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BNT162b2とmRNA1273 COVID-19ワクチン4回目の投与における免疫原性及び有効性;3ヶ月間の追跡調査

Immunogenicity and efficacy of fourth BNT162b2 and mRNA1273 COVID-19 vaccine doses; three months follow-up
Received: 8 July 2022
Accepted: 5 December 2022.
Published: 13 December 2022.
Nature Communications | (2022)13:7711

https://doi.org/10.1038/s41467-022-35480-2

概要

 現在進行中のCOVID-19パンデミックに対するブースター投与が多くの国で検討されている。我々は、3回目のBNT162b2投与の4カ月後に実施した、BNT162b2とmRNA1273を比較する4回目のワクチン投与試験に参加した参加者700名を対象とした、3カ月間の追跡調査を報告する。主要評価項目としてIgG、中和抗体、微量中和能、副次評価項目としてIgAとT細胞の活性化のレベル、そしてSARS-CoV-2感染と実質的な症候性疾患の臨床的評価を行う。免疫反応の衰えは追跡調査中に明らかとなり、mRNA1273群ではIgG抗体と中和抗体がそれぞれ11%(β=0.89, 95%CI, 0.88-0.9)および21%(β=0.79, 95%CI, 0.76-0.8)ほど、1週間ごとに乗数的に減衰しており、BNT162b2群ではそれぞれ1週間あたり14%(β=0.86, 95%CI, 0.86-0.87)および26%(β=0.74, 95%CI, 0.72-0.76)乗数的に減衰していることがわかった。オミクロン変異体の直接中和は祖先株に比べて低い。研究期間中の累積結果を基にすると、両ワクチンは感染に対してはほとんど効果を示さなかったが、実質的な症候性疾患に対しては高い効果を示した[mRNA1273とBNT162b2でそれぞれ89%(IRR 0.11,95% CI,0.02-0.37)および71%(IRR 0.29,95% CI,0.13-0.57)]。これらの結果は、追加接種の政策立案をさらに後押しするために有益なものである。臨床試験登録番号(clinicaltrials.gov)、NCT05231005およびNCT05230953。

図解

概要
接種回数と感染率
接種回数と症状性疾患率

図解スライド(9ページ)

English Presentation Slides

日本語翻訳ファイル

背景

 2019年12月に出現して以来、コロナウイルス症2019(COVID-19)は600万人以上の命を奪っている(1)。この期間に、感染率、発病率、死亡率を下げるために複数の対策がとられ、Pfizer-BioNTech(BNT162b2)と、Moderna(mRNA1273)の2社からメッセンジャーRNA(mRNA)COVID-19ワクチンが開発された(2,3)。mRNAワクチンを2回接種したところ、有意な体液性免疫応答が確認され(4)、また、感染率、感染力、発病率、入院率、死亡率の減少が報告されている(5-8)。しかし、この予防効果の衰えが、免疫原性の低下や感染・疾病に対するワクチン効果の低下として、数ヵ月後に明らかになった(9-11)。この減少に加え、懸念される新たな変異体(VOC)の出現により、3回目の接種が実施されることになった。当初、3回目の接種は、1回目と2回目の接種に比べて、感染率と重症化率が低下し、より強い免疫応答が得られると報告された(12-14)。しかし、その後まもなく、恐らく感染力の強いオミクロンVOCの出現(18-20)や免疫反応の低下により(21)、ワクチン効果が薄れたことが報告された(15-17)。そのため、4回目のワクチン接種が必要となるのかどうかが問題視された。
 2021年12月27日、我々は、過去にBNT162b2を3回接種した医療従事者(HCW)を対象に、mRNA1273を50μgまたはBNT162b2を30μgそれぞれの4回目ワクチン接種の安全性、免疫原性、有効性を評価する、非無作為化臨床試験を開始した。この研究は、イスラエルでオミクロンが優勢なVOCであった時期に実施された。この研究の短期間(1カ月まで)の結果では、4回目のワクチン投与は安全で、3回目の投与と同等の免疫反応を示したが、ワクチン効果(VE)は11〜30%しかなく(22)、前回の投与後の効果よりも低かったことが示された(23,24)。
 4回目の投与による免疫反応の持続性と長期的なワクチン効果についてはまだ研究されていない。本稿では、4回目の接種後102日間の追跡調査(全追跡調査期間は180日)の中間結果を報告し、免疫反応と臨床的評価について検討し、BNT162b2とmRNA1273ふたつのmRNA COVID-19ワクチンを比較した。

