メンタリズムって何?メンタリストは何をする人?
今回はそもそもメンタリズムとは何か、メンタリストはどんな人かって話になります。
※最終更新:2022年06月18日
※ほぼ同じ内容の記事がブログにもあります
メンタリストが本来意味していたこと
メンタリストは本来、心霊商法を行う人を指す言葉でした。占いや降霊術を行う人、超能力者なんかもここに含まれ、特にそれでがっぽり稼いでいる詐欺師を意味する蔑称としても使われていました。
海外ドラマ『メンタリスト』をご覧になったことがあれば伝わりやすいと思いますが、主人公パトリック・ジェーンがCBIに協力する前の職業が正にメンタリストです。
「インチキ霊能者=メンタリスト」なので、パトリック・ジェーンは正確に言うのであれば「元・メンタリスト」になります。
なお、この作品では「メンタリスト」って単語が2回位しか出てきません。それも「流石メンタリスト(意:やるぅ!)」の様な若干の皮肉や、「メンタリスト。口だけ野郎」とストレートな罵倒を伴った使い方がされています。
現在もイギリス等の英語圏では「メンタリスト」は蔑称として使われることがあるそうです。
日本のドラマ『トリック』に出てくるカルトの指導者や自称霊能者もメンタリストと呼ばれる人種と言えます。
現代のメンタリスト
心霊商法詐欺師などが使っていたテクニックを舞台芸術に利用したパフォーマーをメンタリストと呼びます。
要は芸人、或いは奇術師の類です。
かつては詐欺師を、現在では芸人か奇術師そして詐欺師を意味します。
(やや特殊な例だと、メンタリズムを得意とするマジシャンが他のマジシャンと区別する際にメンタリストと呼ぶ、或いは名乗る場合があります)
上述のドラマ『メンタリスト』やダレン・ブラウンの番組が流行する2000年前後までメンタリストを名乗る人は非常に少なく、日本ではメンタリストDaiGo氏がメディアに出るまでほぼいませんでした。元々あまり良い意味で使われる名称ではないため、当然といえば当然です。
(注:DaiGo氏は当初「日本唯一のメンタリスト」を名乗っていましたが、実際には20世紀初頭に海外で「メンタリスト」を名乗り活躍した日本人が既にいるため、正確には「日本で唯一検索エンジンでヒットするメンタリスト」でした)
余談ですが、世界最高のメンタリストとも称されるダレン・ブラウンも自身では「メンタリスト」と名乗ることはなく、普段は「サイコロジカル・イリュージョニスト」と名乗っています。
オフィシャルページでも "Mentalism" 或いは"Mentalist"の単語が全く使われていません(注:最近はサブタイトルに "Mentalist" が含まれていますが、本文では現在も使われていません)
なお、TED では「メンタリスト」を名乗っていたので、求められるキャラクターによって変えているようです(マジシャンがカードを分かりやすく敢えてトランプと呼ぶのに近い感覚かも?)
○○メンタリストという意味不明の存在
そう考えると「○○メンタリスト」って存在が如何におかしいかが分かります。
実際にいるかは分かりませんが…
ビジネス・メンタリスト→ビジネス芸人・ビジネス詐欺師
恋愛メンタリスト→恋愛芸人・恋愛詐欺師
〇〇メンタリスト→〇〇芸人・〇〇詐欺師
と言った具合になります。本来の意味を知っている人であれば……ビジネスネタとかを自在に操る芸人さんかな?と思うわけです。或いはその分野に特化した詐欺師ですね。
だからこそ、シンプルに「メンタリスト」と名乗る方がむしろ良いのですが、差別化をしたいという気持ちも分からなくはありません。
例えば、Mr.マリック も超魔術の造語を使いメンタリズムと似たパフォーマンスを演じています。これは差別化のため、また蔑称を避けるためだったとも推測できます(後者については完全な憶測です)。
なお、Mr.マリックが当初やっていたネタはアメリカのメンタリストとしても有名なマジシャンである Max Maven のほぼ丸パクリであり本人から苦言を呈されていた話もあります。
