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Fの話

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二次~五次創作の廃棄場。こんなものに意味とか価値とかはない
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#グランドオーダー555

新雪を濁す夢の名残

――フォウ、キュウ。フォーウフォウ。

 馴染み深い鳴き声と、鼻頭を舐められるしっとりした感覚。

――先輩?

 目を覚ますと、さかさまの少女が己を覗き込んでいた。

――。

「質問よろしいでしょうか、先輩」
「……なんだよ」
「ふー……お休みのようでしたが、通路で眠る理由が……クク、ちょっと。硬い床でないと眠れない性質なのですか?」

 天地逆さの少女は硬い表情を作ろうとしているものの、ぴく

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バーン・トゥ・シンダー! 4

「――なんのつもりだよ」

 管制室の扉を開く直前で、巧は不意に振り向いた。

「おやぁ、お久しぶりのご対面なのに随分な物言いですね、たっくん?」

――愉快そうに漏れ出る含み笑いに同調するように、光源と物理法則を無視して己の影が立ち上がる。それは次第に巧の像としての形すら歪め、気づけば彼のものではなくなった影は色素の薄い紫色の髪を伸ばした、無貌の少女の像を取っていた。

――。

――特異点Fを

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灰に還る。 3

「アンタ、もうそろそろ寿命みたいね」
「……だったらなんだよ」

 顔を合わせるなり不躾な女。眼鏡をかけた東洋風の女性が睨みをきかせ、巧も反射的にガンを飛ばす。

「というか……ここ俺の部屋だぞ、なんでお前がいるんだよ」
「お前とは何よ、無礼な奴ね。理由なんて簡単でしょうが……」

 少し俯く女性。巧は決して自身の現状を悲しんでのものではないだろうと予感しており、これから爆発する彼女の台詞もまた、

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ばぁん・とぅ・しんだぁす 2

 カルデアは静まり返っていた。どこかへ顔を出せば厄介で賑やかな面々が必ず居合わせた頃が、まるで夢のよう。

「どうすっかな」

 あてもなく管制室を出たものの、どこへと足を運んだものか。
――ふと耳に入る、騒がしい電子音。

(あれは確か……)

――。

「なんだ、お前かよ」
「あ……マスター」

 レクリエーションルーム。
 本来、マスター候補生やスタッフらが職務の合間に憩うための設備だったと

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――! 1

――噛み砕きたくなる程の憎悪、飲み込むのも躊躇われる不快感。鼻を刺す、憤怒に繋がる臭い。

――ヒトは嫌いだ。どこで、いつ、どのようにして。怨讐に至る原点どころか自分にまつわる記憶さえも、何も覚えていない。確かなことは一つ、自分が抱くこの殺意。故に何ら問題はない、これの他には何もいらない。

(――新宿? なんだ、真名が開示されないサーヴァント? ……アヴェンジャーの霊基反応!? たっくん、警戒を

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Burn to Cinders ジャンクション

 ――さあ、どこへ行こう。

1.世界を包む炎の消え失せたエントランスから、獣の遠吠えが聞こえた。

2.もはや誰もいるはずのない一室、光と音がこぼれている。

3.通りがかった自室の前で不意に立ち止まる。まさかとは思うが。

4.突然背後から漂う気配に振り返ると、己の影が不自然に伸びている……。

5.“瞳を開け“と告げる声を聞いた。

Burn to Cinders 微睡み

――玉座を残して神殿は崩壊した。もはや獣の兆しはない。

「コフィンからの覚醒に一時間ほどかかったし、筋肉疲労、魔術回路の消耗、細かな外傷は山ほどある……が、キミは無事このカルデアに帰還した」

 レフ・ライノールの手で屠られた二〇〇余名のスタッフ、今もなおコフィンでまどろむ四十七人の凍結されたマスターたち、熾烈な最終決戦にその身を投じたメンバーの中でただ一人生じた未帰還者、そして――。
 彼……

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