結果

 この非ブラインド対照介入試験は、イスラエル最大の三次病院であるSheba Medical Centre(SMC)で実施された。適格な参加者は、過去にBNT162b2ワクチンを3回接種し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の既往がなく、ベースラインとしたIgGレベル<700 BAUを記録したHCWである(適格基準の詳細は、「方法」の項目に記載)。参加者(n = 700)は、BNT162b2ワクチン接種群、mRNA1273ワクチン接種群、またはどちらか一方または両方の対照群として登録された。参加者には、免疫反応評価と臨床評価について追跡調査が行われた。Sheba HCW COVID Cohort(4,9,25,26)に登録された合計6,597人のHCWのうち、1,050人が参加する資格を得た。このうち、2021年12月27~28日に154人がBNT162b2群に登録された。その1週間後の2022年1月5日から6日にかけて、120名がmRNA1273群に登録された。残りの適格な776人の参加者から、合計426人の対照群を各群の参加者と2対1の割合で年齢を調整させた(121人が両方の接種群に対する対照者となった)。初期感染(8日目までに感染)を経験した参加者は除外された。さらに、最初の8日以内に4回目のワクチン接種を受けた(調査外接種)対照者は、そのワクチン接種日に除外された。当初、ワクチン群間の登録に1週間の差があったため、2022年1月2日にHCW集団が利用できるようになったワクチンを、mRNA1273群の対照者の方がより多く調査外接種した。完全な試験参加人数のフローチャートは図1を参照。
 研究集団のベースライン特性は表1に記載されている。臨床評価の分析に使用した集団のベースライン特性(追跡調査開始後の最初の7日間に感染した者は除く)は表S1に記載したとおりである。

免疫原性

 血清学的マーカーの粗値を表S2および図2に示す。各免疫マーカーはワクチン接種後2~3週間で最大値を示し,その後緩やかに低下するという類似の傾向を示した.ワクチン接種後の最初の1ヶ月間は,抗体で9-10倍の増加が見られた.
 両ワクチンの接種群で抗RBD免疫グロブリンG(IgG)抗体価が増加した。この反応の減衰が経時的に観察され、90日後には、IgG幾何平均抗体価(GMT)はmRNA1273群で1442結合抗体単位(BAU)(95%CI, 1194-1741)、BNT162b2群で854BAU(95%CI, 772-989)を示した。中和抗体においては、増加のピークではmRNA1273群は接種前の16.5倍、BNT162b2群は9倍まで増加した。90日後の中和抗体のGMTはmRNA1273群で1046(95%CI, 772-1417)、BNT162b2群で347(95%CI、238-507)と、4回目接種前と近い値を示した。4回目接種から14日間に抗RBD免疫グロブリンA(IgA)はmRNA1273群は接種前の4.5倍、BNT162b2群は3倍まで増加し、それぞれ4.63 sample to cut off ratio(s/co)(95%CI, 3.88-5.53)と3 s/co (95%CI, 2.57-3.53)のGMTまで達した。3ヶ月後、この値はそれぞれ1.82(95%CI, 1.48-2.25)と1.39(95%CI, 1.16-1.65)まで減少した。活性化T細胞の数はmRNA1273群では106抹消血単核細胞(PBMC)あたり6個(95%CI, 2-14)から52/106PBMC(95%CI, 20-134)まで上昇し、3ヶ月後には11/106PBMC(95%CI, 3-48)まで減少した。BNT162b2群ではそれよりも小さな変化が観察された。
 各ワクチンの調整モデルを用いて、我々はmRNA1273ワクチン群において、それぞれIgGは1週間当たり11%[幾何平均比(GMR)=0.89, 95%CI, 0.88-0.9]、中和抗体は21%(GMR=0.79, 95%CI, 0.76-0.82)、IgAは10%(GMR=0.9, 95%CI, 0.88-0.92)だけ乗数的に減少していることを推定した。またBNT162b2ワクチン群においては、それぞれ1週間当たりIgGは14%(GMR=0.86, 95%CI, 0.86-0.87)、中和抗体は26%(GMR=0.74, 95%CI, 0.72-0.76)、IgAは8%(GMR=0.92, 95%CI, 0.9-0.93)だけ乗数的に減少していることを推定した。活性化T細胞の数の減少量は両ワクチン群で有意な変化はなかった[それぞれ10%(GMR=0.9, 95%CI, 0.77-1.05)、10%(GMR=0.9, 95%CI, 0.74-1.09)](表S3a)。
 2つのmRNAワクチンを比較する調整モデルを用いて、2つのワクチン間のIgGおよび中和抗体価の低下に有意差があることを示し、BNT162b2群ではさらに乗算的にそれぞれ週当たり2%(GMR=0.98, 95% CI, 0.96-0.99)および7%(GMR=0.93, 95% CI, 0.89-0.98)低下することが示された。さらに、BNT162b2群ではIgAピークが29%(GMR=0.71, 95%CI, 0.57-0.89)低いことが示された(表S3b)。直接中和価は、野生株とデルタVOCでオミクロンVOCより高い値が観察された。また,いずれの直接中和価も接種後14日目から90日目にかけて低下することが確認された。また、オミクロンBA.2 VOCの直接中和価はオミクロンBA.1と同程度であり、おそらく高い値を示した(図3)。

