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【ドイツ風物詩】期間限定のパイプおじさん

[初出:2005年11月]

初物を買った。といっても野菜のことではない。パン屋で今年初めてのヴェックマンを仕入れてきたのだ。ライン地方で聖マルティン祭が近くなると出回る菓子パン。なぜか大きなパイプを抱える姿が愉快。いわば地域・季節限定のパンだ。日本の蟹パンに似た食感で、なつかしい。考えてみればパンにも四季がある。これからはシナモンの利いたクリスマス菓子の季節。大晦日から新年にかけてはノイ・イェーヒェン、カーニバルの後には紙吹雪のような揚げ菓子が出る。

最近は日本のパン屋のようなセルフサービスのチェーン店も増えた。安売りで一定の顧客層を獲得したようだ。しかし、規格化された店の品揃えに地方色や季節感は乏しい。だから、押しの強いドイツ人に順番を抜かされないように焦りながら、私は今日も昔ながらのパン屋の店先に並ぶ。

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