日本のメンタリスト事情
日本でメンタリストと言えば某D氏なわけですが、日本のメンタリズムブームでは「メンタリズム=心理学」の認識が深く根付いてしまいました。
そにれより心理学に興味を持った人、大学の専攻にした人もいたと思います。
しかし…
どんなに心理学を学んでもメンタリズムができるようにはなりません…
(詳細は後述)
メンタリズムとは
古来より詐欺師や奇術師、占星術師、一部のカルトなどで使われるテクニックを統合しパフォーマンス向けに改良したもの、あたりが現在のメンタリズムの説明として妥当かと思います。
現代のメンタリズムのパフォーマンスで行われるものが読心術やテレパシー、予言、千里眼、サイコメトリーの再現であるのも、元々が霊能者を騙るための手段だった名残だと言えます。
セオドール・アンネマン曰く
1900年初頭のメンタリストであり、現代のメンタリストにも使われる多くの手法を発案したセオドール・アンネマン(Theodore Annemann)は以下のように語っています。
適当に翻訳すると「メンタリズムはマジックが成長した形である」。彼の主張ではメンタリズムはマジックの派生になります。
メリット・マッキニー曰く
また、映画『グランド・イリュージョン』に登場するメンタリスト、メッリット・マッキニーは劇中でこう語っています。
ほとんどトリックとありますね。なお、一番最後の文はふざけて言っていますが、割と大事な要素だったりします。
メンタリストDaiGo曰く
これを読んだ上で、Wikipediaの『奇術』の項目を見てください(以下一部抜粋)
合理的な原理=科学
実現不可能なこと=超常現象
こう置き換えることができますし、メンタリストDaiGo氏のメンタリズムについての説明は奇術についてとほぼ同じことが分かります。
つまり、以上のことから奇術とメンタリズムは本質的に同じであると言えます。
メンタリズムの本質とメンタリストの正体
メンタリズムの本質は奇術であり、メンタリストの正体は奇術を利用し特殊能力や専門知識があると見せかけて信用を得る人です。
メンタリズムや奇術を行うために特有の知識と技能が必要なわけですが、それは心理学に由来するものではありません。
メンタリズム≠心理学
メンタリズムといえば「読心術」、相手の心を読んだようなパフォーマンが有名ですが、読心術は心理学ではありません。
"Newtonライト2.0 『心理学』"では以下のように書かれています。
心理学は誰もが当てはまる特徴を科学的に研究する学問です。その知識があれば相手の心理的な傾向は読み取れるかもしれませんが、相手の初恋の人の名前や具体的な数字を当てるのは心理学ではほぼ不可能です。
心理学という名のツール
元は「霊的な力」や「超常現象」として、現代では「心理学」と称して読心術などのメンタリズム的行為が行われています。
以前は霊能力の様な超常現象の存在が読心術などができる理由として説得力があったわけですが、科学が発展した現代でそれは通用しません。そこで「超常現象」の代わりに「心理学」がメンタリズムに説得力を持たせるためのツールとして使われるようになりました。
既に述べたように読心術は心理学とは別物であり、本質は奇術でありトリックです。これは手法そのものが 400年以上前から現代に至るまでほとんど変化しておらず、霊能力から心理学と名称が変わっただけで同じことが行われていることからも分かります。
心理学である必要はない
仮の話ですが…今後「体内から発せられる微弱な電波」が読心術をする上で非常に有用かもしれないという研究が出たとします。そうなった場合、恐らく世のメンタリストは「心理学的に〜」みたいな演出はやめて「微弱な電波が発せられることで…」と言い始めるはずです。
もしかしたら、それを受信するための小道具を用意するかもしれません。
(あれ?これ何かのビジネスに似ていますね?)
