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横須賀旅行記(11/23①)

朝8時に最寄り駅を出た。
祝日の朝だからか、電車は空いていた。
あいにくその日は一日雨で、空気は冷え込んでいた。

家を出る前に

その日、私は久しぶりに旅をすることにした。家を出る前、期待と同時に一抹の不安もあった。昔のように楽しめるだろうか。

休職中ということもあり、今の私は外の世界への興味を失っている気がした。以前のような体力もなく、あふれるような好奇心もない。
このままでは漫然と歩き回って、何も得られないまま終わってしまうかもしれない。

そこで今回、旅行前から心に決めていたことがある。スマホをなるべく見ないで過ごすことだ。
休職中、一日スマホを眺めて過ごしてしまうことが多く、旅行先でも同じような過ごし方をしたくなかった。カメラや地図、電子チケットなど必要な時だけスマホを起動することにして、あとは画面ではなく、外の世界に没頭することにした。
スマホをカバンにしまって、いつも乗り換えで使う駅の風景や雨の音に心を傾ける。数駅離れた何の変哲もない場所なのに、こうして佇んでいると普段と違う雰囲気を感じられる。
旅の醍醐味というのは特別な場所に行くこと以上に、何気なく人々が過ごしている場所や時間に触れ、堪能できる余裕を持てることだと思う。

ZINEとコーヒー、そしてスコーン

しばらくの間、電車に揺られて横須賀へと向かった。車窓は曇っていて、到着までほとんど外の景色を見ることはできなかった。
道中、吉祥寺のZINEフェスティバルで購入したZINE「それでも変わらないもの」を読んだ。
海外で暮らす日本人からの手紙を集めて一冊の本にしたそうだ。
コロナ禍で、家族と離れて暮らす人。夢を叶えられなかった人。大好きだった国の、悪い部分ばかり目につくようになってしまった人。
様々な制約や挫折の中で、それでも手紙を書いた人たちはたくましく生きていた。

コロナ禍の前、私は海外事業部を目指して前職への新卒入社を決めた。入社後も英語や中国語を勉強し、人事にも希望をずっと伝え続けてきた。
しかし、コロナ禍で海外事業自体の雲行きがあやしくなった。
国内にいるうちはインバウンド向けの店舗で経験を積むはずだったが、研修後は郊外の店舗へ配属になってしまった。海外事業部自体も、今後どうなるか不透明だった。
それでも店舗で良い成績を残し、機会を待ち続けよう。そう思って頑張れたのは半年程度だった。
店長に「辛くてもそれはあなたが選んだ仕事だから」と言われ、プツンと糸が切れてしまったように私は足を止めてしまった。
いつまで待てば希望が通るかわからないまま、狭い人間関係の中でやりたくない仕事を続けるには、私は若すぎた。

コロナ禍では誰もが大なり小なり、何かを諦めて過ごしてきたと思う。それが私にとって海外事業部だった。
夢を諦めても夢が叶っても、それでエンドロールを迎えるわけではない。
「それでも変わらないもの」を読みながら、私が手紙を書くとしたら何を書くだろう、と一人考えた。

少しかじってから撮った

途中、横浜駅のスタバでスコーンとコーヒーを頼んだ。
開店して間もなかったが、店内は混んでいた。勉強している人が多かった。朝から横浜駅のスタバで勉強できるのは最高の贅沢だと思った。
週末に中国語検定を申し込んでいたことを思い出した。帰ったら、日曜日の資格試験に向けて私も勉強しよう。
きっとどこかで誰かと話すための、大事な言葉になるだろうから。

ヨコスカ・レイニーデイ


横須賀へ向かった。雨が強く、数分道を歩くのも大変だった。猿島も行きたかったのだが、この天気では厳しそうだ。
戦艦三笠を見学して、観光船で軍港巡りをした。
三笠は日露戦争で使われ、その後の軍縮で引退を余儀なくされた船だ。
面白かった展示は「VR日本海海戦」だった。

VR日本海海戦

三笠が出港し、バルチック艦隊を破るまでの一部始終をVRで観ることができる。目の前に落ちてきた砲弾が水しぶきを上げる光景や、「ヨーソロー!」の掛け声は中々エキサイティングだった。

YOKOSUKA軍港巡り

軍港で巡りはイージス艦や潜水艦を見た。天気が悪いため、船は大きく揺れた。
すれ違う船の乗組員が、何人か手を振ってくれた。旅を始めたばかりの頃は手を振られても気恥ずかしくて振り返すことができなかったのだが、今は違う。一時の恥より旅の思い出だ。
視界が悪くても、遠くからでもわかるようにと大きく手を振った。

横須賀グルメ艦隊にて、ネイビーバーガー

軍港巡りの後はネイビーバーガーを食べた。ケチャップとマスタードをお好みでかけてから食べるスタイルらしい。せっかくなので昼間からビールと一緒に、海を眺めながら味わった。
これで晴れていれば最高だったのだが。
しかしそれは、また来るときの目標にしよう。

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