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「ソーシャルメディア」と「マスメディア」で購入意向を高める、そのプロセスを紐解いてみた

家でテレビを見たり、スマートフォンでニュースサイトやTwitter、Instagramを眺めたり、検索したり、出社する電車で何気なく中吊り広告を見たり、街中で屋外広告を見たり……。

世の中には情報があふれていて、私たちは毎日それらを見聞きしています。この数十年で情報量は爆発的に増え、企業やブランドが情報を伝えたくても伝わらない時代です。

どのようにしたら企業からの情報が消費者に伝わり、商品やサービスについて知ってもらえるのでしょうか? さらには、興味を持ってもらい、購入意向を高めるにはどうすればいいのでしょうか? このnoteでは、これらの疑問について考えてみたいと思います。

「砂一時代」でも知ってもらうことはできる

書籍『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法』(アスキー新書)の著者であり、コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さん(通称、さとなおさん)は、情報にあふれる現代を「砂一時代」と表現しました。情報量が多すぎて、一つの情報がもはや砂浜の一粒の砂に等しいくらい細かく、多く、発見されにくくなっていることを例えています。

私たちは、日々たくさんの砂に囲まれながら(ときに埋もれながら)、自分に関係あること・関係ないことを取捨選択しながら過ごしています。そして、ほとんどのことは自分に関係ないこととして切り捨てています。ひとつひとつ真剣に処理してしまうと脳はパンクしてしまうので、ほぼ自動運転で情報の取捨選択をしています。

一方で、自動運転のなかでも、冒頭でお伝えしたような広告に触れる回数が多ければ(フリークエンシーが高ければ)「最近◯◯についてよく見るな」「よく聞くな」と感じることもあるでしょう。多くの広告予算を投下し、露出する枠や量を増やせば知ってもらうことはできるのです。認知をお金で買う、と言い換えることもできます。

冒頭でお伝えした一つ目の、どうすれば知ってもらうことができるのか? という疑問については、「予算をかけて露出を増やす」というのが答えになります。

認知はお金で買える、興味は……?

二つ目の、興味を持ってもらい購入意向を高めるにはどうすればいいか? という疑問はどうでしょうか。先ほど認知はお金で買うことができるとお伝えしましたが、興味や意向(買いたい、行きたいなどの気持ち)はお金で買うことができません。この記事を読んでいる方にも「知っているけれど、買ったことがない商品」はたくさんあると思います。

露出を増やすだけでは、見てみたい、手にとってみたい、触ってみたいと思ってもらうことは難しいとすると、知ってもらった先で自分にも関わる話題(商品・サービス)であると認識してもらい、買いたいと思ってもらうような状態をつくる(自分ごと化してもらう)必要があります。

自分ごと化させる、世の中ごとと仲間ごと

世の中や身の回りの人が関心を寄せていると、なんだか自分も気になってしまうことってありますよね。最近流行っていること、よく聞く話題。世の中や身の回りに漂うそんな “空気” が私たちの関心を引き寄せています。

この “空気” の正体を解いた本田哲也さんの書籍『最新 戦略PR 入門編』(角川アスキー総合研究所)でも、「空気はそもそも大勢の人に共有されているものだ、しかも大勢の人に共有されているということ自体が『安心感』や『信頼感』に自然につながっていく」と書かれています。さらに、空気には「消費者に『気づき』を与えて、『買う理由』を生み出す」役割があると説明されています。

そうした世の多くの人が知り、関心を持つような状態(世の中ごと)は、多くの場合、マスメディア(TV番組や大手のWebメディア)によってつくられます

また、身の回りに関する例を挙げると、同僚であるAさんとBさんが「まさかの社内結婚!」という出来事がチームや社内で一気に話題になることをイメージしてみてください。他にも、あるソーシャルゲームにハマっているときに、そのソーシャルゲームにおけるつながりの中で、ソーシャルゲームのアップデートや周年イベントが話題になることがあるでしょう。このような、つながりのある人たちの中で話題になり、関心を持つような状態(仲間ごと)は、特にソーシャルメディアでつくられることが多いのです。

マスメディア(TVやYahoo! など)で取り上げられているものを目にしたとき、友人や同僚がソーシャルメディアでツイートしている内容を目にしたとき、はたまた身の回りの人からおすすめされたときに自分も興味を持ちます(自分ごと化)。

