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こどのくのほし、つらなるほし『放課後のプレアデス』感想補足解説パート7(第8話)


 前回(第7話)はこちら
 また、前回の記事は、すばるのお手製チャームについて、記述内容と出典に誤りがありましたので訂正しました。
 該当箇所はこちらです。


 第8話は、視聴当時一番好きだったエピソードです。
 この回が最もSF要素が濃いためでもありますが、人間関係がエピソードのに深く関わっているからでもあります。

第8話 ななこ13

『放課後のプレアデス』8話。太陽系外縁部でやはりオールトの雲! Xp時代のMitakaで何度も何度も見ていた領域なので開始5分でお熱お熱。光速の99.999%でウラシマ効果。小惑星帯の準惑星セレス(ケレス)どころかマケマケの軌道が書いてあって……スターボウ! と視聴者の興奮が冷めません。
そして、こんな視聴者がいるのを予測してのことなのか、話の引力がこれまでで最も強い。ななこの奇天烈な面ととぼけた性格に挟まっている寂しがり屋な気質が、いまの家族関係と過去と共に浮かび上がる。ななこの心に迫っていく展開に合わせて、その心情をダイレクトに伝える話の作りがすさじい。
演出からのアプローチが控えめなのも特徴的で、動きや画角に拠らず〝見せるのではなく読ませるやりかた(読み聞かせの手法に近い)〟で情感に迫るアニメってそうは無い。念のため強調しておくと〝やりかた〟ね。話の雰囲気はメルヘンチックですらあるのに収拾の付け方でSFとして締めるのもすごい。
 
   2020年6月28日 3:18

 第8話の感想ツイートは明らかに専門用語の補足が必要ですので、そちらに重点を置いて書いていきます。


>太陽系外縁部

 太陽系外縁部は、おおまかに分けて、オールトの雲、エッジワース・カイパーベルト天体、それ以外の太陽系外縁天体から構成されています。

 オールトの雲は、太陽から約1万AU(天文単位)の付近から10万AUに渡って太陽系の外側を球形に包み込んでいるとされる小さな天体の集まりのことです。
 まだ探査機も到達していない領域のため、理論上の存在とされていますが、私の知識と手持ちの資料を合わせると2000年代に入ってから存在が強調されているように思えます。
 正確には「存在するという確たる裏付けもないが否定する根拠もない」ので、理論上の存在とされているものです。

 太陽系を離脱しつつあるとされる探査機に、1970年代に打ち上げられた外惑星探査機パイオニア10、11号、ボイジャー1、2号、そして2006年に打ち上げられた太陽系外縁天体探査機ニュー・ホライズンズがありますが、これらは全て機能停止しているため、到達しても調査はできません。

 オールトの雲は、彗星の故郷《ふるさと》という別名があるように、ここに属する天体は、水、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどを主成分とする氷の塊が密集していると考えられています。

 この1万天文単位という数字を光年に直すと0.15光年になります。
 カケラがある場所は、それよりさらに遠く離れた地球から0.25光年先です。オールトの雲はそれだけの幅があります。


 エッジワース・カイパーベルト天体は、アニメ本編ですばるが作った『旅のしおり~地球発太陽系外縁部行き~』に書き込まれていたマケマケやエリス、ハウメアといった準惑星(※1)のことです。

 これらは全て太陽系第8惑星海王星の外側を周回している天体群であり、マケマケなどの準惑星は冥王星と性質が近いため、冥王星型天体とも呼ばれています。
 少しややこしいのは、冥王星が他の天体より先に発見され、長い間惑星とされていたためです(※2)。
 そのため、エッジワース・カイパーベルト天体、冥王星、それ以外の太陽系外縁天体という扱いにしました。


 それ以外の太陽系外縁天体とは、冥王星とエッジワース・カイパーベルト天体より外側の軌道を周回している天体のことで、本編に登場する架空惑星アパテのような星がこれに該当します。


