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なみのたたかい~探偵ナイトスクープ激闘編~

運命の1月11日

朝の10時に撮影クルーが我が家に来る。自分の家にテレビカメラが来ることも、なんならテレビに出ることも初めての私だが、全く実感がない。いい意味で美容室に行けなかった事とかが緊張を諦めにしてくれていた。

きっとみんなこんな感じで急に決まってバタバタ撮影するんよな。日常感出すためにとかな。

ぴったりの時間にクルーが到着し、一気に賑やかになる。車は2台で、1台は機材とスタッフ、もう1台はスモークが張られている出演者が乗る車だ。仏間にどんどん機材が運び込まれ、私はディレクターさんと軽い確認と打ち合わせ。

撮影クルーの皆さんがすごい速さでセッティングしているのを邪魔しない程度に邪魔しながら見学していると「これ、探偵からプレゼントです。家にたまたまあったそうなんで着てください」とビニールバックを手渡された。
中身を出して胸に大きく「HEAD LOCK」と書かれたスウェット!

因みにこれは仕込みとして使うと面白いんやないか?という探偵からのお心遣い、ありがたく頂戴して着させていただきました!

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カメラの位置も決まり、ピンマイクもつけて撮影開始。インターホンが鳴り玄関にお出迎え。扉を開けると、、、、

やった!石田靖さんや!!!

もう安心感しかない!

大阪で生まれ育ち、吉本新喜劇を見て育った私にとって、座長もつとめた靖さんは安心が布団持って来てくれたくらいの心地よさだった。

もう何も思い残すものはない。今日とゆう日を私の最高の社会的命日にできる。

何より好感度が高かったのが、直ぐに両親へ挨拶とお礼を言ってくれ、「お騒がせします」と仏壇に手を合わせてくださったことです。

家でのシーンは、依頼文の内容確認と、なぜYAMATOさんなのか、その筋肉が他で代用できない理由、靖さんの好きなレスラーとの筋肉比較。何故ヘッドロックに目をつけたか。技を受けたことはあるのか等かなりしゃべったと思う。

最後に靖さんが未経験の私にヘッドロックをかけてくれる事になった。その前にWikipediaで検索してみたところ「頭蓋骨固め」なる恐ろしい語彙に小さく息を飲む。

「俺もプロレス好きでな、レスラーなりたかってん!」爽やかに笑う靖さんの協力で人生初のヘッドロック体験。

「イ、、、、、、」

痛いの言葉すらでない。

耳の上からコメカミにかけてに強い圧力がかかり、頭の天辺の骨がポンって飛び出す感じ、まるで空気砲のイメージ。

もし読んでるあなたが河童なら皿が上にポンってなる感じが一番伝わると思います。

今まで意識したことのないこの骨。
記憶は高校生の時に他界した祖父のお骨を拾ったシーンにまでさかのぼる。あぁ、あの時、、、、最後にばぁちゃんが長い菜箸みたいなんで拾って骨壺の上にのせた人間の一番上の骨。あれが更に頂点目指してる。

あと、靖さんのセーターの柔軟剤いいにおいでした。


昼過ぎに兵庫県の須磨にあるドラゴンゲートの道場へ移動。


家族と共にロケ車で靖さんも一緒に移動。途中、ステーキガストでお昼ご飯。

そう、YAMATOさんと言えば肉。私はいつもプロレス観戦の前後は肉を食べる。今日はこのあと激しく動く予定なので、ハンバーグくらいにしておこう。少しでも消化を促進するために大根おろしも必要だ。

靖さん、ガストでも色々と気遣ってくれて嬉しかったです。


ついに道場に到着。須磨って海のイメージやから山奥でビックリ。海岸しか行ったことない、水族館とか。

靖さんが先におりて撮影再開、私たちは車で待機。ボケッと外を見ていたら、茶トラの猫ちゃんがいました!だが、ロケ車から降りることは許されず、スモーク貼ってるから撮影も無理でがっかり。

私だけ呼ばれてロケ車脱出。案内されたのはいつも見ているリングがドーンとある道場の中!会場で見るより大きい。そうか、いつも会場になるのはだいたい体育館、空間が広いのだ。

プロレスのすごいところは、毎回リングを解体して運び、また現地で組み立て、試合が終わるとまた解体する。移動式なんですよね。

まるでサーカス。

感動している私にスタッフが用意してくれたジャージを手渡し、着替えるように言われたのだが「更衣室に貸せる場所無いんですよ!」とのこと。

「申し訳ないんですけどここで着替えてください」

道場に入って左にあるジムのところにある物置に収納される。ここはなにやら見覚えのある小道具や、Tシャツがたくさん。これはこれで貴重な体験なのか?とりあえず男所帯にしては綺麗だったと思います。

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使い込まれたサンドバックの横を通り抜け、少し実感が湧いてくる。でもそれにしても

寒い!