ワクチン有効性

 (i)SARS-CoV-2検査が陽性で、症状の有無にかかわらず、積極的監視により判定した、COVID感染、および(ii)体調不良のためほとんど寝ていた日が2日以上あったことを判定基準とした、実質的な有症状疾患(表S4および図4)の2つの臨床結果について両群で累積発生率を推定した。追跡期間中、重篤な結果(例えば、重症、入院、死亡)を経験した参加者はいなかった。
 追跡調査の102日以内に、研究対象者の40~50%が感染し、介入群とその対照群との間でわずかな差しかなかった。一方、実質的な有症状性疾患の累積発生率は、それぞれmRNA1273対照群では20%(発生率=0.2, 95%CI, 0.11-0.27)であったのに対しmRNA1273ワクチン接種群では3%(発生率=0.03, 95%CI, 0-0.06)で、BNT162b2対照群群では23%(発生率=0.03, 95%CI, 0-0.06)、BNT162b2ワクチン接種群では9%(発生率=0.09, 95%CI, 0.03-0.13)と、どちらも対照群の方が高かった。
 年齢と性別を調整した多変量モデルでは、3回のワクチン接種までを受けた場合と比較してSARS-CoV-2感染に対するワクチン効果(VE)はmRNA1273は25%(IRR 0.75, 95% CI, 0.51-1.11)、BNT162b2については3%(IRR 0.97, 95%CI, 0.69-1.38)と推定され、また一方で実質的な有症状性疾患に対するVEは、mRNA1273群で89%(IRR 0.11, 95%CI, 0.02-0.37)、BNT162b2群で71%(IRR 0.29, 95%CI, 0.13-0.57)だった(表2、表S5、図 4e)。