 セレスやマケマケ、セドナを知っていることから、すばるが相当な天文マニアだとわかります。また、光速での移動速度を暗算できるくらいですので、理科系科目はもとより数学(正確には計算)も得意そうですね。


 とまあ、すばる同様、非常にマニアックな部分に興奮していたわけです。


※1:準惑星とは、太陽の周囲を公転する惑星以外の天体の中で、自身の重力によって球形になれるだけの質量を有する天体のことです。小惑星との違いはサイズもありますが、球形であるかどうかが焦点になります。
 すばるが「そう! いまならセドナが近いんだよ!」と言っていた太陽系外縁部に位置する小惑星セドナや、火星─木星間の小惑星帯にあるセレス、エッジワース・カイパーベルト天体に属するマケマケ、エリス、ハウメアが準惑星です。
 セドナは、ひかるのお母さんに頼んで天文台の望遠鏡でセドナを見るシーンで「赤い?」、「赤かった!」というやり取りがあるように、太陽系で火星に次いで赤い星です。現在は小惑星に分類されていますが、準惑星に分類変更される可能性が高いとされています。


※2:冥王星は、発見から76年後(1930年発見)の2006年8月に開かれた国際天文学連合(IAU)総会で定められた「惑星の定義」によって、惑星から準惑星に区分変更されています。
 以後、第9惑星は「オールトの雲の外側付近を周回しているであろう巨大ガス惑星(大きさは地球の2~4倍など諸説があります)」と予測されていますが、2020年12月現在まで発見には至っていません。


>ウラシマ効果

 正確には「(特殊相対性理論での)速度における時間の遅れ」、略して「時間の遅れ」です。
 相対性理論が出てくる時点で逃げ出したいのですが、ノリと勢いで書いてしまった責任を取ります。ただ、私自身しっかり理解できている自信がないため、間違っている部分があったらごめんなさい。

 あくまでも『放課後のプレアデス』における扱われ方を軸にして書いていくため、未見の方は見てください。ただでさえ「なんのこっちゃ?」という話が輪を掛けて「なんのこっちゃ?」となりますので見てください。

 それでは、アニメ本編で会長がとてもわかりやく言ってことをあえて掘り下げて書いていきます。


 アルバート・アインシュタインによって特殊相対性理論が提唱されるより以前は「時間の速さ(進み方)は常に変わらない(ニュートンの「絶対時間」)」とされていました。
 しかし、アインシュタインが「光の速さは常に変わらない」と証明したことによって、この常識が覆ります。

 たとえば、冬の空にひときわ輝くおおいぬ座の1等星シリウスは、地球から光の速さで約8.6年(=8.6光年)の宇宙にあります。12月の日本から南東の空に見えるシリウスは、約8.6年前のシリウスの姿ということになります。なぜなら、光が地球に届くまで約8.6年掛かるからです。

 ここで、アインシュタインの理論に話を戻しますと、光の速さが一定なら時間は絶対的なものではなくなります。それは、どこから何を観測するかによって時間の捉え方が変わってくるからです。
 ゆえに、時間は絶対的なものではなく相対的に観測されるべきである、というのが特殊相対性理論です。

 この「どこから何を」の部分が重要でして、移動によって生じる位置関係の違いによって生じる音の聞こえ方の変化する現象、すなわちドップラー効果が光にも同じように生じるとアインシュタインは予言しています。

 光にもドップラー効果発生しますが、時間に対して光の速さは一定ですので、「移動しているものが光の速さに近付けば近付くほど時間が引き延ばされるように遅れて流れていく」とも特殊相対性理論は示しています。

会長「カケラを発見したらすぐに僕たちを呼ぶんだ。君が心から呼べば、どんなに離れていても声は必ず届く」
ななこ「うん」
ひかる「そうしたら、私達もななこのいるところにひとっ飛びってことだよね」
あおい「待ってるからな」
いつき「頑張って。応援してる」
すばる「わ、私も楽しみにしてるから……」
ななこ「うん」
  
