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映画「オッペンハイマー」を鑑賞して

原子力爆弾(原爆)を開発したアメリカの物理学者J・ロバート・オッペンハイマー氏の半生を映画化した「Oppenheimer」を、夏休み中の中学生娘と鑑賞してきました。彼女には、テクノロジーの発展には倫理が伴わなければならないということを学んでほしいと思っています。そして驚いたのですが、この世界的ヒット映画は日本公開が未定だそうですね。名作であることには間違いないのですが、日本人としてはいろいろ言いたいことも。オッペンハイマーが開発した原爆が投下された当事者である日本だけが蚊帳の外というのは、なんとしても避けたいです。賞賛するも批判するも、鑑賞できればこそですから。できるだけ早く日本で公開されることを願っています。

ちなみにこの映画は、3つの時間軸が複雑に入り組んだ複雑な編集をしています。私は鑑賞前にこちらの記事を読んでいたので理解できましたが、予習してなかったらその時間的交錯がつかめていなかったかもしれません。

ちなみに、こういったこういう史実を基にした作品って、どこからがネタバレになるんでしょうね。そんなに詳細は書かないつもりですが、どんなネタバレも許さない方は、ここでそっとブラウザを閉じていただけますでしょうか。

じゃあ何が気になったか

この映画製作は、日本にもかなり気を使いながら製作していることは伝わってきました。残酷なシーンは映さず、過剰な悪役扱いもしない。
けれどそれゆえに、原爆の本当の恐ろしさ・被害も伝わらない
なと思いました。

日本公開は未定なので、日本版公式トレイラーは存在しません。けれど独自に日本語字幕をつけてくださった方がいました。
ここにも映っていますが、原爆の爆発シーンは非常にスペクタクルに描かれています。そして、その後のオッペンハイマーの演説シーンも、人々(開発関係者)は「歴史に残る大事業」を成し遂げた興奮に包まれています。
観客も、実験成功~実際の投下あたりで「プロジェクトX」的な興奮に巻き込まれます。もちろん監督はその後の布石として描いているのですが、非常に複雑な気分でした。
この原爆成功の熱気と、自分がしてしまったこと(大量虐殺兵器を開発し、実行されたこと)の取り返しのつかなさに遅まきながら気が付いたオッペンハイマーの苦悩が対比されるのですが、それに気づくのはもしかしたら原爆の恐ろしさを聞いて育った日本人だからではないかとも思いました。他の文化圏の方の解釈力を見くびりすぎですかね?

他にも、「完成間近の原爆を日本のどこに投下するか」という会議も、「京都はダメだな。文化の中心だし、私と妻が新婚旅行で訪れた街なんだ」みたいな感じで、非常にあっけらかんとしています。自分たちが大量虐殺の場所を選定している自覚はなく、そのグロテスクさに涙がでました。けれどそれもそれは私が日本人だからであって、もしかしたら他の国の観客は「ふーん、こうやって選んだのか」くらいにしか感じないかもしれません
日本を悪役にしない代わり、アメリカの所業もスクリーン上でマイルド化されているなと感じました。どの立場から見ても、観客は罪悪感を覚えない。ただただオッペンハイマーの苦悩だけが映される。でも彼のその苦悩も、他国の観客は本当に分かっているのか私には分かりません。

時は折しも8月。改めて広島と長崎に思いを寄せ、祈りをささげたいと思います。そして繰り返しになりますが、映画「オッペンハイマー」ができるだけ早く日本で公開されることを願っています。

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