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「生かされて。」

前回の記事で、私のおすすめ本を紹介していました。

この記事内で「人生には、説明不可能な奇跡が起こる」ということを書いていました。その時、「奇跡」に関する本をもう一冊思い出したので、そちらも紹介いたします。

※この記事は本のエンディング・エピソードにも触れています。けれどそれを事前に知ってから本を読んでも、この本の魅力は全く色あせないと私は信じています。

ルワンダ虐殺を生き抜いた女性

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その本とは、イマキュレー・イリバギザさんの「生かされて。」(原題「LEFT TO TELL」)。1994年のルワンダ大虐殺を体験した、ルワンダ人女性の手記になります。

1994年、「永遠の春」と呼ばれたルワンダで大量虐殺が起こった。人口比9割のフツ族が突如ツチ族に襲いかかり、100日間で100万人の人々を殺したのだ。牧師の家の狭いトイレに7人の女性と身を隠した著者は、迫り来る恐怖と空腹に負けず、奇跡的に生き延びた。祈りの力によって、希望の光を灯したその後の彼女は、虐殺者たちをも許す境地に達する…。心揺さぶる感動の書、待望の文庫化。 (Amazonページより)

この本は、フツ族とツチ族がどのように対立し虐殺が始まったのかという解説もしてくれています。けれど本の主題は、彼女が地獄のような絶望の中でもいかに信仰(敬虔なカソリック教徒)と希望を失わずにいたのかという点におかれています。

絶望の中でも勉強をする

上のあらすじ記述にも書かれていますが、彼女は虐殺側の(プロテスタント教会の)牧師の自宅の、クロゼット程度の広さしかないトイレに同族の6人の女性たちと共にかくまわれました。牧師は家族にも内緒で彼女たち7名をかくまっていたので、満足に食べ物も支給されず、トイレも他の家族が使用するタイミングに合わせてしか流すことができませんでした。おしくらまんじゅうのような状態なので、満足に座ることもできないのです。外では虐殺が繰り広げられ、家族の消息を知ることもできません。

私が驚いたのは、彼女がそんな状況でも、英語の勉強を始めたこと。当時彼女は優秀な大学生で、母国語のキニヤルワンダ語と大学での勉強に必要なフランス語を流ちょうに話すことができました。けれど彼女をかくまっている牧師から、「国連が平和部隊をルワンダに送ることを検討している」ということを耳にします。そして「やってくる兵士は、(仏語ではなく)英語を話すはずだ」とも告げられたのです。

その情報から、「自分は生き残って、ここで何が起こったか英語で国連に伝えないといけない」「そしてきっと自分は国連で働くようになる」というインスピレーションを得るのです。

そこで、相変わらずトイレに7人すし詰め状態であるにも関わらず、牧師に頼んで仏英辞書と英語の本を数冊貸してもらい、英語の勉強を始めるのです。自分たちを殺そうと武器をもった人々がうろうろしている状況で、勉強を始めるのですよ?私はこの場面で、本当に雷に打たれたような衝撃を覚えました。
そしてだいぶ端折りますが、後に彼女は自分で思い描いたとおりルワンダの国連事務所で英語を駆使して仕事を得ます
「幸運は、準備ができている人のもとに訪れる」を体現しているエピソードだと思いました。

イメージの強さ

そして虐殺から生き延びた後も、彼女は「国連で働くには何が必要だろう」と考えます。高度な教育を受けたという証明(高校の卒業証明書、大学の成績表)、身なりの良い服などが必要だと思い至った彼女は、虐殺が始まる前に通っていた大学の寮を訪ねます。そこもフツ族の破壊行為によって廃墟のようになっていましたが、そこで卒業証明書などの書類と、奨学金としてもらっていた30ドルを発見するのです。この場面は、彼女の祈りが天に通じたように思える、神がかったシーンでした。そうしてまともな就職活動(それまでは門前払いだった)をスタートできたイマキュレーさんは、自分が国連で働く姿を強くイメージします。するとそれに導かれるように「ありえない偶然」のようなものが起こり、本当に彼女は国連で働くようになるのです。

虐殺で家族を失った彼女はしばらく恋愛から離れてもいましたが、生活が落ち着いてくると、将来の伴侶のイメージも描き始めます。そしてそこで、本当に思い描いたような恋人との出会いを果たします。

彼女は、本当に自分に必要なものが分かっている人だなと感じました。だからこそ自分が何をするべきか分かるし、目の前に訪れたチャンスを逃さないのでしょう。

赦す強さ

話は前後しますが、彼女は自分の家族を虐殺した犯人とも刑務所で対面します。刑吏は彼女の知人であり、彼女がこの殺人者に対して復讐できるように取り図ったのです。それにも関わらず、イマキュレーさんはその殺人者に「あなたを赦します」と告げるのです。

「赦ししか私には彼に与えるものはないのです」

後に彼女は世界中で講演会などを行うようになりますが、彼女のこの「赦す」という行為に、怒りを長年胸にためてきた聴衆たちが涙を流すのだそう。誰かに直接赦しを告げなくても、心の中で赦しを施すだけで人々の魂が癒されていくのを、イマキュレーさんは目撃しているようです。
これこそが、彼女が成し遂げている一番の奇跡かもしれません。

奇跡の実話「生かされて。」、機会があればぜひ読んでみてください。
(Kindle版もあり)

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