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【読書】「東京貧困女子。」レビュー上位表示は本質を語れているか

今回読んでみたのは

『東京貧困女子。ー彼女たちはなぜ躓いたのか』

筆者は20年以上”貧困”という社会問題をフィールドワークに活動を続けている、中村淳彦さん。

東洋経済オンラインの連載をもとに書かれた本書では、貧困に直面する女性たちの現実を当事者目線で描いている。女子大学生、単身OL、シングルマザーなど、学歴を問わず、誰しもが貧困に陥る可能性があることを物語っている。高学歴であっても、人生の中で下した「夫婦別姓」「家族の介護」「離婚」といった選択や決断一つで、貧困への道をたどることになる可能性もある。知っていれば回避できることも多いため、将来を考える上で読んでおきたい一冊。

アマゾンレビューではいくつかの★1がトップレビューとして上位表示されていますが、本質的な問題を指摘したものではなく、個人的体験や感情に基づいたコメントが目立ちました。

理由として考えられるのは、本書が貧困層の”当事者目線”で描かれており、今の社会の本質的な問題への踏み込みが浅かったからではないかと考えられます。

筆者は自身の執筆スタンスを「自分の価値観を持ち込むことなく、彼女たちが直面している現実を可視化する」としていますが、本書では社会や制度に対する批判や恨み、憎しみを覚えさせるような文章が所々に見受けられました。当事者の気持ちを反映させたからこその文章だとは思いますが、感情が読者の感情を呼んでしまったように感じます。

このように本書は社会の「本質」を見極めて書かれた本ではなく、社会の本質が作り出す「構造」や「現象」にフォーカスされているため、同じく「構造」や「現象」レベルでの議論がトップレビューで展開されており、問題解決に必要な「本質」レベルでの議論が深まっていません

*本質→構想→現象という考え方は、森岡毅さんの『苦しかった時の話をしようか』を参考にしています。

「ウソ」や「ノンフィクション」という言葉で片付けてしまっているレビューが上位表示されるという事は、世間一般の人々が本質的な議論を行うというレベルまで達していないことを現わしているようで、議論を深めるためにも、当事者の方々の声をより多くの人々に伝えていくことが大切だと感じました。


貧困が貧困を生むだけでなく、誰しもが貧困に陥る可能性がある。

ただ、知っておけば回避できることも多い。

特に介護や離婚など、人生の選択をする前に知っておきたい。



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