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太陽系の境目

どこまでが地球かは、『地球と宇宙の境目』の note で取り上げました。
では私たちのいる太陽系はどこまで広がっているのでしょうか?

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<以下の内容は、2020年10月執筆時点のものになります>

NASA(アメリカ航空宇宙局)が1977年に打ち上げた探査機ボイジャー1号と2号。
打ち上げ以来、40年以上にわたって今なお運用しています。
これらの探査機は太陽系の木星・土星・天王星・海王星を探査しました。
(ボイジャー1号が木星と土星、ボイジャー2号がそれに加え天王星と海王星を探査しました。)

そして2012年8月25日。ボイジャー1号は太陽系を脱出し、初めて星間空間に到達した探査機となりました。
(ボイジャー2号は遅れること6年、2018年11月5日に太陽系を脱出しました。)

2機の探査機は今なお運用され、観測装置の多くは現在も稼働しています。
2019年11月にはNASAやカリフォルニア工科大学は、ボイジャー2号が太陽圏と星間空間の境界付近の電気を帯びた荷電粒子「プラズマ」を観測したと発表しました。

現在、ボイジャー1号は、へびつかい座とヘルクレス座の間の方向。
ボイジャー2号は、くじゃく座とぼうえんきょう座の間の方向にいます。
詳しい位置などは、<https://voyager.jpl.nasa.gov/mission/status/>で確認できます。

さて、両探査機が脱出した『太陽系』ですが、どこまでが太陽系なのでしょうか?
太陽系には8つの惑星があり、その外側には黄道面に沿って【エッジワース・カイパーベルト】と呼ばれる小天体の密集した領域が広がっています。
火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)と似ていますが、大きな違いはメインベルトが岩石と金属を主体とする小天体であるのに対し、カイパーベルトはメタンやアンモニア、水などを主体とする小天体が占めています。

エッジワース・カイパーベルトが 50au ほどまで広がっています。
その外側には、太陽系をぐるりと取り囲むように【オールトの雲】と呼ばれる領域が広がっています。
その大きさは 約1万au、もしくは太陽の重力が他の恒星や銀河系の重力と同程度になる 約10万au(約1.58光年)の間とされます。
仮説の段階ですので、存在を直接証明する天体は観測されていませんが、彗星のうち軌道長半径の大きいものはここからやってきたと考えられており、彗星の巣とも呼ばれます。

実は太陽系が「ここまでである」という明確な定義ははっきりしていません。

太陽系は時速約80万kmで銀河系内を移動しています。
また、太陽からは太陽風と呼ばれるプラズマが放出されており、太陽系の端で星間物質と衝突しています。
結果、両者がぶつかる部分に境界面(ヘリオポーズ)ができ、全体として太陽系はちょうど落下する雨粒のような状態になります。

ヘリオポーズの内側を太陽圏「ヘリオスフィア」と呼びます。
ボイジャーの観測により、太陽からヘリオポーズまでの距離は、太陽の進行方向で 約100au(約150億km)です。

一般には太陽の直接的な影響範囲内であるヘリオポーズまでが太陽系とされます(厳密には太陽圏と呼ばれます)

今後、大型望遠鏡での観測により、オールトの雲に関する研究が進んだり、ボイジャーからの新たなデータ等により、太陽系の範囲がわかるかもしれませんが、今のところ、太陽系の大きさは、100〜120auと言ったところですしょうか。
(ボイジャーに搭載された原子力電池は、あと5年から10年ほどで観測に必要な電力を賄う事ができなくなるとみられています。)

新たな観測結果が得られれば、新たな謎が生まれるのが天文学の常ですが、ボイジャー2号に搭載されたプラズマ波計測装置の観測により、急激に密度が数十倍も変化するエリアがある事が分かったのです。
これにより、太陽系と星間空間の間にはプラズマの壁がある事がわかりました。
ところが、磁場については天文学者の予想に反し、プラズマの壁のあたりでもほとんど変化しませんでした。
プラズマの壁はあるのに、磁場は変化しない。新たな謎に天文学者は今日も頭を悩ませています。

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