考察

 我々はmRNA1273とBNT162b2ワクチンの4回目の接種の免疫反応とワクチンの有効性を102日間の追跡調査で比較する介入型研究を実施した。その結果、我々は幅広い免疫学的マーカー(IgG、IgA、中和抗体、直接中和価)において、3回目のワクチン接種後と同様の免疫反応の減退を認めた(22)。しかし、活性化T細胞数には、同様の変化は見られなかった。さらに、BNT162b2群では、免疫反応のピークが低く、減衰が速いことが分かった。このような結果にもかかわらず、オミクロンVOCによる実質的な有症状性疾患を予防するVEは、3回のワクチン接種までと比較して両群で高かった[mRNA1273とBNT162b2それぞれ89% (IRR 0.11, 95% CI, 0.02-0.37)と71%(IRR 0.29, 95% CI, 0.13-0.57)]。最後に、我々の研究コホートでは、両ワクチンとも3回接種と比較して、オミクロンVOCに対する感染予防の効果はほとんど認められなかった[mRNA1273およびBNT162b2のVEはそれぞれ25%(IRR 0.75, 95% CI, 0.51-1.11)と3%(IRR 0.97, 95% CI, 0.69-1.38)]。
 また、4回目のワクチン接種後、免疫反応が弱まったことを報告する。3ヵ月後、両ワクチンともIgG、IgA、中和抗体の有意な減衰が認められ、BNT162b2群ではIgGと中和抗体がさらに減衰していた。3ヵ月後、試験した免疫学的マーカーからは、4回目のワクチン接種後に得られた上昇の多くを失い、3回目のワクチン接種から4ヵ月後に測定したベースラインの値にほぼ戻るものもあることが示された。免疫反応の減衰は、2回目と3回目のワクチン接種後にも報告されている(9,21,27,28)。我々は以前も、3回目のBNT162b2投与後にIgG抗体と中和抗体が同様に減衰することを示した(21)。したがって、今回発表されたデータは、4回目のワクチン接種により一時的に抗体レベルが回復するが、抗体の動態には変化がないという我々の以前の結果(22)をさらに支持するものである。このことは、免疫学的に、高い抗体価を維持するためには、定期的なブースター投与が必要であることを示唆している。
 興味深いことに、mRNA1273の4回目の投与後に活性化T細胞がより大きく増加したが、BNT162b2の4回目の投与後には増加しなかった。しかしこの差は維持されず、T細胞活性は4回目の投与から2カ月後と3カ月後に2つのワクチン間で同程度となった。今後の研究では、活性化T細胞とSARS-CoV-2感染または症候性COVID-19からの防御との相関を調べることによって、細胞反応の役割を直接的に調査する必要がある。
 粘膜免疫に関与していることから、我々はIgAレベルも調査した。その結果、IgA、IgG、中和抗体の動態は類似しており、4回目の接種後に急速に上昇し、その後ゆっくりと下降する事が分かった。最近の研究では、血清IgAレベルがSARS-CoV-2感染に対する防御に関係することが示唆されており(29)、IgAがmRNAワクチンによる防御効果に寄与している可能性がある。
 BNT162b2ワクチンに比べて、mRNA1273ワクチンの2回接種で高い体液性免疫応答の獲得が報告されている(30)。最近、Kaplonekらはより詳細な解析を行い、BNT162b2 ワクチンと比較してmRNA1273のさらなる免疫学的有益性、中でもmRNA1273による IgA誘発の大きさを示した(31)が、それは我々はは観察しなかった。私たちの研究でmRNA1273の利益が少なかった理由として、2つのワクチンの用量が異なること(BNT162b2とmRNA1273それぞれ30μg対50μg)、製剤が異なること(32)、あるいは、以前に示唆されているように、同ワクチンのブースティングと比較して異なったワクチンのブースティングが体液性および細胞性応答の誘導に有効である可能性がある(33,34)。ここでは、BNT162b2を3回投与した後に4回目の投与としてmRNA1273の1回投与を行った場合、BNT162b2を4回連続投与した場合と比較して、異なる免疫マーカーのピークレベルがやや高く、減衰率が低いことが示された。
 我々の研究では、4回目のワクチン投与が(3回のワクチン投与までを受けた場合と比較して)感染防御に有効であることは示されなかった。実際、研究対象者のほぼ半数は、3回または4回のワクチン投与を受けたにもかかわらず、SARS-CoV-2に感染していた。しかし、我々は、実質的な有症状性疾患(少なくとも2日間以上、体調不良でベッドで過ごした場合を有症状性疾患と定義)に対する高いVEを示した。4回目のBNT162b2接種後の入院率と死亡率の有意な減少は、以前にも報告されている(35)。ここでは、3ヶ月間の追跡調査で、重症ではないが実質的に症状のある疾患においても4回目の接種の高い有効性が実証された。この結果は、健康なワクチン接種者では重症化することは比較的まれであることを示し(36-38)、特にオミクロンとその亜型の高い感染率に照らせば、この有症状性疾患に対する高い防御力は開放経済を維持するために重要である。
 感染した参加者のSARS-CoV-2系統を特定することはできなかったが、オミクロンBA.1は追跡期間中にイスラエルで優勢だった株で、すべてではないにしても、ほとんどの感染はこのVOCであったと思われる。追跡調査期間中の感染に対するVEは、直接中和法で観察されたオミクロンVOCの力価が他の変異体と比較して低いことからも考えられるように、その低い免疫回避が低いVEに重要な役割を果たしている可能性が示唆される。これらのデータから、今後、ブースターワクチンによる感染防御を強化するためには、対オミクロン用ワクチンかまたは新規の粘膜ワクチンが必要であることが示唆された。
 本研究にはいくつかの限界がある。第一に、投与の振り分けは無作為化されておらず、交絡の可能性がある。マッチングと多変量回帰を用いて年齢と性別を調整することでこの点を考慮しようとしたが、調整されていない他の変数がまだ推定値にバイアスをかけている可能性がある。第二に、追跡調査の強度は研究期間中に変化し、最初の1カ月は毎週COVID-19検査を行ったが、時間が経つにつれてより大きな間隔で行うようになった。これは誤判定バイアスを引き起こす可能性がある。我々はこのバイアスを軽減するために、参加者にテキストメッセージや電子メールで毎週リマインダーを送り、検査を受けるように促した。第三に、我々の研究は比較的小規模であり、それに応じてワクチンの有効性の評価に関する信頼区間も広くなっている。第四に、本研究ではIgG値が700未満の参加者のみを対象としており、結果を一般化に影響を与える可能性がある。最後に、研究期間中に感染した人は、重症化するリスクが高い場合、抗ウイルス剤(パックスロビドなど)による治療を受ける資格があった。このことはVEの結果にバイアスを与える可能性があるが、我々のサンプルのHCWは比較的若く健康なプロフィールのため、そのような治療を受ける患者は少なかった。
 結論として、今回のデータから、mRNA COVID-19ワクチン4回接種後の3カ月間に免疫応答が衰えるという証拠が得られ、その差はmRNA1273ワクチンに軍配が上がった.両ワクチンとも、追跡期間中のCOVID-19感染に対してはほとんど効果がなかったが、実質的な有症状性疾患の予防には非常に有効であることが判明し、個人レベルおよび医療政策レベルで重要な意味を持つ可能性があることが示唆された。

