島の惨状 Ⅱ【天候術師のサーガ 15】
〜 イノリゴ島 市街地 〜
ナナミとアガヴェは
やっとの思いで
島の市街地に着いた
ふたりはすでに
暑さのせいか
かなり消耗しており
流れる汗が
止まらなかった
市街地も全焼まではいかないが
ほぼ壊滅的だった
燃え尽きた瓦礫が
あたり一面に広がっており
方角さえもわからなかった
火災は見当たらなかったので
ナナミの実家を消火した
オロロンの魔法は
島全土に
効力を発揮していたに違いない
しかし
遺体もそのまま放置されており
ナナミとアガヴェのふたりは
魔導レーザー兵器の恐ろしさを
自らの目で再確認した
焼け焦げた肉の匂いや
オイルの匂いが
あたり一面に拡がり
混ざり合って
ふたりの胃と嘔吐中枢を刺激した
うっ…。
おえっ!
── 島ギャル、アガヴェ
アガヴェは道端に嘔吐した
ナナミが
ナミナおばあちゃんをおぶったまま
アガヴェの元へ駆け寄り
オロロンをおぶった背中を
わずかな隙間に手を入れてさすった
どうして…。
こんななっちゃったんだろ…。
うちら、なんも悪いことしてないのに…。
オロぴょんを連れてきたから…?
── アガヴェ
ううん、
オロロンくんは
疫病神なんかじゃないよ。
だって、私たちを火事から
救ってくれたんだから。
誰が悪いとか、
全然わからないけど
私たちが
どうしようもできないことを
しでかす神様は、
きっとどこかにいるんだと思う。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
そう言うとナナミは
グローブをつけた拳を
グッと握りしめて
晴れ渡る空を眺めた
16へつづく
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