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イングリッシュナショナルバレエ「エック /フォーサイス / クェッジベア」@ロンドン

11 November 2022 19:30, Sadler's Wells Theatre

ENBのコンテトリプルビル見てきました!なんと言っても、マッツ・エック。タマラ・ロホには感謝しても仕切れない、最高の置き土産をイギリスに残してくれました!

これ以降は独断と偏見に満ちた感想です。エックの新作ネタバレも含みますので、知りたくない方は見ないでね。

最初はフォーサイスの人気作、ブレイク・ワークス。イギリスの人気シンガーソングライター、ジェイムズ・ブレイク(私は疎いので全然知りませんでしたが…)の歌に合わせてフォーサイスのクラシカルからモダンの動きへ流れるような、そしてまたクラシカルに引き戻される独特の振り付けが展開。

テイク・ファイブ・ブルーズはイングリッシュナショナルバレエのダンサー(今は振り付けに専念してるのかも)のスティナ・クェッジベアの作品。もともと2020年のデジタル配信用に作られた15分のピースで、今回のトリプルビルで一幕の作品に延長したもの。ジャズに合わせて、クラシカルの動きから崩した動きへとこれもまたスルスルと流れるように難しいムーブメントをこなしていきます。

どちらの作品もコンテとはいえ随所にクラシカルの確固たる技術、フォームが要求され(当たり前だけど)、そこを崩していくのがクラシカルダンサーには難しいところだと思うけれど、ENBのダンサーたちはそれを不自然でもなくぎこちなくでもなく、スムースにカッコよく見せてくれて素晴らしかったです。

私は目が悪い上に最後列だったのでどれがどの人だったかというのはわからないのですが…。ブレイクワークスで一人とってもかっこいい動きをしている(私はアジア人だと思った)女性がいるのですが。みんなもちろん素晴らしい踊りを見せてくれてる中で、この方の「崩し方」がとってもカッコよかったのです。バレエはもちろんのこと、この人ならどんな踊りも完璧にこなすんじゃないかというくらいもう完璧な踊りを披露してくれて釘付けでした。私は金原りなさんだ!と見てる時は信じて疑わなかったんですが、キャスティングされてないのですよね…。誰だったんだあれは。(他にもアジア人女性はダンサーにいるけどキャスト表に載ってないんですよ…)大谷はるひさん?とも思ったのですが、はるひさんはこの前日に3作全てに出てたそうなので、さすがにはそれはないのか?と。(本当はハルヒさん目当てで行ったんですけどね!スペイン時代からスペインまで行って見たいくらい好きだった方なので楽しみにしてたのに〜。)どなたかわかる方いたら教えてください〜。(追記* 大谷はるひさんご本人からコメント頂き、やはり代理でこの日ブレイクワークス出演していらっしゃったとのことです!わざわざありがとうございました!)

この右から5人目の女性の方です

さて、今回の大本命、マッツ・エックの「春の祭典」。春の祭典、ストラヴィンスキー、ストーリー共々私はあんまり好みではないのですが、マッツ・エックの新作とあらば!見逃すわけにはいかない!本当にタマラ・ロホには大感謝です。イギリスではマッツ・エックはシルヴィ・ギエムが現役だった頃にちょっと持ってきてくれたくらいで、あとはそんなにお目にかかる機会がありません。今回しかも新作ということで、本当に嬉しい。話はそれますが、ロホは短い間にたくさんのレパートリーをENBに持ってきてくれて本当に素晴らしいなと思いました。

春の祭典はもともとストラヴィンスキーがバレエ・リュスのためにわざわざ作ったバレエ音楽で、とある部族が太陽神へ生贄の乙女を捧げるさまが描かれています。エック版はこれを、若い娘が両親によって強制的に結婚させられる様子として描いています。古いしきたり、環境によって若い女性が犠牲になる、という点では同じです。私にはちょっと日本を想起させました…。なんと言っても、婚礼衣装も着物っぽくて。床を引きずる長い裾、合わせのあるぶかぶかな衣装が白無垢を思い起こさせて。今時強制結婚なんて日本でもあまり聞きませんが、昨今まだまだ日本での女性の地位は低い。少子化で女性に求められていることは、こんなにも子育てする女性に冷たい世の中なのに子を産め、一人で育てろ、そして働け。古い価値観にがんじがらめになり、そこから足掻いて這い出したい「娘」の心情が、感情をストレートに出すエックの振り付けから溢れてました。これを考えたら、ファーストキャストの娘役エミリー鈴木さん(日本人とのミックスで日本育ち)と母役の高橋えりなさんでも見たかったなあ。今回踊ったキャストの4人も素晴らしかったですが。娘役はまだコールドのブリアナ・フォード。華奢な体からエック言語で叫んでいるかのようでした。母役のプレシャス・アダムズは長い手足がエックの振り付けにぴったりの伸びやかさ。

娘と花婿
娘の両親

今回フォーサイス、クェッジベアともどちらも複雑な動きにリフト、エックは全く違うスタイルと大変だったでしょうが、全てをこなし素晴らしいダンスを披露してくれたENBダンサーに拍手喝采。コンテ3作といえど、次に日本に行く機会があったらぜひ持っていってもらいたい作品たち。今回隣に座ってた人たちは、コメディ映画でも見てるの?ってくらい、面白い動きがあったらゲラゲラ笑ってましたけど、日本でもそのくらい気楽に見て欲しいものです。

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