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子猫の破壊力

僕は生粋の猫派で、
イオンやホームセンターに行ったら
必ずペットショップで猫を見ます。

とはいえペットショップは
ビジネスとしては嫌いですので、
命の買い物をすることはありません。

魚くらいならまだわかりますが、
高等動物は感情を持ってるので、
怒ったり悲しんだりします。

小さなショウケースに閉じ込め、
来る日も来る日も人目に晒して
ストレスを与え続け、
売れ残れば廃棄するという商売は、
僕にはちょっとできません。

この話題になると
お約束のパターンとして、

「じゃあ食肉はどうなんだ」

って話になるわけです。

殺されて食べられるためだけに
生まれて機械的に育てられる
動物が地球上には無数にいます。

そして僕も今日は焼肉を
美味しく食べました。。
豚バラ大好きです。。

じゃあ自分で豚を育てて
殺して食べれるかというと、
僕はできないと思います。

そして現代のほとんどの人が
できないでしょう。

できるのは
命に対して本当に敬意と感謝をもって、
相手を殺す覚悟のできる人か、

単純作業レベルまで
自分の感情を殺すことができる人
なんじゃないかなと思います。


ネックになるのは感情です。


感情は猫や犬も持っていますが、
人間は、共感してしまうんです。

自分だけでなく相手を考える
ことができるのが人間の脳です。


思考では理解できても、
感情は抑え込めません。

思考よりも感情の方が
大きなパワーを持ってるからです。
思考の24倍くらい強いと言われます。


良い悪いは別にして、
この感情の壁を肩代わり
してくれてるのが、
食肉のビジネスと言えます。

あるいは毛皮を扱う
洋服のビジネスなんかも
そうですよね。

これがないと、
人は本当に無力です。

共感さえしなければ、
人は残虐なことも
平気でできますが、
共感すると何もできません。

僕は子猫を殺す覚悟すら
できませんでした。


うちの近所に野良猫がいまして、
すごく憎たらしいんですね。

僕は猫好きですが、野良猫は嫌いです。
懐いてくれないからです。

この野良猫が最近、
子猫を4匹産みまして、

どうやら大雨の日に
うちの縁の下に避難してきたんですよね。

たまたま窓を開けたときに
わちゃわちゃしてるのを見つけました。

「人ん家で何してんだよこいつら!」

ってのが最初の感情だったと思います。
野良猫は嫌いですからね。

で、
このまま居着かれたら大変なんで、
保健所なり動物愛護センターなりに
持ってかなきゃないと。

とりあえず逃げ遅れた
子猫1匹を捕まえました。

まだ生後1ヶ月くらいで、
まあ栄養状態も良くはないでしょうから、
歩くのも家猫よりはよたよたなんですね。

子猫なんで、悪いこともしてないし、
さすがにちょっとかわいい
とは思いましたが、
まだ総じて憎たらしさが勝ってます。

「こいつを囮にして全員とっ捕まえよう」

ダンボール箱に子猫を入れて
軒下に置いておくと、
母親や兄弟を呼ぶために鳴くんですよね。

またこの鳴き声がかわいいんすよ。
知ってます?子猫の鳴き声。

なんともキュンと心を
鷲掴んでくるんですよ。

しかも1匹でダンボールにいるから、
悲しい声で必死に鳴くんですよね。
震えながら。ミャーミャーって。

もうね、このへんから
共感が始まってるんですよね。
かわいそうっていう。

鳴き声に応じて子猫たちが
わちゃわちゃとやってきました。

親猫も子猫を助けようと
やって来るんですが、
僕が近づくと逃げていきます。

その度に逃げ遅れた子猫を捕獲して、
結局次の朝までに子猫4匹
全員を捕まえました。

ダンボールの上に金網を乗せて
家の中に置いてたんですが、
やっぱり母猫を求めて鳴くんですよね。
それもものすごく必死に。

母猫も外で鳴いてるんですよ。
その声が聴こえるので、
子猫たちも一生懸命
お母さん猫を呼ぶんです。

ご飯をあげても食べず、
ミルクをあげても飲まず、
少ない体力で一生懸命に
金網にしがみついて、
外に出ようとするんですよね。

もうね、この段階で僕は
善悪と幸せとは何かについて
考えてましたよね。

ベストなのは一家全員を捕獲して
一家全員を保護してくれる
誰かに引き渡すことでしょうが、
母猫は素早いので捕まえられません。

でも子猫は必死に母猫を求め、
母猫もなんとか子猫を救い出そうと
隙を見て窓から覗いてきます。

でも子猫を返すわけにもいきません。
野良猫を地域みんなで育てるような
雰囲気の住宅地でもないし、
家に住まわせるわけにもいかないし。

野良猫は、
うまく成長できても5年程度しか
生きられないそうです。

そして子猫のうちは
最も死亡率が高い。

野良の世界には敵が多いことと、
兄弟の中でも生存競争があるので、
食事にありつけずに死んでいくから。


僕は初めは自分の利益を考えて、
野良猫に居着かれたら迷惑なので、
