Instagramで実現するファンマーケティング。ファンの価値を重視する運用とは?
これまで、Instagramアカウントを運用する企業の担当者に向けて幅広いテーマでnoteを公開してきましたが、今回は「Instagramで実現するファンマーケティング」をテーマに、その考え方や事例をご紹介します。
このテーマでお伝えする考え方とは、Instagramアカウントを起点にブランドや商品、サービスのファンを集めてファンの価値を活かしていくというもの。事例では、ユニ・チャーム株式会社「マミーポコパンツ」のInstagramアカウントについてご説明します。
Instagramアカウントを担当する方だけでなく、ファンのいるブランドの宣伝・広報・マーケティング担当者やクチコミされやすい商品・サービスを担当されている方にもおすすめです。ぜひご覧ください!
ファンマーケティングのメリットとは?
ファンマーケティングとは、企業やブランドのことが好きなファンを軸にしたマーケティングのこと。商品やサービスがコモディティ化し、市場が成熟した現代に必要とされる手法です。
ファンマーケティングを推進することにより、企業やブランドは商品・サービスの値引き、販促キャンペーンなどに頼るマーケティングから抜け出し、持続可能な競争優位を築くことにつながります。
ブランドのファンになってもらうことや商品やサービスに愛着を感じ続けてもらうこと自体は目新しくありませんが、いまも企業やブランドのマーケティングコミュニケーションの軸となる大切な考え方です。
さらに、こうしたファンがいると以下のような6つの価値があると言われています。
ファンのなかでも、特にそのブランドに愛着を感じたり友人や家族におすすめしたりするような方たちは、値引きされた競合商品より高くても購入することなどから、商品やサービスの購入量・消費量が多く継続的に利益をもたらしてくれます(経済価値)。
また、ファンは企業やブランドのことをよく理解し考えてくれているため、インタビュー調査などにも協力してくれたり(顧客理解価値)、ファンとディスカッションをすると新しいアイデアを出してくれたり(共創価値)します。
このようなファンをInstagramに集めることができれば、同様にさまざまな価値をもたらしてくれます。例えば……
Instagramアカウントをただ運用するのではなく、これらの価値を踏まえて運用することができれば、アカウント自体がより企業やブランドの資産となるのではないでしょうか。
マミーポコパンツのInstagramアカウント
いまや数多くの企業やブランドがInstagramアカウントを運用していますが、そのなかでもアカウントをブランドのファンが集う場所として運用する「マミーポコパンツ(MamyPoko)」についてご説明します。
マミーポコパンツのInstagramアカウントには、フォロワーだけでなくブランドのファンが集い、ブランドとファン、ファン同士がつながる場として、マーケティングコミュニケーションの大きな役割を担っています。
とはいえ、開設当初からファンが集う場として運用できていたのではなく、さまざまなステップを経ていまのアカウントになっているようです。
いまのアカウントになるまでどのような道のりを辿ってきたのか、次の見出しから詳しくみてみましょう。
STEP1:フォロワーを増やして土台をつくる
マミーポコパンツがInstagramアカウントを開設したのは、2019年の後半。
当時、Instagramで「#マミーポコパンツ」を検索してみると、そこに表示されるのは商品や商品を使う親子が写る画像ではなく、ブランドの意図とは異なる画像ばかり……。
Instagramアカウントの戦略を考える際は、以下の2点を調べる必要があります。
Instagramにマミーポコパンツのターゲットとなる子育て世代はいる一方で、ファンであってもマミーポコパンツに関する投稿をしている方はほとんどいませんでした。
そのような状況でアカウントを開設し、ブランドや商品に関する投稿をしてもなかなか受け入れられづらいことから、開設後はフォロワーを増やしながら土台をつくっていくことに専念。Instagramに馴染むような投稿(子どもだけでなく、ファミリーや兄弟、姉妹の写真など、ブランドらしさである「わくわく」「楽しい」が伝わるような投稿)をしていきました。