世の中ごと ↔ 仲間ごとの関係

ご紹介した世の中ごとと仲間ごとについて、もう少し深掘りしてみましょう。この2つについて考えるにあたり、注意したいポイントがあります。それは、仲間ごとの話題が世の中ごとになるのは難しいということです。

もちろん話題の内容・対象によりますが、一般的に仲間ごととして自身がつながることができるネットワークの広さには数十人から数百人程度と言われていて、広がりにも限界があります。その話題が世の中ごととして、日本全域に広がっていくというのは考えにくいです。

一方で、仲間ごとがその範疇を超えて世の中ごとになることが(稀に)あります。それがソーシャルメディア。ソーシャルメディアのつながりの中で話題にしていた内容(仲間ごと)がバズった場合、さらにはそれがマスメディアで取り上げられた場合、世の中ごとになることもあります。

ここで稀な例を挙げると、実は先日、トライバル 代表の池田が自家製ナポリタンのレシピを個人アカウントからツイートしたところ、1.5万RT・8.5万いいねを獲得したのです(RTといいね数は2022年5月12日時点)。

驚くのはこれだけではなく、そのバズったツイートがヒカキンさんの目に留まり、登録者数 1000万を超えるYouTubeチャンネル(≒ マスメディア)に取り上げられ……さらに話題に。まさに仲間ごとが世の中ごとになった瞬間でした。

反対に、世の中ごとを仲間ごとにさせることは、仲間ごとを世の中ごと化させることほど難しくありません。マスメディアが情報を複数のネットワーク(仲間うちのネットワーク)に広く告げることで、多くのネットワークの中において仲間ごと化されていきます

重要なのは自分ごと化してもらうためのプロセス

ここまで、
・興味を持ってもらうには自分ごと化をしてもらう必要があること
・自分ごと化してもらうにはマスメディアによる世の中ごとと、ソーシャルメディアによる仲間ごとが有効であること
・世の中ごとはマスメディアによって仲間ごとにすることができること
をお伝えしました。

世の中や仲間が気になっていると、自ずと気になってしまう……そのような状態にすることができれば、企業やブランドの情報は伝わりやすくなります。

反対にいえば、企業やブランドが伝えたい情報を世の中ごとや仲間ごとにできれば、商品やサービスのターゲットにも興味を持ってもらうこと(自分ごと化してもらうこと)ができ、意向につながりやすいということ。重要なのは、企業やブランドがいかにして世の中ごとや仲間ごとに仕向けることができるか、ということです。

新商品発売時にイベントなどを実施してマスメディアに多数取り上げてもらい、世の中ごと化をさせたり。ソーシャルメディアでプロモーションを実施し、話題になるように仕掛けてユーザー間でクチコミを増やし、仲間ごと化をさせたりすることなどは一つの例として挙げられます。

こういった企業やブランドによる仕掛けと、メディアやSNSのユーザー、友人、自分などの行動や心情を絵にしてみると……そこに描かれるのは、施策ごとにさまざまなルートで仲間ごと化や自分ごと化がされている、複雑なプロセスでした。

ここ数年では、マスメディアの方々がソーシャルメディアで取り上げるネタを探していることが多く、その番組では「ネットで話題」と取り上げられています。ソーシャルメディアはマスメディアの情報の受け皿となるだけでなく、マスメディアで発信された情報がTwitterのトレンドになったり、さらにユーザー同士で話題になったり……マスメディアとソーシャルメディアが相互作用することで、さらに仲間ごと化や自分ごと化が進んでいるのです。

商品やサービスに興味を持ってもらい、買いたいと思ってもらう(自分ごと化してもらう)ためには、このプロセスを描きながらマスメディアとソーシャルメディアを組み合わせて活用し、世の中ごとや仲間ごとでの話題をつくることがポイントになるでしょう。

世の中ごとを狙う際は、マスメディアに取り上げられるという視点とソーシャルメディアで話題になるかという視点の両方が必要。ソーシャルメディアでの話題は、いかに会話しやすいか、ツイートしたくなるかというトーカブルさが重要です。

ソーシャルメディアアカウントを運用する担当者には、ソーシャルメディアでクチコミされやすい施策を実施するだけでなく、世の中ごと化までをも狙ったPRやプロモーションなどと連動して行うことが求められています。

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