暖房機器がないとは聞いていたが、まぁ寒い!山奥のこんなとこで猛者猛者したおっさんがウロウロしてたらイエティかなんかと間違われへんか?凍えながら全く要らぬ失礼な心配。

そしてまたしばらくロケ車で待機。緊張して吐くとか都市伝説だと思って育った私もさすがに憧れの人に会うとなると軽く鼓動が高鳴る。
こんな時はiPhone君のロック画面のYAMATOさんを見ていつも気持ちを落ち着け自分を鼓舞する。

YAMATOさん。私今からついに憧れのNo.1ヒーローのYAMATOさんに会、、、?

落ち着け私、今から会うのはYAMATOさんで、そんでいつも通り気持ちを落ち着けるために今見てるのもYAMATOさんで、ここにもYAMATOさんできっと車の外にもYAMATOさんで、俺がお前でお前が俺で、、、

助けてYAMATOさん、私の情緒が迷走してる。

これも全て愛ゆえか。

迷走しながら真実の愛に気付いていると、私だけ車の外に呼び出された。

「YAMATOさんおるで!」

靖さんの声に伸び上がって目を凝らすが、位置的に車に囲まれているせいで道場の中は見えない。でも地を割るような音と、太くてもよく通るYAMATOさんの声。はは~ん、なんで山奥にあるかわかった、これは間違いなく近所迷惑やからや。

豪快なふりしてご近所に気を遣い、くそ寒い山奥で日々鍛練に励むレスラー尊い(勝手な解釈)

勝手に尊ぶ私に靖さんから提案が入る「プロレスの事バカにしてる設定でいこう。YAMATOさんのプロレス愛を刺激して生意気な挑戦者のフリしてドッキリ仕掛けんねん。ほんで自分でヘッドロックに持ち込むんや」

ハハァ。それ、自分の体に生肉つけてコモドオオトカゲとかけっこしてたイモトさんのあれと一緒のやつやん。

「もう、肩とか突いたりしていいからめっっちゃ煽れ!怒らせろ!」その言葉に一瞬の躊躇。

だがもうここまで来たらやるしかない。むしろ、煽りはプロレスの醍醐味、経験させてくれるならなんでもやる。例え噛まれても相手はステキ筋肉プロレスラーのYAMATOさんであって、毒官を持ったコモドオオトカゲではない、血液凝固を妨げる毒を唾液と共に流し込まれ失血性ショックで命を落とす心配もない!

「はい!」「チョップとかしたれ!」「はい!」「でもやりかえされてもいけるか?」「は、、、チョップですか?」

プロレスのチョップといえば、胸板に水平に打ち込む「水平チョップ」が主流だ。私の場合、一応だが胸があるので少し上を狙うだろう。

鎖骨粉砕

物騒な四文字熟語が頭をよぎる。

鎖骨折ることってままあるよね。折れやすい骨やし。でも粉砕ってまぁないよね。そもそも私鎖骨折ったことないしね。でも初めてを憧れの人に捧げるとかなんか乙女って感じよね。私の鎖骨粉砕骨折をYAMATOさんに奪われるのか。悪く、、、ないだろう。この思考0、5秒。

「大丈夫です!」「え。ほんまに?」「はい」「前に同じ様な感じでYAMATOさん怒らせたことあるんやけど、ほんまにすごいからな?YAMATOさんのプロレス愛は。そいつめちゃめちゃ怒らして最後、須磨の海で絞め落とされぞ」

ここは山!大丈夫!

「やります、むしろそんな贅沢いいんですか!」「ゆうたな!覚悟はいいな?行くぞ」「はい!!!」

今思えば何の安全もない安全確認。

リングに続く坂を登り、たどり着いた先には轟音を立てながらスパーリング中のYAMATOさん。はわわわ、すごい!こんな近くでYAMATOさん、、、が服着てる?

