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「ヒト消費は価値を上げていく」イノベーションが急務な海外旅行業界〜現在地とこれから〜

日本人の海外旅行などを中心としたアウトバウンド業界にとって、今年はとても好調な始まりでした。政府が掲げていた目標の「日本人海外旅行者数を2020年までに2000万人」に対し、2019年段階で前年比5.9%増の2008万人を記録。業界としてひきつづきの盛り上がりをみせていくことを誰もが疑いませんでした。そんな中、突如訪れたコロナの影響とそのショックは計り知れません。

今後、業界はどのように変化していくのか、さまざまな意見が出ています。


今回は、アウトバウンド事業の渦中にいるロコタビを運営する弊社代表の椎谷が、コロナの「想定外」と言える影響と、今後の海外旅行業界について話します。

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ロコタビ」は、ロコ(海外在住日本人)が旅のお手伝いをしてくれる海外マッチングプラットホームです。2020年現在、ロコ登録者は5万人を超え。エリアは175カ国2450都市と世界の9割近い数に広がり、観光案内やビジネス通訳、食事のアテンド、現地サポートなど、旅先で「したいこと」を自由にオーダーできます。


リスク分散は十分だった、「旅行が止まる」は全くの想定外

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Q:コロナ前後の事業への影響

ロコタビの利用者数は2020年2月まで緩やかながら確実に伸びていました。それが新型コロナウイルスの影響を受け、2月後半に入り8割減と大きな打撃となりました。逆に残りの2割は、海外渡航者が皆無となった状況でも可能なオンラインサービス(翻訳や雑談などチャットやzoomなどで完結するサービス)になります。とはいえ、業界として厳しい状況に変わりはありません。

リスク分散は十分と考えていました。しかし、この状況は全くの想定外です。創業の2014年以降、海外渡航者数は緩やかな上昇傾向を辿り、それに合わせてロコタビも成長してきました。2020年現在、ロコタビは175カ国2450都市に広がっていることもあり、海外でのテロといった特定のエリアで起きる事態が起きても、そのエリアへの渡航者は減少しますが、総体的な数は減少しないため打撃を受けることは少ないんです。実際に、2015年11月にパリで起きたテロ事件の際も、大丈夫でした。むしろ利用者は増えたくらいです。

外的要因よって、ある程度影響があることは考慮していました。ただ、リーマンショックなどの経済危機が起きても旅行者は存在するんです。近代において、「旅行が止まる」という自体はほぼ起こりえなかった。極論ですが、エイリアンが地球にせめてきて世界戦争が起こらない限りは…。

9月以降には、旅行者数が順次回復すると見込んでいた。実際は、最悪の事態へ

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Q:コロナ出現当初、描いていたシナリオ

過去、SARSや新型インフルエンザなどによる影響をみると、一定の状況復帰の目処がたてば回復早かったので、今回も同様のシナリオを想定していた(年内回復)。

ベストシナリオは、7月頃までにワクチンor特効薬が見つかり、9月以降に旅行者数が順次回復。ワーストシナリオは、年内いっぱいウイルス感染が世界で広がり、経済への影響が大きく、2021年の海外旅行者数が半減すると行った具合です。

とは言いつつ、海外旅行者は相対的に富裕層が多く、2008年の金融危機後にも大きな影響はありませんでした。そのため、今回のコロナ経済危機も海外渡航者数への影響はそれほど高くないと踏んでいたんです。ただし、リーマンショック以上の経済への影響が出た場合は不透明でした。

まさに、その「不透明」な領域に踏み込んだのが今回の新型コロナです。


多様性に対応が遅れている、不足する海外旅行の受け皿

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Q:近年の業界の印象と危機感

近年、変化する旅行者のニーズに対応しきれていない業界としての課題は感じていました。インターネットの台頭以降、FIT(団体旅行やパッケージツアーを利用せず個人で海外旅行に行くこと。 Foreign Independent Tourの頭文字の略)などの個々人で旅行を楽しむ文化が主流となりつつあった中で、アウトバウンド事業者が提供してきたパッケージ商品はユーザーにとって優先順位が高いものではなくなりました。

個人で海外旅行を楽しむ文化が主流になっていく中で、旅行会社などはホテル・予約・体験などの商品を分けて小売することで対応してきた。一見適切とも思えるその対応も、個人旅行の多様化はそれ以上の速度で進んでいったため、到底追いつくことが難しい状況だったと思います。


今後の海外旅行業界、大転換が迫っている。「ヒト消費」は大きな鍵を握る。

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Q:旅行はどう変化していくか

個々人の多様なニーズにどう答えていくべきか、少なくとも現在の仕組みでは限界がくると感じています。一概にコロナの影響だけと断定はしないですが、大きな時代の変化として、人々のマインドが変化し、それは消費行動のみならず、生き方や価値観の変化に繋がっているのは間違いありません。

コロナ以降は特に、旅行を自分ごととして楽しみたいと想う人が増えていく。それに置き換わるようなイノベーションがこれから起きていくはずです。シェアリングなのか、コミュニティーなのか、それともまた新たな概念なのかわかりません。

ポジショントークに聞こえるかもしれないですが、ロコタビのようなヒト消費のサービスは、今後価値を上げていくのではないかと感じています。


最後に一言

今回の新型コロナウイルスの影響は、踏み切る変化を拒んできたアウトバウンド業界にとって、大きな機会です。変わらざるえない状況で、今後どのように進化を遂げていくのか問われている。ロコタビもその渦中でユーザーと向き合いながら、挑戦を続けて行きたいと思います。


-関連note-


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