いつき「手紙書くね」
ひかる「届かないぞー」
いつき「じゃあ、メールしてね」
あおい「基地局ないよな?」
 
   『放課後のプレアデス』第8話 ななこ13

 ななこは、5人の力を合わせた合体ドライブシャフトに乗って、地球から0.25光年離れた太陽系外縁部に出現したカケラと自分達の間に因果を結ぶため、光速の99.999%という光に等しい速度で地球を旅立ちます。
 一方、待っている側のすばる達はそのまま学園生活を送ります。

 ななこの飛行中に、自分の体感時間と地球時間の2つの時計を表示しているのは本当に時計が2つあるからです。
 同じように、すばるがチェックシートを作って、ななこの現在位置を把握していたように、待っている側にも2つの時計がある描写がありました。
 これは、合流前提なら旅をする側も待っている側も双方の体感時間を認識しておく必要があるからです。

 同じガイナックスが制作した『トップをねらえ!』での表記方法に寄せてあるのは、単なるオマージュではなくこの時差がどれほど深刻なのかを描くためでもあると思います。
 また、引用部分の「メールしてね」から、新海誠監督作品の『ほしのこえ(2002年)』を思い出す人もいるかもしれません。


 カケラがある場所まで光の速さでも3ヶ月掛かるため、すばる達はななこが目的地に到着するまでななこのいない3ヶ月を過ごすのですが、光速の99.999%で移動しているななこの時間は引き延ばされ、ななこの時間では半日で目的地に到着します。

 すばるとみなとが花壇の花の開花を見たり、ひかるのお母さんに頼んでセドナ付近を飛行しているはずのななこを見ようとみんなで天文台の望遠鏡を覗いたり(中略)クリスマスのイルミネーションを見に行ったりして3ヶ月を過ごす一方で、ななこはすばるからもらった旅のしおりを見つつ物思いにふけっていると早半日が過ぎて目的地に着く、という体感時間のズレが『放課後のプレアデス』で描かれた時間の遅れです。


 なお、ウラシマ効果という言葉は、物理学用語ではなく俗語です。

 時間の遅れによって生じる体感時間のズレは、おとぎ話の『浦島太郎』で浦島太郎が竜宮城に行って数日過ごして帰ったら地上では数百年も経っていたというエピソードと似ています。
 そのため、翻訳家・SF作家の柴野拓美氏が翻訳書か自著で、時間の遅れをウラシマ効果と表現したのだが始まりなのだそうですが、改めて調べてみるとこれだと明言できる情報がなく途方に暮れました。

 感想ツイートでは特に意識せず書いていることから、普段の自分が無意識に先人の積んだ石の上を歩いていることを思い知らされました。


>スターボウ

 星虹《せいこう》、starbow。空に架かる虹のrainbowにあやかって名付けられた宇宙に架かる虹でスターボウということなのですが、見え方は弓形ではありません。

 時間の遅れのところで書いた光のドップラー効果によって、宇宙船が光速に近付くと全天に散らばっている星が徐々に進行方向(前方)に集中し、横や後ろにあった星も前方に見えように変化する現象がスターボウです。

 移動速度が光速に近付くと、光のドップラー効果により音の周波数が変化するように光の波長も変化していって、前方の星は青く見えるようになり、後方の星は赤く見えるようになります。
 これは、光が波長が短くなるほど青く見え、波長が長くなるほど赤く見えるためです。
 そして、一定の速度を超えて光速に近付くと、紫、青、緑、黄、橙、赤(7色)の光の帯が見えるようになり、星は進行方向の一点に集中しているように見えます。


 本編では、ななこの正面に集まった星と黒一色の周囲との境界が虹色に輝く円で描くことで表現されていました。


>ななこの奇天烈な面ととぼけた性格に挟まっている寂しがり屋な気質

ななこ「あの2人を見ていると、なんだか心が『ぽ・わ~む』してくる」
あおい、いつき、ひかる「ぽ・わ~む!?」
3人「ぽ・わ~む……?」
4人「確かに」
いつき「ななこちゃんがそんなこと言うの珍しいわね」
ななこ「ん? ……ああ、うん」
 
