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【前編】キャラのゲーム性「何を考えて基本セット8キャラを制作したのか?」(トリックテイカーズ)

トリックテイカーズ制作者のヒロケンです。

2021年11月頒布予定の「拡張セット」の新しいキャラについて書く前に、最初の基本セットの8キャラについて振り返ろうと思ったら、長くなってしまったので、前編と後編に分けることにしました。


新しいキャラについては後編になりますm(_ _)m

後編の記事は「2021年9月11日に書き直しました」

【後編】拡張セット:7キャラクター紹介(トリックテイカーズ)→

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【質問】何を考えてキャラのゲーム性を制作しているのか?


【回答1】そのキャラのゲーム性をやってみたいと思ってもらえるか?
→そのキャラは私たちのどんな欲求に応えてくれるのか

【回答2】ゲーム体験や戦略が他のキャラとかぶっていないか
→登場するキャラクターは全員が主人公であり、あるゲーム性の代表


『トリックテイカーズ』は「非対称性」をコンセプトにしています。どのキャラを選択したのかによって、トリックテイキングゲームに対する見方や戦略やゲーム体験が異なることを目指しています。

「あるゲーム体験」や「あるゲームメカニクス」をキャラ化させて、トリックテイキングゲームの上で成立させる、ことを試みています。

例えば、ギャンブラーはビッド系トリテのキャラ化です。



それでは、基本パック8キャラについて見ていきたいと思います。



(1)「キング」_強い手札でトリックに勝つことに挑みたい

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まず、「キング」は
トリックテイキングの王道として、単純に「トリックに勝つ」という基本を押さえたキャラです。大富豪などのゲームでもそうですが、勝つことを目的するゲームにおいて、強い手札だとうれしくなります。ですので、キングは「レア」という強いカードを確定で手札にできるようにしました。

キングは「強い手札でトリックに勝つことに挑みたい」という欲求に応えてくれます。

自分の手札が強かった場合、トリックに勝てるぞ、という想像はしやすくなり、その実現に向けて、キングを選択したくなって欲しいと思いました。


キングは、このゲームの基準にもなっています。

1勝_+20点 (基本点)
2勝_+50点 (よい)
3勝_+80点 (うまい)

他のキャラクターの得点も、まずはこちらをベースにして、そこからバランスをとるように制作しています。


最後に、キングは『トリックテイカーズ』としての顔でもあります。アニメ風のイラストだと好き嫌いが出やすいので、キングはリアルなライオンに近いようにイラストを描いて頂きました。



(2)「ギャンブラー」_ビッド系トリテをやりたい

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次に、「ギャンブラー」についてです。
トリックテイキングにおいて、「自分のトリックの勝利数を予想する」いわゆるビッド系は、古くからあるゲーム性です。私がトリックテイキングがおもしろいと最初に思ったゲームがビッド系でした。私と同じように、ビッド系トリテをやりたいという欲求を持っている方も多いのではないかと思います。

「ギャンブラー」は「ビッド系トリテをやりたい」という欲求に応えてくれます。

「予想して当てる」というスタイルを、さらに強調するために、自分の予想が当たるか外れるかについて、賭ける(BET)ことができるゲーム性を追加しました。

また、配られた手札だけで勝利数を予想するのも楽しいですが、それだと難易度が上がってしまいます。できることならば、気持ちよくプレイして頂きたいので、カードを交換できる要素も追加しました(ポーカー交換)。


予想しやすい手札の方が、きっとうまくいくぞ!という想像がしやすいと思います。

「きっとうまくいくぞ!」と自分では思っているのに、ゲームをプレイすると、様々な思惑があるため、思ったより自分の思い通りにはならないことも少なくないと思います。

「自分ではうまくいくと思っていたのに(想像)、それがうまくいかなかった時(実現できなかった)」→ 「また、挑戦したい」「なぜうまくいかなかったのか知りたい」という欲求が生まれるのではないかと思います。


カードの交換方法は、ポーカーと同じにしました。手札も5枚ですので、本当にポーカーをしているようにカードの交換ができます。また、ポーカーにもBET(賭ける)のシステムがあるので、ポーカーのイメージとつなげることで、ギャンブルっぽい雰囲気も出ると思いました。カードの交換方法も「ポーカー交換」と名付けることにしました。ギャンブラーはキャラとして、まとまりがよくなったなぁと思っています ^^;

