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「起死回生の下克上!!!ー詐欺師からの大脱出ー」アフリカ大陸縦断の旅~エジプト編⑪~

※前回の物語はこちらから!!!


 2018年8月16日、午後7時半頃。連れてこられた廃墟のような家。まるでそこは、詐欺師のアジト。そして、今晩はここに泊まれ、というムーディの言葉。私たちから根こそぎ奪うつもりの彼。どうにか逃げる言い訳を捻り出した私たちでしたが、完璧な答えを用意するムーディには通用しませんでした。「(もうどうにでもなってくれ。)」と、もはや絶望を超えてしまった私たち。この時、全てを諦めていたはずでした。携帯電話とオーナーの存在に気付くまでは。

 携帯電話で誰かに救いを求めることができるなら。そう考えた私たちに浮かび上がる、宿のオーナーの存在。ここに来るまでの不安や恐怖によって崩壊した精神状態が、彼の存在を忘れさせていました。

「(オーナーにさえ電話をかけることができれば、この状況を切り抜けることができるかもしれない。彼は事件に巻き込まれる日本人を救うために、宿を経営していると言っていた。オーナーは、エジプトの公用語であるアラビア語と日本語を話せる。それにオーナーは昔、観光客を騙すムーディ側の立場だったと話していた。ずいぶん前にそこから足を洗っているが、まだその内情に詳しいかもしれない。警察関係者との繋がりもあると言っていたような、、、。もっと早くこのことに気付いておけば、、、。)」


 私たちはオーナーと初めて会話した日のことを思い出し、これに賭けるしかないと腹を括りました。。


 最強の味方であるオーナー。これに全幅の信頼を寄せた私たちが、今するべきことはただ1つ。ムーディから携帯電話を借りることのみ。

 私たちは携帯を借りるため、必死にムーディの言葉を説得し始めました。今晩はここに泊まること、私たちの宿の場所を教えること、お金を支払うこと。私たちは、ムーディが欲しがっている私たちの金や情報を、差し出すことを約束しました。

 すると、あっさりムーディの携帯は私たちの手元に。


 これは後々分かったことですが、ムーディが私たちに携帯を貸したことには、明確な意図があったのです。


 エジプトは意外にも、複雑な情報社会。特に観光客を騙して金品を奪う詐欺界隈では、情報の量や広まる速度は凄まじいとのこと。ターゲットにされた観光客が宿を特定されると、そこから詐欺師たちに追われる日々となる可能性もあるようです。

 このことを考えたムーディ。彼は私たちが宿に電話をかけた後に記録として残る電話番号を頼りに、宿を突き止め、私たちを逃がさないようにする計画を立てていました。

 オーナーを後ろ盾に、詐欺師からの脱出をはかる私たち。

 情報社会を後ろ盾に、私たちを追い詰めようとする詐欺師。


 互いに後ろ盾の存在には気付かず、それぞれの思惑がひしめきあう中で、先手を打った私たち。そして、繋がった1本の電話。

「もしもしオーナー、私たちどうすればいいですか?」

「暴れろ!今すぐそこで!」

 想定外すぎるオーナーの一言に、何も返答できない私たち。

 沈黙する私たちをよそに、オーナーは言葉を続けました。

「いいか?エジプトの詐欺師が銃や刃物を持っていることは滅多にない。お前らが日本語で怒鳴って暴れたら、相手は絶対にビビる。隙を見てそこから逃げ出せ!後のできることはこっちでやっておく!いいな?話はそれからだ!」

ツーツーツー・・・・・


「(ええ!?オーナー、ちょっと待ってくれ。どういうこと?どうすればいい?)」

 一方的に言葉を投げつけられ、頭が混乱する私たち。

「(相手が武器をもっていない確証なんてない。そもそも暴れたら取り押さえられて、返り討ちにあうかもしれない。通じない日本語でビビることなんてあるのか?)」

 電話が電話が電話が切れた後、茫然した私たちを見て、勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべるムーディ。

「どうだ?話はついたのか?」


「(いや、考えている余裕なんてない。この一瞬の判断で全てが決まる。オーナーの言葉を信じるしかない。やるなら今しかない!)」

ダンッ・・ガラガラ・・・ガシャン・・

ドンッ・・・ドンッ・・・


蹴り飛ばした灰皿。壁にぶち当たり、砕けるそれを目で追うムーディ。その背後から彼を押し倒す私たち。咄嗟に手にしたバックパック。訳も分からずそれを振り回し、ムーディをぶん殴る私たち。

「邪魔や!どけ!!!」

「金なんか払うか、ボケ!」

「こんなとこ出て言ったらぁ!」

「全部取り返しに来たるわ、ええな?」

あまりに突然変貌した私たちに、手も足も出ず、その場に固まったままのムーディたち。

 バンッ・・・ドンッ・・・

 扉を勢いよく開け、落ちてあったレンガを玄関先に投げつける私たち。

「走れ!!!」


「逃げるぞ!!!」


※続けの物語はこちらから!!!


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