ななこ「ぽ・わ~む」
  
ぽ・わ~む [副](-スル) 【発音記号略】
心が温かくあるさま。その音を表す語。
ぼっわ~むとも。
ぼっぽ[日]とwarm[英]を組み合わせて
心の内の感情を優しく体現するよう読む。
造語。
  
   『放課後のプレアデス』第8話 ななこ13


 第8話はこの「ぽ・わ~む」で始まり、ななこの過去が描かれるシーンにおいてマントと帽子は会長と出会う前から着ていたことが判明しました。
 宇宙人の言葉を通訳できることと、あの格好は関係ないってことですね。
 
 両親の離婚に伴う弟との別れを経験しているためか、ななこの部屋には子供部屋の面影──二段ベッドの二段目だけをロフトベッドにしているなど──と偏り── 部屋の奥に物が集まっていて手前は水晶玉の置かれたちゃぶ台しかない空間──が感じられます。
 なんとなく、成長に伴って自分の本音を奥に押し込めていく──表情が乏しくなっていく──ななこ自身を表しているようです。


 父親と必要最低限の言葉しか交わさない一方で、決して嫌っているわけではない微妙な距離感も描かれていました。
 食事のシーンもそうですが、ななこが出発する朝、机に突っ伏して寝ている父親にそっと毛布を掛けて「行ってきます」と言うシーンの優しい笑顔が印象的です。
 
 そうしたななこだからこそ、家庭内とは別のところで両親の離婚と弟との別れのショックを逃がす必要が出てきて、そこから行き着いたのがあの格好ではないでしょうか。
 
 傾いている《かぶいている》と言いますか、自分独特の世界観を前面に出すことで壁を作って、他者と関わらないようにする生き方を選んでしまったのがアニメ本編の運命線のななこだと思います。

 決して人が嫌いなわけではなくて、むしろ自分が傷ついた経験があるからこそ、「いずれ別れるなら最初から関わらない方がいい(意訳)」と自分から一歩引いている感があります。
 両親の離婚と弟との別れの悲しみから転じて生じた「誰だってみんな1人だから」という達観が、成長しても内面的な変化にブレーキを掛けているとも取れます。

 身も蓋もない言い方ですが、過去の痛みをこじらせてしまったゆえの中二病とも取れるので、ななこか大人になったら「あれは忘れて」と顔を覆いそうな気がします。
 とはいえ、それだけの経験をしても折れなかった芯の強さも持っているため、意外と「ああ……。まあ、はしかみたいなものだから」とクールに返しを身に付けていそうでもあります。

 この時点からでもキャラクターの未来が予想できてしまうのが、『放課後のプレアデス』の魅力です。


>見せるのではなく読ませるやりかた

 要するに、話の作りのことです。

 ななこの回想から過去の出来事が明らかになっていって、そこから現在に近付いていく構成は、主観となる時間の流れが2つあるエピソード全体の構成を反映しています。
 
 単独飛行をするななこと3ヶ月の時間を過ごしているすばる達が交互に描かれますが、すばる達の方が体感的に長い時間を過ごすためシーンや台詞も多く、ななことの距離が開いていくのを実感させられます。
 この一連の流れは、面白い本を読み始めて引き込まれるときに似ているため、「読ませる」という言葉を用いました。

 

 全12話の後半に位置する8話目でななこの内面が描かれるのは、変化を描くのにそれだけの時間が必要だったからだとも考えています。

 登場人物の変化と話の展開がシンクロするのは、ジュブナイルの根幹に根ざす要素であり、現在では主に児童文学で見られる物語の描き方だと考えています。
 変化が話を引っ張るのでも、話の展開によって変化するのでもなく、同時進行であるところがポイントですね。


