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かんがえこと-37

3.26

雨の川沿い、「百年の散歩」を読んでいて、パリのはずれの河岸の街まで。向こうの橋はぼんやりうすピンク色にかすんで、土手に上がればここは日本。さくら色。
花散らしの道で、土砂降りの誕生日を思い出す。満開になったとたん、それを待っていた大雨。ひきずられるように気持ちはふさいでいって。あの日と同じ空、ちがうのは。

3.27

荷台に積んだがらくたの袋の中から、ちょうどよさそうなかたちのものを探してはもってくる作業。デザインは夢の中でも遂行される。
空中の食堂から、アクリル板とガラス張りのエレベーターの向こうは砂浜。刺激は苦手、けれどもぎりぎり自分を保つ温度のなかで人は創造的になれる。

3.30

マットブラックのカラーコーン、昔六本木で飽きるほど売ったナイロンのかばんはすぐにわかる、仕入れては売って右から左。京急の赤と桜の配色、上空はどんどん開けてビルは長くなって、思いつきだけではまたぎりぎりするとわかっているのに、でも思ったら今、連絡してしまおうか。一人の誕生日が一人だけれど楽しみで、たぶん5センチくらい浮いている。ここがあの、品川プリンス、けれどそれ以上でもそれ以下でもない、あの四角一つひとつにある物語。飛行機がちかい!イヤホンの耳の中まで届く轟音、流れ出す人波、向こうから駆けてくるこどもの服がさっき使ったサーモン色でよかった、答え合わせしているわたしの目を盗んで日は降りて、空は白金。



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