見出し画像

「憂鬱な夜 in エチオピア」アフリカ大陸縦断の旅~エチオピア編③~

*前回の物語はこちらから!!!


 2018年8月24日、情報収集から候補に挙がっていた3つのバス会社に振られ、次の目的地への移動手段が完全に絶たれてしまった私たち。それでも、別のバス会社を探すため、粘り強く人に尋ねて回りました。そして、ようやく新たなバス会社を知っているという男性と出会い、彼に案内されて到着したバス会社は、女性が1人でやりくりしている6つのボロ会社。案の定、そこに目当てのバスはありませんでした。さらには、私たちを連れてきた男性から高額な案内料を請求される始末。なぜか、このぼったくりとの戦いを通りすがりの男性に仲裁してもらい、何とか解決。と同時にバス会社の女性に、「私の友人の自家用車で次の目的地付近まで、あなたたちを送ってもらうように頼んだ。」と告げられました。訳も分からず、待つこと1時間。女性の友人とやらに移動費を支払って、後部座席に乗りました。そこから約5時間の19時頃、特に何が起こるわけでもなく目的地であるアワサに到着。そして、明日に私たちが乗るべきバスと、泊まるホテルを教えてくれました。無事に車を降り、歩き始めた私たち。すると突然、後方から聞こえてくる騒音。私たちは数十人の黒人少年に追いかけられていたのでした。


 夕日に沈むアワサの街で、黒人の少年たちから必死に逃走する私たち。私たちをここまで送ってくれた男性が教えてくれたホテルの場所がどこにあるかも分からないまま、全力で走ること数分。少し先に謎の大きな建物を発見。良く見ると門番のような男性が、私たちに向かってジェスチャーで何かを伝えたい様子。

「(ここに逃げ込んで来い、ってことか、、、?)」

 もうすぐそこまで迫ってくる少年たち。私たちに冷静な判断を下す余裕などなく、門番に誘導されるがまま、建物の中まで走りきりました。後ろを振り返ると、重たそうな鉄の扉を急いで閉める門番の姿。そして、彼は私たちを追ってきていた少年たちに怒鳴りつけていました。

「もう大丈夫だ。お金欲しさに追いかけてきたんだと思う。怖い思いをさせてすまない。今日はここで休んで行きなさい。」

 そう言いながら笑顔でOKサインを出し、私たちを受付へと連れて行った門番。ホテルであったことに安心した私たちは、1日だけの宿泊を伝え、綺麗な部屋に案内されました。料金は400ブル(当時約1600円)。おそらく6階建の建物、Wi-Fiの繋がりも良い、危険とされる南京虫がいる様子もない。しかし、これだけ部屋がある立派な建物であるにも関わらず、人がいる気配が全くありませんでした。

「(何か変なずっと変な空気感やな。ここに泊まって大丈夫か?)」

 こんなことを思ったのも束の間。私たちにとてつもない疲労が襲ってきました。思い返せば今日1日、何もOKではありませんでした。何の脈絡もなく、凄まじいスピードで展開されるエチオピアの日常に、翻弄され続けた私たち。役に立ったと言える情報収集などは、ほぼ1つもなく、もはやなぜこの場所に無事たどり着けたのかは意味不明のまま。どの状況のどの人間が、善か悪か。何も分からなくなっていました。他者も、情報収集を武器として準備した自分でさえも、信用して生活を送ることはできない。この先訪れるであろう新たな状況を、打開するための指針や判断基準を、全て失った私たち。

「これからどうやって進んでいけばいいんやろう、、、。」

 そう思い、5階の自室の窓からアワサの街を見下ろしました。時刻は7時半。暗くなる街に響く人々の声。建物に入り安心感を得たことで、ようやく冷静な目で見ることができたエチオピアの景色。偶然の誘導で流れ着いただけの私たち。

「怖いな。。。」

 怒濤のエチオピアに飲み込まれ、そこからようやく解放された私たち。窓の外には当然、たくさんの黒人の方々。アラブ系のエジプトとは全く異なる容姿。スーダンに行けず、飛ばしてしまったことから、異文化グラデーションにも失敗。今日起きた全てのできごと、そして、それに対して手も足も出なかった私たち。黒人の方々の圧倒的空気感。部屋の中で2人、ようやく客観的に今を捉えた私たち。特にまだ何か大事に至った訳ではなかったものの、悪い未来が次々と脳裏によぎりました。


「もう外に出たくないな。。。」


*続きの物語はこちらから!!!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?