脳の洗濯【天候術師のサーガ 33】
〜 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜
セメちゃん、
お姉ちゃんの名前はナナミです。
よろしくね。
── イノリゴ島の少女、ナナミ
アガヴェの妹セメレは
恥ずかしそうに俯いた
ほら、セメちゃん。
ごあいさつして?
── 島ギャル、アガヴェ
セ、セメレでちゅ。
よろちくおねがいちまちゅ。
── アガヴェの妹、セメレ
かんわいいぃ〜!
セメレちゃん、
よろしくねぇ〜!
── ナナミ
ナナミもこんな時代があったんじゃぞ。
── ナミナおばあちゃん
全然覚えてないけど、
こうやっていろんな人に
愛されてたのかなぁ〜。
── ナナミ
ナナミは
セメレにデレデレになりつつも
少し複雑な顔をした
コンコン
しっ!
静かに!
── アガヴェ
突然、
アガヴェの部屋の扉を
何者かが叩いた
コンコン
もう一度ノックする
ひとつ違和感があるとすれば
ノック音がやたら低い位置で
鳴っていたことだ
ナナミとおばあちゃんは
隠れてて。
誰だろう…。
イルくんはノックなんてしないし
ポリくんももう少し背が高い気がする。
誰!誰なの!
── アガヴェ
お、おねぇちゃぁん、
こわいよぉ〜!
── セメレ
アガヴェが不審に思い警戒すると
セメレは異変を察知し泣き始めた
アガヴェは
火の玉魔法を発動させ
何者かの訪問に備えた
返事しないなら、
こっちから開けるよ…。
── アガヴェ
アガヴェが用心深く扉を開けると
そこには先ほど洗濯機の中に放り込んだはずの
オロロンが着ていたパーカーを着た
水の化身が立っていた
このっ!
── アガヴェ
アガヴェは即座に
発動していた火の玉魔法を
水の化身に撃ち込んだが
相手は水そのものなので
もちろん攻撃は無効化されてしまった
魔法が効かない!
── アガヴェ
うわぁぁぁぁあ!
── セメレ
水の化身は大股で
アガヴェの部屋に入ると
アガヴェとナナミの襟首を掴んで
部屋の外へ引き摺り出した
いかん!
── ナミナおばあちゃん
おねぇちゃ〜ん!
── セメレ
セメレが水の化身に駆け寄ろうとすると
水の化身は扉に水の壁をはめ込んだ
ナミナおばあちゃんは
セメレをすかさず抱き寄せ
彼女の身の危険を回避した
どうやら敵ではなさそうだね。
もしや雨の坊やの魔法かい?
── ナミナおばあちゃん
〜 アガヴェ家のシェルター 脱衣所 〜
く、苦しい…!
── ナナミ
く、くそ〜!
力が強すぎる!
── アガヴェ
ナナミとアガヴェは
抵抗虚しく
脱衣所まで連れて行かれた
水の化身は
洗濯機の前で止まると
ふたりを洗濯機にぶち込んで
そのまま起動した
洗濯機を起動した後、
水の化身は水に戻り
床にびしゃりとこぼれた
わぁぁぁぁぁあ!
── ナナミとアガヴェ
洗濯機に入れられたふたりは
飛空艦サミダレに遭遇する前の記憶が
脳の中で甦っていた
正確に言うと
記憶にかかった雨は
乾燥されるように上がり
しっかり映像として甦った
ペッ!
と洗濯機はひとりでに
ふたりを吐き出し
ナナミとアガヴェは
水浸しの床に尻餅をついた
思い出した!
これオロロンが着ていた
パーカーだよ!
なんで今まで
思い出せなかったんだろう…。
── ナナミ
あんなに大変な思いをしたのに
なんで忘れてたんだ…?
── アガヴェ
どたどた!
ふたりの耳には
廊下を誰かがかけてくる音が聞こえた
パッと脱衣所の電気が点き
アガヴェのママが入り口に立っていた
こら!
こんなところで何してるの!
なんであなたがここにいるのよ!
── アガヴェのママ
洗脳が解けたふたりに
アガヴェのママの雷が落ちた
34へつづく
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