誤解が無いようにお伝えしたい。私は基本、会場で観戦しているので、ショートタイツ姿ばかり見ている。リング YAMATOさん で私の脳内Wikipediaを検索すると”パンイチ”と出るくらいの固定概念がある。

✳︎私の脳内WikipediaのYAMATOさん例↓

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黒いスウェット姿のYAMATOさんが手を止めてこちらを見下ろす。靖さんとなにかやり取りしているがあまり記憶がない。なぜなら

出端で速攻私の固定概念ぶっ壊してくるYAMATOさんかっこいい!

だが感動に浸る暇なく、煽りの時間がやって来る。

これには本当に困った。私は初対面の人でも良いところを見つけすぐ好きになる特技を持っている。そう、私の心は鳩なのだ。平和の象徴と言っても過言ではない。暴言など吐けない。

無。

そんな私をリングの上から怒鳴るYAMATOさん。正直辛い、でもやると言ったからには完遂せねば。意を決し、、、

いや、めちゃ笑ってるやん!YAMATOさん!

そうだ、これはお仕事なのだ。思い直せたおかげですんごいイヤミを言い返せました。

このあと、靖さんの神の一声で暫くスパーリングを見学させていただいた。セコンド位置からリングに肘をついて眺める。思ったより高いので、160センチしかない私には少しキツいが、そこから見上げる景色は最高以外のなんでもない。

私の目の前でYAMATOさんがヘッドロックをかけた。「あれや!あれあれ!あれにもちこめ!」テンションあがる靖さん。正直、自分でヘッドロックに持ち込むなどどうしていいかわからず悩んではいるが、そんな事もどうでもよくなるYAMATOさんの、このかっこよさを伝えるのに相応しい言葉を私はまだ知らない。

YAMATOさんのお色直しをはさんでリングの上で今度は撮影。衣装に着替え髪をおろした姿にホッとする。ここからイラつかせ作戦開始なのだが、かっこいいからずっと見ていたくてただのストーカーと化す私。「なんでついてくんだよ!」と怒鳴られても響かない。

かっこいいあんたが悪いとしか言えない。

ここから家族が合流してリングの外の撮影が始まり暫く私たちは待機。

寒い。

動かないと眠ってしまうかもしれない、それこそ永遠に。いや、ここまで来て永眠はないやろ、YAMATOさんの筋肉に埋もれらな死んでも死にきれんから私ここにおるのに。本末転倒甚だしい。

ならば生きる為に意識を保つたねばならない、何かしなければ。リングの上にはパンイチでウロウロ動くYAMATOさんとジャージ姿の私。話しかけていいのか悩む。でも設定上私はくそ生意気な年増のバカ女。

仕方ないのでリングの上という非日常を楽しむ。軽く跳ねただけで結構揺れるし、思ってたより少ない力でも大きな音がなる。こうやってショックを少しでも和らげて、見ている側にはインパクトを与えてるんだな。ロープの使い方も靖さんに少し教えてもらったが、私の体重ではしなりもしないし体に食い込むだけで逆に痛い、ロープを使うのもそれなりに筋肉がいる。逆に強い力でここにフられたら肋骨折れそう。

鎖骨粉砕、肋骨骨折は、さすがの変態の私も避けたい。

「ギブアップ無しやで、ヘッドロックされるまでたえろ!ほんまに無理な時はロープか俺とタッチや」
「チョップのふりして自分でさわりにいくんや!」

靖さんの言葉を反芻させているといつのまにかレフェリーのミスター中川がリングの中にスタンバイしていた。

ミスターと話すのはいいかな?

てかミスター半袖やん。このリングの上、パンイチと半袖とジャージしかおらんやん。真冬やぞ。暖房なしの山奥で気温一桁やぞ。その前に私、憧れの人に初めて会うのに初見ジャージかよ。女捨てすぎやろ。まてまて、、、その憧れの人、そもそも服着てないから!なにこのカオス!

瞬時にいろんな事どうでもよくしてくれるYAMATOさん神。

勝手にやる気が満ちる私は機嫌よくミスターに話しかける。近くで見ると胸にボール仕込んでんか?くらい分厚い。

「それ、なんか下に着てるん?防具的ななんか」「いや、シャツしか着てません」「すごいね」「はい、けっこう試合中に捲き込まれるので鍛えてます」

自前の筋肉だと?ミスターすげぇな。シャツパンパンやん!でも近くにもっとすごいYAMATOさんおるから霞んでるけどな。

やっとカメラがこちらにきて、ファイティングポーズを撮影したり、立ち位置の確認。私が挑戦者側にスタンバイするとゴングが鳴る!