>収拾の付け方

 予想位置に到達したとき、ななこはカケラ回収するためにすばる達を呼ぶのですが、最初の呼びかけは全く届かず、ななこも届かないこと(自分が心から呼んでいないこと)を冷静に受け止めてしまいます。

ななこ
「来ない……。きっと私が心から呼んでいないから届かないんだ」
「会長と出会って、みんなと友達になって、いつの間にか私は誰かと一緒にいることに慣れていた。ずっと昔、そうだったみたいに……」
「だけど、やっぱり私は1人が似合ってる、たぶん……」
  
   『放課後のプレアデス』第8話 ななこ13

 直後、ななこの視界に巨大ガス惑星が現れます。
 そこにカケラを見つけたななこは、みんなを呼ばすに1人で回収しようとします。

 まだ誰も知らない星をいまの自分自身と重ね合わせて「アパテ。欺瞞と失望の女神」と名付けてアプローチに入るものの、捕まえても五人のときのように安定せず弾かれてしまいます。

 単独でタッチダウンを試みた結果として活性化したカケラが輝き、その光を受けてアパテの姿が宇宙に浮かび上がります。

 その星の姿を見て、ななこは気付くのです。


 必要だから呼び掛けるのではなく、みんなにいて欲しいから呼び掛けなくてはダメなのだと、そして自分はみんなと一緒この光景を見たい──同じ時間を共有したい──と思うようになっていることにです。


 この気付きがななこにあったからこそ、心からの声がすばる達の元に届く構造になっているのがすごいと思います。
 5人が合流したときの最初の視点がすばるの視界で、ななこの背中が目の前にあるというのも2つの時間が繋がった感触を強めていました。


 そして、謎の少年との競争やカケラの影響で大型ガス惑星から恒星への変化を始めたアパテを見届け、カケラを回収した5人は帰還します。

すばる「部室だ……」
あおい「あれ? 雪がない! どうなっているの!?」
ひかる「もしかして、ななこが出発した日に戻っているんじゃ……」
会長「もともと帰る時間には二通りあったんだ。僕たちの過ごした3ヶ月と、ななこの過ごした半日と」
すばる「いまはななこちゃん出発してから半日後の時間?」
会長「考えられるのはここに戻りたいという誰かの強い思いがあったということだが……」
いつき「テストはやり直しねー」
ひかる「ぶっはー! めんどくさぁ~!」
ななこ「今日、私……誕生日だった」
4人「ええっ!」
  
   『放課後のプレアデス』第8話 ななこ13


 このやり取りだけで待っていた側のすばる達ではなく、旅をしていたななこの側の時間が選ばれた理由は特に語られません。

 ななこの「誕生日」という言葉を呼び水にしてすばる達だけが知っているあったかもしれない未来の話をして、色々なことを「今度はななこも(ななこちゃんも)一緒に」と結ぶところは最高だと思うのです。

 放課後に戻るということが『放課後のプレアデス』という作品のタイトルを象徴していますし、SF的なつじつま合わせを会長(宇宙人)の言葉に預けることで、主役のすばる達はあくまでも自分達の捉え方で見ているのが自然に感じられます。

 さらに、みなとが同じ放課後の中庭で1人花壇に水やりをしている姿を映すことによって、彼もまた同じ時間を共有していたと次の話への伏線を仕込んでいるところまで完璧なエピソードでした。


コスプレ研究会の中のななこ

 ななこは、会長の通訳を行う都合から自然とコス研の面々から注目される立ち位置にいますが、そういう時にはあまり自己主張はしません。むしろ、ふとしたときに突拍子もないことをやって積極的に注目を集めるのですが、たぶん本人は無自覚です。
 例として、第2話の逆さドライブシャフト乗り(「平常心」)、第4話のひかるとの絶対音感当てゲーム、そして第8話の「ぽ・わ~む」などがありますね。