個人的に、ビッド系トリテ『スカルキング』が私は好きです。ギャンブラーのイラストは、海賊っぽくしてもらいました。



(3)「レジスタンス」_確定で革命をしたい

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「レジタンス」は、
トランプゲーム『大富豪』の「革命」の楽しみを、そのまま落とし込んだキャラクターです。

大富豪で革命ができる手札がくると、ワクワクします。「レジスタンス」は「革命したいという欲求」に確定で応えてくれます。

「革命」は「いつ革命をするべきか」と、タイミングを計ることそのものが楽しいと私は思っています。ですので、革命タイミングに焦点を当てて、ゲーム性を追加していきました。


5回のトリック中に「1回の革命さえ成功すればよい」というようにして、プレイヤーに革命するタイミンングを見計らうことに集中してもらえるようにしました。そのため「何勝したから何点入る」という得点方法ではありません。

また、革命をただ成功させればよい、だけですと、「初手に白旗の革命」で終わってしまい、これでは作業ゲーになってしまいます。ですので、どの手札で革命をしたのかによって、難易度と得点の差を設けることで、タイミングを見計らう楽しみを増やしました。

「黒で革命で勝利(=ゲームに勝利)」が成功するかもしれない、というドキドキ感も、レジスタンスで味わうことができます。


革命はカードの強さを逆転させますが、「先出しで勝利(カードの強さが同じ場合)」は変わりません。この効果が逆転しない1番の理由は、他プレイヤーがレジスタンスより先に白旗を出すことで、革命を封じることができるためです。

レジスタンスは「自分のターン時」に革命を宣言できます。ですので、自分の手番が最後の時に、革命をすれば確定で勝ちが決まります。ですが、その前に白旗を出されると、革命時に勝利ができません。このような他プレイヤーによる間接攻撃ができる仕組みが、私は好きです。



(4)「ハーミット」_運ゲーという理不尽な思いを回避して、手札コントロールしたい

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「ハーミット」は
「トリックに負けたい」という欲求に応えてくれます。が、それだけでなく「マストフォローを回避したい」という欲求にも応えてくれます。

トリックテイキングゲームは、トリックをとるとマイナス点になる、というゲームも多く、「トリックに負けたい」という欲求はあると思います。この欲求をさらに実現しやすくなるため、マストフォローを回避しやすい手札交換を採用することにしました。

しかし、トリックテイキングゲームにおいて、マストフォローというのは、ゲームのおもしろさと直結しています。マストフォローはとても強いルールですが、だからこそ、あるスート(種類,マーク)を枯れさせて、マストフォローを回避できる状態にもっていくことで、開放感を味わうことができます。

一方で、マストフォローのルールが強すぎるために、本当にひどい時は、自分の手札をうまくコントロールできず、運ゲーのような理不尽な思いをすることもあります。ハーミットはこれを回避できます。

ハーミットは、手札を1枚交換できることも含めて、必ず手札コントロールができます。つまり、ハーミットは運ゲーという理不尽な思いを回避して、手札コントロールができることを約束してくれているのです。

(といっても、そもそも手札5枚なので、どのキャラでも、ある程度の手札コントロールはできるのですが、^^; )


他のプレイヤーが、マストフォローに縛られる中、ハーミットだけが、手札交換のチートスキルを持っていて、気楽で、安心して、ゆうゆうとプレイできるので、このキャラを選択したいと思う理由はあると思っています。トリテ初心者にもおすすめです。

ハーミットは「0勝黒王冠ねらい」が基本の戦略ですが、3勝をねらうという手段ももっています。

「ハーミットは0勝をねらう」という基本戦略を、プレイヤー間で共有しているからこそ、それをミスリードと利用でき、3勝をねらって、他のプレイヤーの計画を狂わせることができます。

このような、トリックに負けるスタイルから、トリックに勝つスタイルに変更するイメージを、「白旗でレアで勝利する」でさらに強化をしました。この効果は、白旗でトリックに負けたい時にも勝ってしまう(or勝たされてしまう)ので、いいようにバランスがとれたと思っています。

最後に、ハーミットは邪道なスタイルから、キャラはヘビと決めましたが、ヘビそのものだと、嫌悪感が出て、キャラを選んでくれなくなると、さみしいので、ヘビを装った人間にしました。人間だと親近感を持ってもらえますし、ハーミットは他のキャラよりもスキルが地味なので、人間がちょうどいい感じにフィットしたと思っています。



