親の仕事

息子はよく、ケーキの絵を描く。

昨日も上から見たケーキと横から見たケーキ、2つのケーキを描いていた。同じケーキというわけではないらしいのだが、どちらもフルーツが沢山乗っていて綺麗だった。

「これはイチゴでーこれはブルーベリーでーあとキウイとみかんとバナナもあるよ」

他にも描きながら「ここはチョコ生クリーム〜」と言っていたりして少し驚いた。私が4歳の時に仮にケーキの絵を描いたとしても、乗るフルーツはイチゴだけだっただろうし、一部分だけチョコ生にしたりなんてしなかったと思う。それを誰かに話すにしても「普通の白いケーキ」「チョコのケーキ」とかであって、決して「チョコ生クリーム」とは言わなかったと思う。

この前チラシを見ていた時、写真を見て「あ、シュトーレンだ」とサラッと言っていた息子。私が4歳の頃にそんな単語は知らなかったし(そもそも周りで買えなかったかもしれない)、今の4歳でもそれを知っている子はどれだけいるのだろう?

保育園での様子を先生が話してくれる時にも、「今日はブロックでケーキを作っていました」「砂場でケーキを作っていました」と言われることがある。

まぁ、間違いなく、私の仕事の影響なのだろうな。

保育園に迎えに行った帰り道では、毎日「きょうはなんのケーキつくったの?」と聞かれる。その度に、「今日はフルーツいっぱいのケーキとーチョコのケーキとーモンブランとー」と答えていたりする。試作や駄目だったケーキを持って帰ることもある。おそらく息子にとってケーキは「特別なもの」ではなく「身近なもの」だ。一度しか行ったことのないマクドナルドやモスやケンタッキーや。そういうお店の方が「特別なもの」になっているかもしれない。

何でそうなるのかといえば「親の仕事がそうだから」。そもそも私はパティシエを目指していなかったし、息子も将来の夢で「ケーキ屋さん」なんて言ったことは一度も無い。それでも関わる機会が多ければ、自然と知識も増えて身近なものになっていく。当たり前だけど不思議だなぁと思う。

私の母は、私が小学生くらいまでは専業主婦(内職はたまにやってた)だったので、子どもの頃仕事について聞く機会はあまり無かった。

父は学校を卒業してから定年を迎えるまで、更に言うなら65歳を過ぎた今もずっと同じところで働いているのだが、未だにどんな仕事をしているのかということは知らない。もちろんぼんやりと「こんな業種」ということは知っているけれど、そちらの知識が全く無いし仕事の話を聞くこともないので、この歳になっても知らないままである(私と父は仲が悪いわけではなく、よく話す方だと思う)。

「親の仕事」だからその方面についての知識が自然と増えるかというとそういうわけでもなく。やはり「親子の関わりの中で仕事の話をするかどうか」で変わってくるのだろう。

たまたま今の私の仕事が「ケーキ」という子どもにわかりやすく、興味を引くものだから話しやすいだけで、息子は夫の仕事内容については全く知らない(しかしあちこち行く仕事というのはわかっているので、帰宅後に壁に貼ってある県の地図の所に行って「きょうはどこにいったの?」と聞いている)。

やはり業種によって、「子どもに話しやすい、話しにくい」はどうしても出てくるのだが。「その仕事に就いている」ということは、そうじゃない人と比べると「その仕事についてよく知っている」ということで。ある意味専門家なわけで。そういう知識や経験を子どもに気軽に伝えられるのは、親ならではなのかなぁと思った。子どもが小さく、世界が狭いうちは特に、そうなのだろう。

今度父に会ったら、仕事のことを聞いてみようかなぁ。今更すぎるけれど、知らない世界を知れそうな気がする。


ではまた明日。