【ドイツあれこれ】誘拐された嫁さんを探して
[初出:2006年9月]
夫の仕事の付き合いで結婚式に呼ばれた。場所はライン河沿いの片田舎。昼過ぎに教会で式を挙げると、まずはケーキとコーヒーが待ち受けている。それから、夕食を経て、祝宴は夜中まで続く。とにかく長丁場である。
落ち着いたところで新郎新婦に挨拶しようと思うが、見あたらない。写真でも撮っているのかと待つこと、数時間。どうも花嫁が誘拐されたらしい。中世からの風習だとかで、花婿は掠われた花嫁を追って、馴染みの飲み屋に探しに出かける。そして、行く先々で誘拐犯のタダ酒のお代を払って回る。
結局、本人たちと話しをする機会もなく、おいとましてきた。日本の披露宴だと、式の進行は分刻みで計算されている。それに比べると、随分、おおらかである。他の招待客は気に留める様子もなく、酒をあおっている。これぞ田舎の嫁取りという感じだ。