アカウント戦略のnoteでご紹介しているタイプでいうと、ターゲットのニーズに沿った発信をする「興味・関心コンテンツ型」が当てはまります。
商品が写った画像もいくつか投稿していましたが、投稿のエンゲージメント数(いいね! やコメントなど)を確認してみると、商品が写った投稿より子どもや兄弟、姉妹が写る投稿の方がエンゲージメントが多い結果に。
開設当初、少しずつ増えていくフォロワーを占めるのはブランドのイメージ(わくわく、楽しい)に共感いただいた方であり、ブランドや商品のファンとは言い難い状況でした。
STEP2:「好き」を積み重ねたコミュニケーションを重視
アカウントを開設した翌年の2020年から2021年は、新たにInstagramリールがリリースされ、アルゴリズムが変わったタイミングということもあり、マミーポコパンツのInstagramアカウントもターゲットが有益だと感じる(コメントや保存しやすくなる)ような投稿内容に少しずつ移行していきました。
また、ストーリーズの質問機能を使って、おむつや子育て、商品に関する質問をしたり、フィード投稿のコメントやDMに返信したりと、フォロワーだけでなく「マミーポコパンツ」のファンとのコミュニケーションにも比重を置くようになりました。
一方で、はじめから反応を得られていたというわけではなく、まずはストーリーズで質問をしたり回答をまとめて投稿をしたりして、ママ同士でつながれる・先輩ママに子育てについて教えてもらえるようなアカウントとして運用しました。ストーリーズの内容は以下の画像やURLをご覧ください。
有益な情報のなかに、ブランドに対する理解を深めるための投稿を少しずつ増やした結果、商品に関する投稿も反応が得られるようになりました。この頃からアカウントタイプは「興味・関心コンテンツ型」から「関連情報発信型」へ移行しています(タイプについて詳しくはこちら)。
商品に関する情報を発信しながらブランドのファンが集いやすくするとともに、開設初期からブランドに対するイメージに共感していた方に寄り添い続けることで、少しずつブランドの好意度(マミーポコパンツっていいな、好きだなという気持ち)を高めてファンを増やしていくことができたと思われます。
STEP3:ファンとのコミュニケーション強化
コミュニケーションを重視しながら運用し、投稿にコメントをしてくれたりDMを送ったりしてくれるようなブランドのファンが増えてきたタイミングで、さらに深いコミュニケーションをとるための施策を実施していきます。
ここで外部のコミュニティを活用する企業もあると思われますが、マミーポコパンツのInstagramアカウントでは、以下のようなストーリーズでコミュニティメンバーを募集しました。
応募してくださったユーザーはストーリーズの「親しい友だち」機能に登録し、コミュニティメンバーのみ閲覧できるストーリーズの配信やブランドの最新情報、キャンペーン情報を先行で配信しています。
このような特別感のある場を設けることで、マミーポコパンツに特に愛着を感じているファンとの距離を近づけることができます。目指すのは、ブランドとファン、ファン同士がコミュニケーションをとれる環境をInstagram内外につくることです。
STEP1と2は、比較的どの企業のInstagramアカウントでも実践できる内容だと思われますが、STEP3はある程度ファンと好意的な関係を築いてからでなければ成立しづらいでしょう。双方向のコミュニケーションが成立し、信頼関係が築くことができたタイミングで実施するのが望ましいです。
また、今後は前述したコミュニケーションリデザイン価値を見込んで、他のマーケティング施策にファンを巻き込んでいくことも考えられます。
【ポイントまとめ】ファンはブランドの資産となる
ここまで、マミーポコパンツのInstagramアカウントを開設してから現在に至るまでをご紹介しました。
マミーポコパンツのInstagramアカウントは、STEP1からSTEP3を実現するのに2年ほどかかっています。ファンはブランドの大切な資産ともいえる存在ですので、今後さらにマーケティングへの価値を期待できますし、その資産は他社がすぐに模倣できるものではないため、中長期的な競争優位の獲得にもつながるでしょう。
ご紹介したポイントは以下のとおりです。
企業やブランドのファンを軸にしたInstagramアカウント運用に興味のある方は、以下よりお問い合わせください。