(5)「バーサーカー」_特別な専用デッキを使いたい

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「バーサーカー」は専用デッキをもっています。個人的には「専用デッキ」というだけで魅力があると思っています。

例えば、「5人のキャラがいて、それぞれが異なる専用デッキを持っていて、プレイヤーは各自キャラを選択して、トリックテイキングをする」というゲームがあったとしたら、やってみたいなぁと私なら思ってしまいます。

「バーサーカー」は「特別な専用デッキを使ってみたい」という欲求に応えてくれます。

「専用デッキ」には、「数字の10」や「バーサーカーカード」といった、他のプレイヤーが使用できないカードを含めることで、特別感を倍増させました。


バーサーカーデッキは一見して強いですが、「黒10」や「レア」が入らない時もありますし(バーサーカーにも調子の悪い時があるようです)、マストフォローのルールがあるために、黒1でリードされた時は、出したくないタイミングで「黒10」を出さなくてはいけません(レアを持っていないと厳しい)。

「赤青緑10」も強さそうですが、黒に負けてしまうので、必ずしも強いとは言えません。

はじめてバーサーカーデッキを使った時は、これって5勝できるんじゃない?と、想像するかもしれません。でも、蓋をあけてみると、2勝くらいしかできなかったりします。だからこそ、次はもっとうまくやってみせる。と思って頂けるのではないでしょうか。


最終ラウンドの「0勝でゲームに勝利する」は、条件は厳しいですが、キングで5勝するよりは、難易度は低いと思います。トリテのゲーム『スカルキング』で「海賊」という強いカードがあります。トリックテイカーズにおける「レア」と同じなのですが、この「海賊(レア)」を持っているのに、0勝を宣言する友達(プレイヤー)がいて、うまく成功しているのを何度も見たことがあります。

「強いカードを持っているのに、うまく負けるようにするプレイする」そういった楽しみ方があるのです。それを、バーサーカーで楽しむこともできます。「一発逆転でゲームに勝利する」を賭けて!



(6)「アドベンチャラー」_多様なアイテムを使用して、臨機応変にプレイしたい & 運も好き

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「アドベンチャラー」は、
多様なアイテムを使用して、臨機応変にプレイできる楽しみ方を持っています。アイテムを装備して冒険に出かけるイメージは、RPG風な体験ができます。どんなアイテムが獲得できるのかと、それに伴った得点は「運の要素」が強く、冒険らしい一喜一憂が楽しめます。

個人的には、魅力的な要素をつめこんだキャラクターだったのですが、皆さんのプレイ感はどうだったのでしょうか。


まず「初期装備」のシステムが個人的には気に入っています。これからトリテの冒険に出かけるための旅支度。旅は準備の時から楽しいですよね。

トリックに勝利すると、レベルアップして、アイテムを1つ多く持てるようになります。トリックでとったカードをそのままアイテム装備枠として使っちゃう。我ながらイイ案を思いついた!と思っているのですが ^^; hahaha


私は、運の要素が強いゲームは苦手なのですが、それでも「欲しいと思っていたアイテム(exポーカーのカード,麻雀の牌)が偶然くる喜び」というのはあるなぁと思っています。

私は運の要素が嫌いなのではなく、自分でコントロールできないことが嫌いなのだと思います。ですので、運で得点が左右されることはあるけれど、アイテムをどう残していくかといったコントロールができることで、、ある程度の解決ができたのかなぁと思っています。

ただ、このキャラの1番の問題点は、アイテムがたくさんあるため、インスト泣かせであること。ですが、どうぞ、アドベンチャラーをよろしくお願いいたしますm(_ _)m



(7)「コレクター」_パターンをつくりたい

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「コレクター」は、
役をそろえること(セットコレクション)を、楽しむことができるキャラです。セットコレクションのゲームメカニクスは、軽ゲーから重ゲーまで、本当にたくさんのボドゲに組み込まれており、多くのゲームデザイナーやプレイヤーに好まれているメカニクスだと思います。

無作為に貝殻を100個拾ったとして、また、時間を持て余しているとしたら、私たちは、大きさで貝殻を分けてみたり、似た柄の貝殻で分けてみたり、色がグラデーションになるように並べてみてしまうかもしれません。パターンを見つけたくなる人類の癖、セットレクションは、私たちの誰もがもあっている欲求とさえ、思えてしまいます。

