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コーチングをマネージメントに取り入れて体験した変化

私はタイにある現地法人の責任者をやりながらも、2年ほど前までリーダーシップの何たるかを全く理解していませんでした。

今の仕事の経験が部門内で最も長いこともあり、幸か不幸か色んな場面で大抵のことの見通しを立てることができてしまうので、非常に指示命令的なリーダーシップスタイルを取ってしまっていました。「指示、命令、判断、教える、介入、詰問、諭す、論破」と言ったアプローチが中心のスタイルです。それではまずいという問題意識はあるのですが、なかなか自分を変えることができませんでした。リーダーシップやコーチング関係の本も何冊も読みました。頭では分かっても全くうまく実践できないのです。

今でも13年ほど前にインドネシアで働いていた時の上司に、私が何でも決めて仕事を進めてしまうので、部下が育たないと苦言を呈されたことをよく覚えています。確かに当時はリーダーが考えた通りに実行し、部下がそれをサポートするのが、プロジェクトを進める最も良い方法だと考えてました。自分がやっている姿を見せれば部下もそこから学んで成長してくれると本気で思っていました。そのためせっかく上司から気づきの機会をもらっても自分のやり方を大きく変えることはできませんでした。

タイの責任者になっても、基本的には同じスタイルを取っていました。最初の数年はともかく安定した会社の収益基盤の拡大が急務だったので、常に前線に出て陣頭指揮を取りながら活動を活発化させていきました。ところがそれが進めば進むほど、タイ人社員の出来ることが限られるので任せられず、日本人駐在員ばかりが忙しくなる現象が顕著になってきました。そうなると日本人のキャパシティがボトルネックとなり会社の成長のスピードが落ちてしまいます。加えて日本人駐在員側も、うちのタイ人社員は指示待ち型で主体性がないので使えないと不満を募らせてしまいました。

そんな日々を続けた挙句、ようやく今度こそ自分のやり方を変えようと一念発起して、コーチングのトレーニングを本格的に受けることにしました。65時間のセミナーを受けて、多くのトレーニング中のコーチ達と交換で相互セッションをこなしました。さすがにそれだけ詰め込むと、変われなかった私も徐々にコーチング的思考が身に付いてきました。そうなると「支援、共に考える、任せる、問いかけ、傾聴、信頼、共感」といった、今までとは真逆に近いアプローチを自然にできるようになってきました。

そんなことを経て、これまで約2年間に渡って、日本人中心の会社からタイ人中心の会社に変わるように様々な施作を続けてきました。どんなことをしてきたかについてはまた別の機会にご紹介したいと思いますが、基本的には全て「支援、共に考える、任せる、問いかけ、傾聴、信頼、共感」をベースに会社運営の基盤をすっかり作り替えるようなことをしました。というのも最初はコーチングのスキルがあれば対話を通じて社員たちを変えられのではないかと思っていたのですが、コーチングのトレーニングによって新しく身に付けた視点で考えれば考えるほど、問題なのは社員ではなく、会社の仕組みそのものに彼らが主体的になれないような欠陥があったのだと気づいてしまったからなのです。

その結果、まだまだ発展途上ですが、タイ人社員の責任感、主体性、積極性が目を見張るほど高くなりました。チームの一体感も上がり、部門間の連携、協力もよくなりました。会社の業績も飛躍的に伸びました。更に毎年高くて頭を悩ませていた離職率が、一連の活動を始めてから2年間に渡り離職者がゼロという嬉しい効果もありました。今から考えるとほとんどの期間がコロナによって得意先訪問や出張が制限されていたので、その時期をうまく会社の中の改善に費やすことができたことは幸運だったようにも思います。

最初は自分の指示、命令スタイルから脱却するために単にコーチング的対話スキルを身につけられればと始めたコーチングトレーニングでしたが、社員が主体的に働けるような会社の仕組み作りという長い旅に思いがけずも踏み出すことになりました。

つまりコーチングをマネージメントに取り入れて、最もすごい変化が生じたのは、実は自分自身にだったというわけです。

最後までお読み頂いてありがとうございます。

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