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小説「対抗運動」第3章3 ボイコット・ランチ第1弾 「情報公開おにぎり」

舞ちゃん「おいさん、昨日の続きやけどね、イラクがアメリカに攻撃されるんは、石油をユーロ建てにしたからやと聞いたんやけど。」

おいさん「それも言えるじゃろね。ユーロ経済圏のドイツ、フランスは攻撃に反対しとるしね。世界の基軸通貨を発行できるいうんは、発行する側になれたらこんな有利なことはないけんね。」

舞ちゃん「なんで?」

おいさん「舞ちゃん、100円のパンより、100円の通貨を持っとる方が有利じゃいうのは昨日話したよね。ところで、通貨もまた売り買いされるんじゃ。通貨が商品になるんじゃね。ややこしいけど、この時通貨になるんが、世界の基軸通貨なんじゃが、それが今はドルじゃね。皆、なるべくドルを蓄えとこうとするんは、そのためじゃろうね。だから基軸通貨の地位を保っている限り、どんどんドルを発行しても流通するんじゃ。アメリカは貿易でも国内経済でも大きな赤字を抱えとるけど、平気なんは、そこらへんにも理由がありそうじゃね。」

舞ちゃん「ふーん。」

おいさん「舞ちゃん、基軸通貨の問題は底が深いよ。何でドルがその地位を保っていられるんかというと、本当は根拠がないんじゃ。昔は、というてもつい30年位前まではそうじゃったんじゃが、ドルは金と交換できたんじゃ。しかし今は出来ん。ほじゃからドルには本当は流通する根拠はないんじゃ。ただ、超大国の信用があるだけじゃ。」

舞ちゃん「おいさん、経済いうんは奇妙な世界じゃね。頭ん中がぐるぐる回りだしそうや。もっと身近な話しょうや。」

おいさん「うん、そうじゃね。舞ちゃん、おいさんらはね、水田トラストや大豆トラスト、それから自然食品をあつこうとる店やカフェと協力して、4月5日はボイコット・ランチを差し入れすることにしたよ。」

舞ちゃん「ボイコット・ランチ?」

おいさん「デモの時、前から気になっとったんやけど、参加する人の多くがマクドナルドで腹ごしらえしたりスタバで休憩してコーヒー飲んだりしよったからね。あと、GMOに詳しい人も、体にあんまり良うないの分かっとって、コンビにのおにぎりや弁当買いよるけんね。これは、他に買うもんがないからや。それなら無農薬米のおにぎりや有機大豆で作った味噌や味噌汁、そして無農薬番茶の〈血液さらさら茶〉を用意したら、気になっとる人は喜ぶやろと思うてね。」

舞ちゃん「差し入れして、費用はどうするん?」

おいさん「まあ、カンパしてくれる人も多いじゃろから。公園に集合するけんね、きまりで販売することはできんのじゃ。何かええ方法があるんじゃろけど、今度は知恵出すヒマがなかった。それでも、こうやって始めたら、どんどん協力してくれる知恵のある者が出てくるじゃろう。」

舞ちゃん「ふーん。おいさん、各自コップは持ってきてくれるように皆にアピールした方がええよ。
紙コップなんか用意したら、エコの人にばかにされるよ。」

おいさん「なるほどな。マイコップか。ほかに何か知恵はないかね?」

舞ちゃん「公園で売れんのなら、どっかで集会でもして、その時に売ったら?」

おいさん「それもそうじゃね。」

舞ちゃん「いや、ちょっと待って・・・。おいさん、こういうのはどうじゃろか。情報公開が一番大事じゃろ? おにぎり配るときにね、お米や大豆の産地や銘柄、栽培方法、生産者、おにぎり作った人も含めてぜ~んぶ公開したチラシを一緒に配るんは? かかった費用も全部ガラス張りにして。デモの世話人へのカンパ代金も書いとけば? そしたら、もろうた人は皆、じっくり考えてくれると思うけど。」

おいさん「うーん。舞ちゃん、情報公開おにぎり、じゃね。それはええ!」

舞ちゃん「ほんと?」

おいさん「すごい。すぐ、阿部さんや平野さんと相談してみるよ。舞ちゃんも田舎でみんなに相談してみるとええよ。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年4月8日

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