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作戦決行【天候術師のサーガ 38】

〜 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜


 あ、研究室のドアなんだけど、
 指紋認証だった、ね。
 何書いてるのか全くわかんなかったわ。
 ── しまギャル、アガヴェ

 急いで送ったから、
 変な風になっちゃったね。
 ごめんごめん。
 ── イノリゴとうの少女、ナナミ

 そしたらどうすんの?
 指紋認証だったら
 パパの指紋しか読まないわけでしょう?
 これじゃ、研究室に入れないぢゃん。
 ── アガヴェ

 そこで。
 換気口から侵入しようと、
 私は考えています。
 ── ナナミ


ナナミは学院アカデミーの教授のように
かしこまって話した


 まぁ〜、それしかないかぁ。
 んで?
 どっから入んの?
 ── アガヴェ

 お風呂場の換気口。
 トイレのはとてもじゃないけど
 狭すぎて入れそうになかったよ。
 ── ナナミ

 風呂場はみんな使うから、
 みんな使い終わってからぢゃないと
 入れないよね。
 ── アガヴェ

 そう
 作戦の決行は日付変わって一:〇〇で
 どうでしょう。
 ── ナナミ

 オーケー。
 じゃ、それまで魔導ドライヴゲームでもしよっか。
 ── アガヴェ


* * *


〜 アガヴェ家のシェルター パパの研究室 〜


 ハルモニア。
 私の研究内容は知っているよな?
 ── アガヴェのパパ

 は、はい…。
 カドモスさん。
 ── アガヴェのママ、ハルモニア。

 私が取り扱っているのは国家機密だ。
 妻であるきみには
 その漏洩を防止するための
 契約を条件として
 結婚を許諾したんだが…。
 どうして部外者を入れたのだ?
 ── アガヴェのパパ、カドモス

 す、すみません!
 魔導レーザーの照射で
 家を失ったと聞いたものですから
 つい…。
 ── ハルモニア

 ひとときの情に流されるなど
 国の存亡をかけた戦には
 あってはならない事態だぞ!
 わかっているのか!
 ── カドモス


パシィ!
と鈍い音が研究室内に響き渡った


 うぅ…!
 ── ハルモニア


アガヴェのママは
床に倒れ込んだ


 いいか、
 今この惑星ほし全体で
 戦争をしているんだ!
 そして相手は人間ではない!
 よりによって魔法使いだ!
 より強固な魔導兵器を作り出さねば
 人類は滅亡するのだぞ!
 居候している者たちが
 魔法使いだった場合どうする?
 きみらは思念波ノリトというもので
 連携を取れるそうじゃないか!
 もし彼女たちが魔法使いなら
 奴らにとってのスパイと同義だぞ!
 いいか。
 このまま人類が滅んだら、
 貴様の所為と言っても過言ではないんだぞ!
 もしそんなことになってみろ。
 貴様を魔女狩りに先駆けて
 永久に火炙りにかけてやるからな!
 ── カドモス


アガヴェのパパは
食卓では見せない
悪魔のような形相で
ママに迫った


 もう、耐えられない…。
 こんな生活…。
 私は…、どうして生きているの…?
 ── ハルモニア

 そんなの簡単じゃないか。
 お前はあの子どもたちを
 育てるために生きている。
 私の研究材料である、
 あの子どもたちをな。
 ── カドモス


* * *


〜 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜


 いや〜、いい湯だったね〜。
 え?
 ナナミっち、
 まだボムクラやってんの?
 もう二四時過ぎたよ?
 お風呂入ってないぢゃん!
 ── アガヴェ

 う〜ん、もうちょっと〜。
 ── ナナミ

 も〜、それ何回目のもうちょっと?
 流石に廃人になっちゃうよ?
 うっ、くさい。
 廃人の匂いがする。
 ── アガヴェ

 わかったわかった。
 は い り ま す〜!
 ── ナナミ

 あ〜、
 お風呂に魔導ドライヴゲーム
 持ってかないでよ〜!
 ── アガヴェ


一時前には
アガヴェ家の家族は寝静まり
リヴィングの電気も消えていた

ナナミはお風呂に入りながらゲームをして
一時になるのを待っていた

アガヴェはナナミのゲームをする姿を
お菓子を食べながら見守っていた


 ねぇ〜、ナナミっち〜。
 そろそろ上がって服着てよ〜。
 ── アガヴェ

 うん!
 ── ナナミ

 いや、返事だけよくったって…。
 教授、もう一時になります〜!
 ── アガヴェ

 え?
 うそ!
 今何時?
 ── ナナミ

 いや、だから一時になるって!
 ── アガヴェ

 あわわ、そりゃまずい!
 ちょっと待ってて、
 すぐ着替える!
 ── ナナミ


ナナミは脱衣所にて
タオルで身体を拭いて
髪も乾かさずに服を着た


 はい、できました。
 ── ナナミ

 いや、いいの?
 髪乾かさなくて。
 風邪ひいちゃうよ?
 ── アガヴェ

 うん、これで行く。
 もう時間だし!
 ── ナナミ

 まぁ〜、
 いいけどさぁ〜。
 ── アガヴェ


ナナミは頭にタオルを巻きつけ
ハーフパンツとTシャツを着て
換気口の蓋を開けた


39へつづく

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