向き合って手を組む。YAMATOさんの手のひら分厚い。500円玉ペチって縦に潰せるんちゃう?花山薫のやってたあれ。

と、アホなこと考えてる間にすでにアキレス固めされてる私。でもこれが驚くほどに

痛くなーい!でも全く動けなーい!

そしてしっかり利き腕対応されとる。
こう見えて私は39年サウスポーで通している。
こんな早さで左利き対応してくれたの日航ホテルの中華料理屋さん以来。これがおもてなし精神かと感動したあの日の思い出が交差する。
オモテナシ精神、ジャパニーズ大和魂、

これぞYAMATO SPLITか(違う)

抑え込まれるとどう足掻いても抜け出せないのだが、動き続けて突破口を探すしかない。だが集中したいのにコンタクトレンズがズレる。
目が痛い、でも体は不思議と痛くない。

おい嘘だろ、みんな聞いてくれ。
YAMATOさんにされることよりズレたレンズの方が痛いんだぜ。
こんな事ってあっていいのか?相手は屈強なwrestlerだ。おりゃあ、どうかしちまったのか?

そんなこと知る由もない家族の悲鳴に我に返る。咄嗟に安心させなければと思いたち笑ったら、逆にドン引きされてしまった。

これがテレビでも放映された「今一番近くにいる変態」が生まれた瞬間である。

ずれたコンタクトをはずし、改めて試合開始。


YAMATOさんずっと笑顔の神対応。

リングの上では声をかけ続けてくれ、上手くやれば誉めてくれ、なによりも向き合った時の笑顔が優しすぎる。こうやって後輩達を指導したりしてんやろな。知らんけど。

全くヘッドロックに持ち込めない私にヘッドロックさせてくれたYAMATOさん。ちゃんと左側から脇にズボッと頭突っ込んでくれてよかったのですが、私は変な汗をかく。

ヤバイ、想定外すぎてスポーツ用のブラしてない。これ絶対ワイヤーあたって痛いやつ!

思いきり絞めさせていただきましたが、人の頭を初めて抱えて絞めた私には思ってるより大きく、上手く出来ない。

そんなことよりブラのワイヤー突き抜けて大切なYAMATOさんに突き刺さったら、、、と違う心配が頭に過る。そんなこと起きたら打ち首になるかもしれん、YAMATOさんは国宝やし(勝手に登録)

けっこう長い時間相手してもらいました!心配してたチョップは返されなくて鎖骨も無事です(当たり前)

最後はヘトヘトの私を軽く絞め落として試合終了。本家のヘッドロックにぐうの音も出ない。靖さんのんと全然ちゃう、頬骨の辺りを絞めるので、力加減してもらっても頬骨陥没するかと思いました。なんならちょっと顔がしまった感じ。

明日今日よりも小顔になってる気がする。

結論としては、ヘッドロックで私の理想の状態にはなれなかったのですが、後でちゃんと私の理想の状態でやってくれました!
私的にYAMATOさんは厚みが重要なので、横向きに立ってもらい、触りながらそれも語らせてくれましたが、途中で怒られました。

飴と鞭がすごい。

仕事とはいえ、急にやって来た変態女に罵られ、追い回されたにも関わらず、リングの上ではずっと笑顔で声をかけ続けてくれました。その懐深さとプロレス愛に溢れた空気が心地よく、目的を忘れて夢中で追いかけては倒され押さえ込まれ、ミスターに心配されてました。

たぶんあんま伝わってないと思いますが、そんな人間性あっての私のNo.1ヒーローなんですよね。喋ったことないのになんでわかるん?と靖さんにも言われましたが、そうゆうのって溢れでるんです。

時間ギリギリまで協力してくれたYAMATOさん、このあと着替えて荷物まとめてダッシュで整体にいきました。ロケ車の靖さんに大きな声でご挨拶して行く姿は大人として当たり前でもかっこいい。

サインもしっかりいただきました!

家に向かうロケ車の中で、すでに首に不穏な痛みを感じながら帰宅。晩御飯は鰻をお腹いっぱい食べ、あったかい緑茶が疲れにほどよくしみた夜でした。

そして最後にこれだけは言っておきたい。

YAMATOさんめっちゃシャンプーのいいにおいした。

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