方法

研究設定と設計

 この180日間の追跡調査を伴うオープンラベル対照介入型研究は、イスラエル最大の三次病院であるSheba Medical Centre(SMC)で実施された。対象者は、Sheba HCW COVID-19コホート研究(4,9,25,26)に登録済みのHCWで、18歳以上でCOVID-19感染歴がなく、以前にワクチン接種に反応し(すなわちパンデミックの間、少なくとも1回の血清検査でIgG>100BAU)、少なくとも4カ月前にBNT162b2ワクチン3回目の接種を受けていた者である。感染リスクの高い人を登録するため、試験開始前の90日間(各群とその対照群について、それぞれ接種日の0〜90日前)にIgG力価が700BAU未満であることが証明された参加者の中から、試験参加者が選ばれた。
 本試験は、BNT162b2およびmRNA1273の2つのワクチン群と、各ワクチン群に対応する対照群の計4群で構成された。2つのワクチン群への登録は時間依存的で、2021年12月27日から28日の間に登録した人はBNT162b2群に、2022年1月5日から6日の間に登録した人はmRNA1273群に参加した。年齢をマッチさせた対照群(年齢差±5歳)は、いずれのワクチン群にも登録しなかった残りの適格HCWから2:1の割合で選択した。両群のマッチドコントロールとなる対照群参加者は1名であった。追跡調査は、各ワクチン群および対応するコントロール群のワクチン接種時に開始した。これは、90±14日間の追跡調査の中間解析である。参加者は、SARS-CoV-2検査陽性、または追跡調査終了(BNT162b2群とその対照群は2022年4月8日、mRNA1273群とその対照群は2022年4月17日)の合計102日間まで追跡された。対照群では、2022年1月2日にHCW集団が利用可能となった4回目の接種を個人的に受けた場合、追加で(接種した日に)追跡調査を終了した。本試験は、イスラエルでSARS-CoV-2感染が急増した時期に実施され、オミクロンBA.1 VOCが優勢であった。
 試験計画書および統計解析計画書の全文は、補足情報に記載されている。