捕まえて施設送りにして、
あとは我関せずを決め込もうと
していたわけですが、

もう猫達にとっての幸せの
在り方を考えちゃってるんですね。

どうせ楽に長くは生きれない命なら
施設送りで安楽死にするのが幸せなのか。

このまま子猫を母猫に返して、
自然の摂理に任せるのが幸せなのか。


結局、最終的に僕が取った選択肢は、
とりあえず預かってくれる
人を探して、里親探しをすること
でした。

ペットショップ勤務経験のある友達が、
里親が見つかるまで預かってくれる
ってことになったので、
友達の家まで子猫を
運ぶことにしました。

ちょっと明るい未来が
見えたと同時に、
僕の中ではここが罪悪感の
ピークでもありました。

必死にミャーミャー助けを求めて
嫌がる子猫を母猫から引き剥がし、
アマゾンのダンボールに閉じ込めて、
ざーざーと雨が降る夜、
助手席に乗せた箱の猫達に向かって
「ごめん。ごめん。」と謝りながら、
車を走らせました。

子猫達はなんの罪もないのに、
何もわからないまま
人間に捕まえられて自由を奪われ、
生まれたばかりなのに
母親とも会えなくなり、
箱の中で寒さに震え、
車に揺られて転がりながら、
どれだけ怖かったでしょうか。

うるさいほどの悲痛の叫びを上げて、
渾身の力でグイグイと箱を開けようと
してくる子猫を押し込めながら、
自分がやっているのが
とんでもない悪魔の所業だと
認識せざるを得ませんでした。

悲しすぎて逃げたいと思いました。

もはや泣きながら運転してました。
悲しくて泣いたのは久しぶりです。


こんな風に、
人間は共感してしまうんですね。

初めは憎たらしい対象だったはずが、
次第になんとか守りたい対象に
なってしまってるんです。

これが人間の強いところでもあり、
弱いところでもあります。

共感してしまうと、
理屈ではどうしようもありません。

パックに入った肉の塊には
共感できないので、
笑顔で食べられるんです。

ところが共感してしまうと
涙を流し始めることになります。


とくに子猫の破壊力はすごいです。
見たら最後なんじゃないかと思います。

文章じゃなかなか伝わらないですが、
くりくりっとした無垢な瞳とか、
か細くて高い鳴き声とか、
ちっちゃい口とか、
まだコントロールできなくて
出しっ放しの爪とか、
ピンピンに立った毛とか、
ピンクの肉球とか、
ゆらゆら揺れながら歩く姿とか、

とにかく僕の心を
激しく締め付けました。


共感を生むものと
共感を生まないものの境目は
どこにあるでしょうか?

ヒントはストーリーと臨場感です。

子猫達のストーリーを、
臨場感を伴って知ってしまった僕は、
強烈に共感してしまいました。

自分と子猫を
リンクさせて考えるようになるんですね。

もはや親目線で、
子猫達の幸せを願ってしまうんです。


4匹の子猫達のその後ですが、
友達の家に着いてから、
初めはみんな怖がってあまり動かず、
放しても影の方に逃げてしまってましたが、

2、3日かけて少しづつ慣れてきて、
ご飯もしっかり食べるようになり、
トイレもちゃんと覚えて、
兄弟でじゃれ合う余裕も出てきました。

生後間もない子猫のたくましい姿に、
とても励まされましたし、
なんだか学ばされました。

全員かわいい顔をしてるので、
きっと貰い手も決まることでしょう。

もはやもらわれて会えなくなるのが
悲しいほどかわいく思っちゃってます。


母猫はというと、
子猫がいないことがわかったのか、
家には来なくなりました。

猫は習性上、
子猫がいなくなれば、
一定期間を経て
また元の生活に戻るはずです。


ただこれはけして
ハッピーエンドではなくて、
僕がやったのはやっぱり
悪魔の所業であったことに
変わりはないと思います。

そして元をたどれば、
人間がエゴで愛玩動物を飼い、
そのニーズに応じてビジネスが生まれ、
無責任にも捨てられる命と
売り買いされる命があること、
とか、大きな話になってしまって、
結局僕には何が正しいのかは
わかりません。

ただ、事実、僕は今回、
ひとつの動物の家族の繋がりを、
自分の意思決定のもと、断ち切りました。

この決断と責任を、
逃げずにちゃんと受け止めることが、
命に対する敬意につながるのではないかと
思っています。


っということで、
今回は何の話だったかというと、
あくまでもビジネスの話ですよw

野良猫との出会いを通して
僕の心理がどう変化したのか、
考えてみてください。

キーワードは「共感」でした。

相手の感情を揺さぶって
共感を生み出すことができれば、
必要のない商品、興味のない商品ですら、
頭から離れない商品にすることができる、
ということです。

この共感をどうやって生み出すかが、
ビジネスのキモです。

図らずも子猫達がどうやって
僕の共感を生み出したのか、
分析してみてくださいね◎

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