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私にしか撮れない写真がある

 祖父母が住んでいた一軒家を、手放すことになった。
 祖父は10年ほど前に亡くなり、祖母は現在高齢者向けのマンションに入居しているので、ここ数年間ずっと空き家だった。
 誰も住んでいない家、特に一軒家を管理するのは難しい。建物や庭も荒れるし、空き巣や火災などの心配もあるということで、やむなく手放すことにしたそうだ。

 父が転勤族だったため、私には「生まれ育った土地」というものがない。出身地はと訊ねられると、いつも迷ってしまう。
 しかし、幼い頃から現在に至るまで慣れ親しんでいる土地がある。それが、祖父母の家がある名古屋だ。実際に自分が住んだ経験こそないものの、子どもの頃から夏休みや冬休みになると名古屋を訪れていた。そして長いときは2週間程度、祖父母の家で過ごしていた。
 だから私にとって祖父母の家というのは、唯一と言っていい「幼い頃からずっと知っている家」なのである。少なからず思い入れがあるので、今回手放すという話を聞いて、「写真に残しておきたい」と真っ先に思った。

 そして去年の秋頃、何年振りかで祖父母の家を訪れることができた。懐かしい。子どもの頃から勝手知ったる家だ。

玄関のすりガラス。夜中は少し怖かった。
庭先に差し込んだ光を撮りたかった。
靴箱の上には、祖母が作った小物がよく飾ってあった。
台所は夕暮れの印象が強く残っている。
本棚にはたくさんの文学全集があった。これはあまり読んだ覚えがない・・・・・・。
私は一軒家に住んだことがないので、2階があるのが羨ましかったなぁ。
くったりスヌーピー(?)がちょっと切ない。
タイルがかわいい洗面所。でも冬はめちゃくちゃ寒かった・・・・・・。
お風呂も寒くて、冬は苦行だったな・・・・・・湯船の中だけが温かかった記憶(笑)
今回1番お気に入りの写真。

 祖父母の家を訪れたのは、結果的にこれが最後となった。建物自体を取り壊したわけではないけれど、私が子どもの頃から慣れ親しんだ祖父母の家はもう記憶の中にしかない。
 だからこうして最後に写真を残すことができて、よかったなと思う。今、SNSなどには素敵な写真や上手な写真が溢れているけれど、これは私にしか撮れない写真だ。

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