「コレクター」は私たちのパターンをつくりたいという欲求に応えてくれます。


コレクターの他のキャラとの差別化は「トリックでとったカードを使用する」ところにあります。他のキャラとは明らかに価値観(ねらい)が異なるため、他のプレイヤーからすると、思わぬところで、コレクターはトリックに勝ちにくることがあります。

コレクターは、他のキャラからすると「不確実性」そのものになりえているのではないか、と期待しています。
つまりは「予測不能キャラクター」です(コレクターの視点で考えられないと、行動は予測は難しい)。


ゲームには「不確実性が必要」という話はよく聞きます。終わるまで何が起こるかわからないからこそおもしろい。物語もストーリーを知っていて読むのと、知らない状態で読むのとでは、楽しみ方が大きく変わります。

プレイヤー同士のインタラクション(相互作用)があるゲーム(ソロ要素が低いゲーム)では、不確実性が生まれやすいものなので、それだけでも十分だとは思いますが、もし、コレクターが不確実性を生み出すキャラになりえていたとしたら、それはそれでおもしろいなぁと、ひそかに思っております。


基本パック8キャラの中では、コレクターが1番、別のゲームをしている体験ができるかもしれません。



(8)「ルーラー」_タスク(課題)をクリアしたい

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「ルーラー」は、
協力ゲームを体験できるキャラクターです。と言いたいところですが、どちらかと言えば、課題(タスク)を選んで、その課題(タスク)をクリアすることを楽しむキャラクターと言えそうです。

「他者と協力したい」という基本的な欲求は多くの方が持っていると思います。その欲求を満たしてくれるキャラを目指したのですが、実体験としては、協力ゲームを体験できたとは言えないですね ^^;

その理由は、協力者との阿吽の呼吸などを実感できないから、でしょうか。少なくとも、協力者が私のことを全く考えてくれていないところが、協力している体験を得られていない理由のように思います。


協力系トリテのゲーム『ザ・クルー』が個人的に好きでして、協力系のキャラは絶対に入れたいと思っていました。ですので、このキャラは最初の段階から構想にあったキャラでした。

タスクの種類は「とる系」「とらない系」だけでなく、「1トリックだけとる」とか、他にも種類をつくっていたのですが、トリック開始前の準備に、タスクの選択に時間がかかりすぎることを問題に、最終的には、タスクの種類はわかりやすくシンプルにしていきました。


ルーラーの楽しみ方は、他のプレイヤーの視点にたって考えることにある、のではないかと思っています。

自分の手札と、他プレイヤーのキャラ性との関係性を考えて、タスクカードを渡し、プレイすることが求められます。



最後に

「他のプレイヤーの視点に立つ」というのは、私の中ではボドゲがうまくなるために磨きたいスキルだと思っています。

私が「非対称性ゲーム」に魅力を感じたのも、キャラによってプレイヤーの視点が異なり、他プレイヤーの視点を理解しないと、ゲームに勝つことは難しいところにあるのだと思います(他にも、同じものを見ているのに、キャラによって見え方が異なる、という点が好きです)。


ドミニオンの攻略本的なのを読んでいた時に「アグリコラがうまくなると、ドミニオンもうまくなる」ようなことが書いてあって、おもしろいなぁと思ったことがあります。

個人的にはドミニオン知ってから、ボドゲが前よりうまくプレイできるようになったと思っています

ですので...

「トリックテイカーズがやると、ボドゲがうまくなる」みたいなゲームになれていたらいいなぁと願っています。

■どうやって勝てばいいのか、戦略を考えるようになった、とか。

■他のプレイヤーの視点を考えながら、プレイできるようになった、とか。

■キャラを通して、ゲームメカニクスを体験として理解することで、ゲームメカニクスがかぶっているボドゲをプレイした時に、スムーズにプレイできるようになった、とか。

■キャラ固有能力が、他のボドゲより理解が大変なので、、これに慣れていると、他のボドゲのキャラ固有能力を、前より深く理解するようになった、とか。


以上です。


【前編】キャラのゲーム性「何を考えて基本セット8キャラを制作したのか?」(トリックテイカーズ)

をおわりにしたいと思います。


【後編】拡張セット:7キャラクター紹介(トリックテイカーズ)はこちら→→→

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