 コス研の面々との関係を見ていきますと、最後に加わったメンバーだからか結構すばるのことを気に掛けています。

 ななこの視点ですばるを見ると、良くも悪くも真っ直ぐなところに惹かれている感があります。第8話では気を遣われる側になったためか、単独飛行の道中で最初に思い浮かべる他者はすばるなのですね。

 ななこなら、ななひか(ななこ×ひかる)ですよ! と突っ込まれそうですが、おおむねその通りです。

 ひと言で言いますと、2人とも他者との関わりを恐がっています。

 ななこは、他者との関係の喪失(別れ)による痛みを経験しているから、他者と関わることを避けている(最初から踏み込まない)部分が変われないポイントで、魔法使いの素質十分。

 ひかるは、他者と関わりを持つことで自分の行動が相手の負担になるのを恐れて避けてしまう(最後まで踏み込めない)部分が変われないポイントで、魔法使いの素質十分。

 何気にこの2人、似たもの同士なのです。
 2人の掛け合いが想像しやすいのは、人物像の根幹に根ざす部分で関係性が結ばれているからでしょう。

 これは本人が生まれ持った性質でもあるため、変われないポイントを越えることができても、ななことひかるは互いにシンパシーを感じるでしょう。成長して大人になって共感するところに気付いたら(言葉にできるようになったら)、大人なりの距離感を自然に作れると思うのです。
 途中で盛大に喧嘩をして仲直りに苦労しそうですが、その方が結びつきが強くなりますよね。すばるとあおいがすれ違いを乗り越えて絆を深めたように。


 いつきは、自分が主体的に行動を起こすことで関わった相手と周囲に迷惑を掛けることを恐れている部分が変われないポイントですので、誰とでもそれなりの距離感を得られますが、一定距離に達するとそこで止まってしまいます。
 しかし、第8話では既に変われないポイントを超えているので、序盤で「コスプレ部解散の危機!?」と発言するなど、積極的本来の性格を徐々に出せるようになっているのが見て取れます。


 すばるとあおいは、2人の関係の根幹に根ざす部分が変われないポイントですので、魔法使いの素質という視点で見ると必然的にセットになります。この辺りは前回の記事で引用した原画の鯉沼菜奈さんのメモがそのものずばりです。

 ななこは、あおいの「可愛い物が好きだけど表に出すのは恥ずかしい」という部分を4人の中では唯一いじりません。
 他の3人にしても「そういうあおいちゃん(あおいちん)が好きだよ~」という感じで、からかっていると言うよりもコミュニケーションの一環としてやっている節がありますので、あおいも悪気がないのはわかっていると思います。
 あおいも成長していけば、いまほど極端な態度は取らなくなるでしょうし、当然すばる達も成長するのでいまほど露骨な突っつき方はしなくなるでしょう。


 コスプレ研究会の中という視点で見てみますと、ななこは通訳以外の発言が少ないのに五人の中心にいることが見えてきます。

 また、ななこは、すばる達と出会って一緒にいることが当たり前になったとき、胸の奥深くにあった孤独感があらわになると同時に、誰かを大切に思う──誰かと共有する時間を大切に思う──感受性が開花する、という五人の中では大きな内面の変化があった子でもありますね。


 視聴当時から大好きだったエピソードでしたが、いま見てもやはり好きです。一方、当時の感想を見ると勢いで書いているところに勉強不足な部分がモロに出てきて恥ずかしい部分があります。
 この記事にしても自分の勉強不足を痛感させられているのですが、あんまり深入りすると主旨が逸れてしまうのでそこそこに抑えました。

 ここまでお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとう御座います。


 次は第9話、本編も残っている方が少なくなりました。


 つづく。


参考文献
『放課後のプレアデス アートワークス』一迅社
『宇宙がまるごとわかる本』学研
Mitaka Ver.1.6.0b(国立天文台四次元デジタル宇宙プロジェクト)国立天文台国立科学博物館 宇宙の質問箱


※今回のヘッダー画像は、Mitaka(Ver.1.6.0b)で描画した2015年10月18日の太陽系の模式図です。

ご支援よろしくお願いします。