試験実施

 登録時、インフォームド・コンセントの後、ワクチン群の患者から病歴、ワクチン歴、免疫原性測定のための血液サンプル、SARS-CoV-2定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)のための鼻咽頭スワブが採取された。その後、2021年12月27~28日に登録された人はBNT162b2の30μg、2022年1月5~6日に登録された人はmRNA1273の50μgのいずれか指定されたワクチン用量が投与された。
 計画された追跡検査は、ワクチン投与後7日、14日、21日、60日、90日に実施された。各回診では、症状のスクリーニング、SARS-CoV-2 qRT-PCR用鼻咽頭スワブ、免疫原性測定のための血液サンプル採取が行われた。さらに、参加者は予定された診察の間に追加の血清学的検査を行うことが許可された。研究期間中、参加者はSARS-CoV-2感染者と接触した場合、または症状が出た場合、qRT-PCRまたは抗原迅速診断法(Ag-RDT)による検査を、少なくとも週に1回行うよう奨励された。対照群の参加者も同様に、少なくとも週に1回SARS-CoV-2検査を行うよう奨励された。コンプライアンスを向上させるため、すべての参加者に個人的な電話でのリマインダーが行われた。SARS-CoV-2感染状況(qRT-PCR、AgRDT検査、またはIgGの非特異的増加)と症状の最終評価は、102日後に電話、電子質問票、それに全国COVID-19検査データベースとのリンクによって行われた。

変数

 対象となった評価項目は、BNT162b2の3回投与計画の後、4回目のワクチン投与として受けたmRNA SARS-CoV-2ワクチンの種類で、その内容はBNT162b2、 mRNA1273、または4回目のワクチン投与なし、であった。主要評価項目は、IgG、中和抗体、微量中和、また副次評価項目は、IgA、活性化T細胞で、また、SARS-CoV-2感染と実質的な有症状性疾患を臨床的評価項目とした。実質的な有症状性疾患は、参加者が体調不良のために2日間以上ほとんどベッドにいた場合を有症状性疾患の発生と定義した。
 各結果に使用したウイルス株情報、取り扱い、中和アッセイ、測定間隔などの実験方法の詳細は、Supplement Methodsに記載されている。直接中和アッセイは、無作為に選ばれた25人のサンプルに対して行われた。SARS-CoV-2感染は、SARS-CoV-2 qRT-PCRテスト陽性、Ag-RDTテスト陽性、またはワクチン接種後のピーク値からすでに低下した後のIgGの非特異的増加のいずれかを感染の発生と定義した。SMCおよびその他の医療機関(地域検査も含む)で実施されたすべてのSARS-CoV-2検査は、国全体の中央報告システムに報告され、参加者は自宅での迅速抗原検査の結果について積極的に問い合わせた(電子アンケートまたは電話)。IgGの非特異的な増加は、以前のIgG力価700未満または700以上から500BAU以上または1000BAU以上のIgG増加が観察された場合、それぞれ陽性と定義された。同様に、対照群では、初期の力価が低いため、IgGが200BAU以上増加した場合を陽性とした。すべての症例は、電子問診票または電話により重症度を評価した。
 変数の詳細な定義については、表S6に記載した。参加者の性別は、自己報告式の質問票を用い、女性か男性かの二者択一で決定した。

統計解析

 サンプルサイズは、2つの接種群の間でIgGのGMTに2倍の差があることを同定できるように、αを0.05、検出力を0.8として選択した。この条件下で、本研究に必要なサンプルサイズは、各接種群で65名とされた。
 調査母集団は、異なる変数に使用される適切な総和統計を使用して記述された。

