
枕返しはどーこだ?

だが、出たところで「枕返し」は、諸説あるがくしゃみが出るくらいに無害である。
下手をすれば首を寝違える可能性はあるが、寝ている間に運ぶのだ、起きていたら運ばれる事もない。

『枕が変わると眠れなくなる』この言葉を人生で一度は聞いたことがあるだろう。

斯く言う私もその口の人だ。

もしもオリンピック種目に「女子・枕・団体」があっても、候補にすら上がらない。
そもそも人と寝るのも苦手なので、シングルならアジア予選までは行くかも知れないが、準決勝敗退が目に見えている。
日の丸を背負う資格もない女だ。

寝る事に対して不器用すぎて、自室でならやっと安眠できるようになったが、旅先は全くと言って良いほど眠れやしない。

若い頃は眠れなくても問題なかった。
やれ遠征だなんだとあちこちに出向き、数日寝なくても平気でコンサートにも参加していた。
だが、30を過ぎると翌日に謎の疲労感と目が血走った。テニスの王子様の切原赤也の“赤目モード“みたいになる。

時の流れに身を任せすぎた結果、ネタが古すぎて画像が無い。
赤目モードは見つからず。

切原赤也ならビジュアルも然る事ながら、進化の先にあるのでむしろチームとしては有難いが、現実は常に残酷だ。
私なら赤い目は恋をしていた証にもならないし、眠気が吐き気になり同行者の気分を削いでしまう。
これはいただけない。

眠れないのは本当に枕だけの問題なのか?

不眠の理由第一位にスマホがあげられるが、最弱の網膜を持つ私はスマホが携帯電話と呼ばれていた頃から不携帯なくらい操作しない。
寝る前など以ての外、布団の中で紙の本で読書をする楚々とした女だ。

アロマも試したが、私は白檀が好きなので「線香臭い」「幽霊がいる」と騒がれている間にお気に入りのお香が販売中止になったが、あってもなくても結果は同じだった。

「そもそも、ショートスリーパーになればいいじゃない?」とオタク仲間にアドバイスを受けたが、羽毛布団によるプロレスの技のチョークスリーパーホールドで落とされて8時間睡眠を欠かせない。

やっぱ枕かなぁ?

そんな私は来月、姉と一緒に1泊2日でバスケ観戦の旅に出る。
1月の沖縄は疲れ過ぎて有無を言わさずまぁ2時間は寝れた。だが今回は大阪から名古屋なのでお気楽旅。
更に、4月には知り合いと一緒にインドに1週間くらい旅だつかも知れない。

もう眠れない気しかしない。

そもそも寝ないと人はどうなるの?

1983年にラットを使った睡眠の実験がる。
2匹のラットを壁で仕切った回転台に乗せ、下に水が入った水槽を置く。ラットAには脳波を測定する機器に繋がれていて、睡眠を観測すると回転台が周り、壁に当たって水に落ちてしまう。
必然的にラットAは、大嫌いな水に落ちない為に回転台を走り続けなければならなくなる。眠れても一瞬しかない。
ラットBは呑気なもので、ラットAが眠った一瞬だけ回転台と逆に走ればいい。たっぷり睡眠をとって、すっきりと颯爽と走れば水を免れる。

この実験の結果、睡眠を奪われたラットAは5日以内に死亡した。

実験を続けて生き抜いたラットもいたが、毛並みはボサボサ、肌は荒れ果て、歩行困難になり、遺体の解剖の結果内臓も潰瘍や内出血などなどがみられた。

睡眠中の脳内では、グリア細胞という、普段は脳の日常的に起きる老廃物や、神経細胞間の不要な接続を除去するのを手伝ってくれている。
そうすることで、シナプスネットワークの一部が取り除かれ、残りの有用な部分を強化してくれる。
よく寝ると頭がすっきりとして、いつもよりいろんな事が捗るのは、この細胞のおかげなのだ。

だが、このグリア細胞は断眠すると暴走するらしい。
そうなると完全に健康な脳組織まで無差別に破壊する。
慈悲の気持ちで可愛がり餌をあげていた野良犬に突然噛まれて、狂犬病までもらったような仕打ちだ。*野良犬に餌をやるのは優しさではないので、然るべき対処をしてください。

当たり前だがやっぱり寝るしかない。

大谷翔平スタイルをとって、今使っている枕と旅だつ事も考えたが、荷物が一気に増えるし、外を持ち歩いた枕で寝るのは嫌だ。
睡眠に特化したホテルも宿泊したが、料金がシビアになる。

あぁ困った

なぜ私はどんな枕とも寝れる女になれなかったのだ。
あっちの枕も、こっちの枕も取っ替え引っ替えしては夜を楽しみ「このアバズレ」と罵られても自慢の黒髪を搔き上げて、飄々と真っ赤なルージュで笑っているニヒルな女になりたかった。

旅先でも安心してぐっすり眠り、妖怪枕返し達にも最高の枕返しタイムをお届けし、枕返しともWin-Winの関係を築きたい。
どうしたものか、と久しぶりに引っ張り出した妖怪大全を摘み読みしていると、気になる妖怪を発見した。

枕返し?それ、俺のことじゃね?と東北からエントリーしてきた妖怪「座敷坊主」である。
座敷坊主は昔、その家に泊まった坊主が殺されて怨霊になり「枕を返す」ようになった。

昔は枕にはそれを使っているものの生き霊がこもっていると考えられていたので、枕を返されるということに一種畏怖の念をいだいており、今では想像のつかないほどであった。
枕を返すということは、その枕をつかっていたものを死に導くことであるらしい。

水木しげる「日本妖怪大全」座敷坊主より抜粋

枕、返されちゃなんねぇ!!

寝なくても死、寝ても枕返されると死。

ついに八方塞がった。


参考文献↓
図解「日本妖怪大全」水木しげる

「ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学」リック・エドワーズ、マイケル・ブルックス、藤崎百合・訳

気ままな日常↓

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