見つけて(八月の詩)

そぞろにぶらつく枝切れが
路傍の石ころ転がして
伸ばした小さな手を止めた
近づかないでと声がした

気のせいだ

朝食の鐘の音を残し
門をくぐってひた走る
背を向けることは初めてで
だからその日を覚えてる

それだけだ

後悔したのはそうじゃなく
ミルクだけでも飲んでれば、
だって力が入らない
苦しませたくなかったのに

君は消えた、君は消えた
傾いだ日の瞳のなか
君は消えた、君は消えた
口を開けた緑のなか
怪物はすぐそこにいたの
めぐりめぐるあの
八月に

シャツの裾が湿りはじめ
気づけば目は探っていた
我ながらよく慣れたものだ
隠すのは不得手だったはず

誰の真似

悪いのはたぶん僕じゃない
かといって君でもないよ
届かないものは無力だね
土の下、眠った身体に

もういいかい

君は消えた、君は消えた
傾いだ日の瞳のなか
君は消えた、君は消えた
口を開けた緑のなか
怪物はまだここにいるよ
めぐりめぐるあの
八月に

君の番だよ
早く僕の首を絞めて
八月だ


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