雨の小屋【天候術師のサーガ 2】
ナナミは
背丈の二倍ほどある
高い木の塀を軽々越えて
友人との待ち合わせに向かった
ナナミの通っている学院では
生徒や教師を含め、
みんな魔法が使える
そして、
「魔道デバイス」なる謎の道具をもち
腕には「魔除けスタンプ」と呼ばれる
タトゥーが入れてある
「魔除けスタンプ」の個数が多いほど
魔法の威力は強大になる
だから、
授業中の教室では
大抵火の玉が飛び交っているため
教師たちはひたすら
打ち消し呪文の詠唱に追われることになり
なかなか授業が進まない
学院の休み時間に
ナナミの前の席の
島ギャル、アガヴェが
突然ナナミに話しかけた
ねぇ、ナナミっち。
心霊スポット行きたくね?
── 島ギャル、アガヴェ
う〜ん、そんなとこ行って何が楽しいの?
私、幽霊とかあんまり興味ないよ。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
幽霊がいるだけじゃないんよ。
「雨の小屋」って呼ばってる
ボロ小屋でっさぁ、
近づいたらどんなに晴れてても
雨降ってくるんよ。
ねぇ、それってすげくね?
すげくね?
── アガヴェ
え、それはすごいかも。
どうゆう仕組みなのか
知りたいかも。
── ナナミ
ナナミは幽霊や宇宙人などの
超常現象の類には一切興味がなかったが
島いちばんの心霊スポットで起こる
不可解な現象のメカニズムを
自身の目で確かめたくなった
そして今日に至る
ナナミは魔道デバイスを使わず
自身のカンを頼りに
「雨の小屋」近くの
森の入り口へたどり着いた
すでに
アガヴェ率いる島ギャルチームは
森の入り口へ辿り着いていた
ナナミっち、
おっそいぢゃ〜ん。
── アガヴェ
アガぴ〜、この子なの?
一緒に心スポ回るって子。
── 島ギャル、メイプル
うん、そだよ。
うちと同じクラスのナナミっち。
前後ろのよしなってやつ。
── アガヴェ
え〜、全然ギャル味足んなくな〜い?
あれじゃぁ、
がちフライデーチャイナガールぢゃん。
── メイプル
え〜、メイぷゆセンス無さスティ。
あれはあれでカワイっしょ。
ネオギャルって感じて、
新たなギャル道の
先駆者っしょ。
── 島ギャル、マヌカ
マヌかす、
良い線行ってんぢゃん。
うちもナナミっちのそ〜ゆ〜とこ
かってたんだ〜。
── アガヴェ
え?
フライデー?
ネオギャル?
なんのこと?
── ナナミ
島ギャル軍団から飛び交う
呪文のような単語に
ナナミは半ばついていくのを諦めたが
気を取り直して
「雨の小屋」の調査を始めることにした
空は現在、曇り
湿度は少し高めだ
家を出た時よりも
辺りはどんよりしている
なんか持ち物とか要る?
とりあえず手ぶらなんだけど。
── ナナミ
え〜、魔導デバイスあればいけるっしょ。
蛍の光モード使えば明るいし。
え、ナナミっち、
今日日魔デバ持ってないの?
── アガヴェ
うん、もってない。
おばあちゃんが、
あんなもん持つなって。
── ナナミ
えっ、まぢ?
魔デバなかったら
この世で生きていけなくね?
地図とかどうやって見たの?
── メイプル
え、地図なんか見てないよ。
カンで。
── ナナミ
エグ…。
ここまで地図無しはエグいて…。
── マヌカ
え〜、そうかなぁ〜。
── ナナミ
魔導デバイスが
第二の心臓と言っても
過言ではない島ギャルたちは
ナナミの言動に度肝を抜かれた
うちはとりま
オバケボコるために
釘バット持ってきた。
ボコれなかったら
火の玉魔法で千本ノックするわ。
── アガヴェ
うちはニンニクと十字架。
お札もあるよ。
もしもの時は魔法ででっかくする。
── メイプル
うちは藁人形と釘。
── マヌカ
いや、それどちらかというと
オバケ側の道具ぢゃん。
誰かに呪いかけるやつぢゃん。
── アガヴェ
いけるっしょ。
あと、うちのカナヅチ魔法唱えれば
全然余裕っしょ。
── マヌカ
うちら結局脳筋ぢゃん。
── アガヴェ
あんたはなんの魔法使うの?
── メイプル
え?魔法?
使わないよ?
── ナナミ
え、ま?
魔除けスタンプ押してないの?
こんなに流行ってんのに?
── メイプル
うん…。
おばあちゃんが
あんなもの押さなくていいって。
── ナナミ
まぁ、いいぢゃん。
仲良くやろうよ。
早く行こ。
── アガヴェ
4人が「雨の小屋」に近づくと
雲行きはどんどん怪しくなり
そして、
ウワサ通り雨が降ってきた
うわ、
まぢで降ってくんぢゃん。
しかも結構土砂降りだし。
── アガヴェ
4人は「雨の小屋」にたどり着くと
雨宿りできる屋根を探した
しかし、どこも錆びついて
穴が空いており
結局雨ざらしになった
「雨の小屋」は錆びついた
トタンのツギハギで出来ており
いかにも幽霊が出そうな雰囲気だった
入り口はすりガラスで覆われており
ところどころ割れてたが
中の様子は見えなかった
4人は入り口の前に並び
中へ入る準備をした
ぢゃあ、いっせいのせで入るよ。
いっせいの〜、せ!
── アガヴェ
4人のうち、
ナナミだけが小屋の中に入り
あとの3人は扉を閉めて
逃げてしまった
3へつづく
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