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”「学力」の経済学”を読んで

読んだ理由

・博士課程のころにアメリカに留学して以来、閉鎖的で排他的な日本の学校に多くの疑問を抱くようになった。それを解決してくれるかもしれないと思い、この本を手に取った。
・自分の家系は先生が多いため、小さいころから教育には興味があった。教師であった親は、いつも経験論ばかりで、データを示してくれないので、何が正しいのかわからなかった。

概要

・日本では教育に科学的根拠が必要という考えが浸透していない
・アメリカでは、科学的根拠がなければ、教育に対して予算を獲得できない
・因果関係と相関関係は間違えてはいけない
・アウトプット(テストの点数など)へのご褒美より、インプット(勉強する、本を読むなど)に褒美を与えるほうが効果が大きい

興味

アメリカでは、2002年の法制定により、自治体や教育委員会が国に予算をつけてもらうには、実行する教育政策に対し、科学的根拠を示す必要が出てきた。

⇒日本では科学的根拠は必要なく、専門家でもない人間の「私の経験では~」が重要。

教育の収益率(1年間追加で教育を受けたことで、子供の将来の収入がどれくらい高くなるか)は、金融投資に比べ高い

子どもを促すには、アウトプット(点数などの結果)よりもインプット(勉強をするなどの過程)に褒美を与えるほうがよい

⇒アウトプットに褒美を与えると、関心や好奇心が失われる傾向にあるというわけではない。ただし、小学生くらいまではお金よりもトロフィーなどの褒美のほうが有効的。
 褒めるときは、「今日も勉強できたね」や「休まず頑張ったね」といった具体的に子どもが達成した内容を褒め、「頭がいいのね」といった元々の能力を褒めてはいけない。

「自尊心が高いから学力が高く」なるのではなく、「学力が高いから自尊心が高くなる。

⇒日本人の自尊心が低いことが問題になっているが、自尊心と社会的リスク(未成年の飲酒・喫煙など)の相関はない。「自尊心が高いから学力が高くなる」といった因果関係は全くなく、学力が高いという「原因」が自尊心が高いという「結果」ともたらしている。むしろ、「やればできる」のような自尊心を高めようとする介入は、自分を顧みる機会を奪い、実力を伴わないナルシストを育てるだけ。

テレビやゲーム「そのもの」は子どもたちに負の影響を与えない。

⇒テレビやゲームを制限しても、そのやめた時間を勉強に使われるわけではない。ただし、1日2時間を超えると、子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなる。
 子どもに勉強してほしいなら、親や親族が横について勉強をみてあげるのが効果的。

日本では実験による教育政策の効果測定はほとんど行われない。

⇒国が導入した少人数学級は、多くの研究で費用対効果が悪いことが示されているのに、日本ではその情報もよく知らずに導入している。
 現在世界で最も費用対効果の高い政策は「教育の収益率に対する情報提供」である。

日本の教育データは開示されていない。

⇒日本では第三者に評価・解析がされないため、都合の悪いデータは隠されてしまい。南アフリカ政府では、データを開示することで、世界中の優秀なエコノミストを雇わずして、解析してもらっている。

感想

日本の未来に希望が見えなくなったのは、教育のせいではないかと常日頃から思っていたが、この本はさらにその考えを強固にする内容だった。科学的根拠のない政策、隠ぺい体質の教育現場、そして新しい情報を入手し活用しようともしない教員。負のスパイラルに陥っているのは間違いない。
日本にも”ミネルバ大学”にような既存の教育に真っ向から勝負できる機関があれば、世の中が変わるのかもしれない。


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