免疫原性

 各結果について、ワクチンの種類(BNT162b2またはmRNA1273)およびワクチン接種後の時間を関数として値をプロットした。各対象における幾何平均の推定値と95%信頼区間をプロットに重ね合わせた。
 異なる結果の対数(SARS-CoV-2 IgGとIgAの10進対数、中和抗体、T細胞活性化の2進対数)、ワクチンの種類、時間との関連は、年齢、性別、BMI、免疫抑制、合併症の数を調整した多変量線形回帰を用いてモデル化した。参加者ごとにランダムインターセプトが含まれていた。モデルの目的上、結果の値は、ワクチン接種後の最初の30日間(ピークレベル)は一定で、それ以降は(時間の関数として)線形に変化すると考えた。まず、ピークレベル(切片)と減衰(経過時間の係数)を推定するために、各ワクチンを別々にモデル化した。次に、両ワクチンを一緒にモデル化し、両者の減衰率を対比させた(ワクチンの種類と経過時間の相互作用の係数)。それぞれのモデルにおいて、幾何平均比として指数関数的に計算された係数(GMR:Geometric Mean Ratio)を報告する。共変量データが欠損しているHCWはまれであったため、分析から除外した。結果の欠損データは、missing at randomの仮定のもと、ランダム効果を含めることによって処理した。

ワクチン有効性

 最初の7日間の追跡調査中にSARS-CoV-2と診断された者は、その時点では4回目の投与の効果がまだないと仮定し、ワクチンの有効性の分析から除外された。さらに、研究環境外で4回目のワクチン投与を受けた対照群の参加者は、ワクチン接種を受けたその時点で調査を打ち切った。Kaplan-Meier推定法を用いて累積発生率曲線を作成し、102日目の感染症および有症状性疾患の粗リスクを推定した。年齢と性で調整した多変量ポアソン回帰を用いて、ワクチン接種者と非接種者の感染症および有症状性疾患の発生率比(IRR)を推定した。4回目のワクチン接種を3回目のワクチン接種と比較した場合のVEは1-IRRとした。この解析は、BNT162b2ワクチンとmRNA1273ワクチンについて別々に実施した。まれにしかない実質な有症状性疾患に関するアウトカム・データが欠落している観測は削除した。
 データ収集にはExcel 2016を使用した。解析は、Rソフトウェア、バージョン4.0.4を用いて行った。一部の図は、Graphpad Prism Software version 9.0を使用して描画した。

倫理

 現在進行中の臨床試験は、Interna-tional Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use、Good Clinical Practiceガイドライン、および適用される政府規制に従って実施されている。国および施設審査委員会(シェバ医療センター、IRB委員会)は、プロトコルと同意書(IRB-8980-21およびIRB903521)を承認した。すべての参加者は、登録前に書面によるインフォームドコンセントを行った。本試験は独立した研究であり、いかなる企業からもスポンサーや資金提供を受けていない。すべての試験用ワクチンは、政府の調達プロセスを通じて入手された。参加者は、参加に対して報酬を受けなかった。
 臨床試験登録番号(clinicaltrials.gov)、NCT05231005およびNCT05230953。2021年12月に国・機関の審査委員会で承認されたため、直ちに試験を開始し、clinicaltrials.govにプロトコルを提出したが、確認の依頼により、最終掲載が2022年2月に延期された。

報告書の概要

 研究デザインの詳細については、本記事からリンクしている「Nature Portfolio Reporting Summary」を参照。

データの有無

 本研究で生成された、および/または解析された非同定データセットは、研究目的に限り、妥当な要求があれば対応する著者から入手可能である。リクエストは研究用途を理解するために2-3営業日以内に回答し、データは3-4週間以内に提供される予定である。ソースデータはソースデータファイルとして本論文で提供される。ソースデータは本論文で提供される。

コードの有無

 解析コードはZenodoで公開しています。(https://zenodo.org/record/7190913#.Y0b1wuzMK3J)。

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