雨の天候術師【天候術師のサーガ 13】
オロロンくん、危ないよ!
下がって!
── イノリゴ島の少女、ナナミ
ナナミは
オロロンに注意を促したが
彼はまるで
誰かに操られているかの如く
聞く耳を持たなかった
そして、
ナナミは業火の中
オロロンが
何か呟いているのが聞こえた
アメアメフレフレ、
モットフレ。
サカサノカサハ、
カサカサノハナ。
テルテルボウズハ、
ウミボウズ。
アマゴイ、ドシャブリ
アメフラシ。
ワガナハオロロン、
アメノウェザード。
ホホヲナガレル、
ナミダノカワ。
── 雨の天候術師、オロロン
オロロンが謎の呪文を唱え終わると、
先程まで雲ひとつなかった空は
たちまちどんよりした厚い雲に覆われ、
大粒の雨が降ってきた
はじめは大きい水滴のようなもので
じゃっぽんじゃぽんと
奇妙な音を立てて降っていたが
やがて細やかな霧雨に変わっていき
まるで天然のシャワーのようになった
雨が…、
降ってきた…。
── 島ギャル、アガヴェ
燃え盛る炎は途端に勢いを失い
程なくして鎮火した
辺りの山や森を焦がしていた炎も
瞬く間に消えていった
この時オロロンは白目を剥き
頬を中心とした顔中に
発光するアザが浮かび上がっていた
まるで魔法陣か何かのようにも見えたが
彼は悲しみに暮れ
泣いているようにも見えた
ナナミの家は完全に鎮火したが
築年数の古い古民家は
火災の影響で
今にも倒壊寸前だった
ナナミは
必死にナミナおばあちゃんの姿を探したが
部屋には見当たらなかったので
台所の床下倉庫の板木を外して
中を確認した
14へつづく
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