メンタリストにとって「霊の存在」や「心理学」は、あくまでも自分たちの価値を高めるための看板であり、それは時代によって変化します。これは別に「波動」でも「暗黒物質」でも何でもよくて、説得力を持たせることさえできれば採用されます。現在でも「霊」や「オーラ」は使われていますし、馴染みがあるかと思います。
近年のメンタリストが心理学に詳しい、或いは詳しい風にしているのも、やはりリアリティを出すためと言えます。
(※単純に心理学が好きって人も少なくありません)
個人的な予測ですが、最近は認知科学分野でカール・フリストンの「自由エネルギー原理」や「予測コーディング理論」が注目されてきているため、今後これらの単語を使う人が増えるかも知れません。
「心理学的に〇〇という傾向があります」→「ベイズ的に考えて△△を選ぶ確率が高いです」みたいな感じになるんじゃないかと…(適当)
メンタリストの心理学離れ
海外メンタリズム事情を見ると「心理学」を主張するメンタリストは減少傾向にあります。
というのも、やはり読心術と心理学はそこまで相性が良くないからです。心理学で分かるのはあくまでも傾向であり、相手が思い浮かべた物をズバリと当てる方法、根拠とするにはエビデンスとしては弱すぎることが周知されつつあるのが原因として考えられます。
近年は心理学的な読み物が流行っているため、その限界値、 "できる or できない" が知れ渡ってきていますし、心理学実験における再現性問題が2012年頃から問題視され、ここ数年でよりその傾向が強くなっています。
認知科学や神経学の発展、実験方法の見直しに伴い、以前に提唱された説が否定されてるケースが増えてきたのも、心理学をテーマにすることのリスクになっています。
自己啓発本などでよく出てくる心理効果のエビデンスが怪しいのでは?って話については以下のサイトが良くまとまっています。
ピグマリオン効果やダニング・クルーガー効果など、メディアやSNSでよく見かけるもの、更に言うとここ数年以内に出た心理学系の本でも見かける内容が含まれており、それらが如何に調査されず適当なことが書かれているかが分かります…
大衆の心理学に対するリテラシーが高くなるにつれ「あのメンタリストが言ってた話、ここ数年の実験結果だと否定されているけど、実は心理学をよく知らないんじゃないか?」と思われるリスクが上がりますし、それが原因で「彼が言っていることは全く信用ならない…」となってしまったらメンタリストの完全敗北です。
(※メンタリストの最終目標はどんな形であれ信頼を得ることなので)
ピュア・メンタリズム
ここ数年で海外で発表されたメンタリズムの手法は物理的な仕掛けに依存しないものが増えているのもリアリティを重視した結果であると予想されます。
種も仕掛けもない所謂「ピュア・メンタリズム」は、考案者本人ですら完成までに7年掛かった上に100%の成功が保証されないものありますが、その代わりに強いリアリティを持たせることができます。なんせ、実際に本人の能力でやっているわけで…リアルであればリアリティの有無を心配する必要がないからです。
ただ…ピュア・メンタリズムの手法を発表している人がショーでは全くそれを使わない…なんてこともあります。予めこういうことが「できます」と周知しておくことで、あたかもスキルがあるように見せかけている…かは分かりませんが、これもまたメンタリズム的です
(実際には成功率の問題でショーでは使い物にならない、なんてこともあります)
メンタリズムを学ぶには
ここまで読んだ方は既にお気づきかもしれませんが、心理学をいくら勉強しても読心術などのメンタリズムはできません。メンタリズムを覚えたければ心理学ではなく、メンタリズムを勉強すべきです。
奇術とほぼ同質であるため、「メンタル・マジック」と呼ばれる分野を中心に調べてみるのがおすすめです(厳密にはメンタル・マジックとメンタリズムは別物ですが、原理や方法は共通する部分が多くあります)
メンタリストは詐欺の手口から派生しているため、その手法を詳しく知ることも役に立ちます。
メンタリストの言う「心理学的手法」は元々詐欺師がよく使っていた手法でもあり、現代では研究されマーケティングの方法として一般的に使われています。なので、メンタリストよりもマーケターや営業職をやっている人の方が実は詳しいってことも珍しくありません。接客業のプロもその辺のメンタリストを凌駕する観察力やきめ細やかさがあります(あるマジシャンいわく、自称メンタリストよりも接客のプロの方がよほどコールド・リーディングが上手い)
セミナーを開催しています(追記2024年6月)
メンタリストDaiGo氏のプロデューサーであり、その全パフォーマンスの考案、および初期の書籍の監修を行なっていた眉村神也氏と不定期にメンタリズムに関するセミナーを開催しています。
次回がいつになるかはまだ決まっていませんが、気になる方は各 SNS やWEBサイトをチェックしてください。
追記:ババ抜きについて書きました:
定期購読マガジンを始めました
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