高卒就職 「辞めたい」は会社改善のヒント
高卒就職問題研究のtransactorlabです。田舎の小さな高校で進路指導に携わりながら高卒就職問題の解消を目指して発信を行っております。
先日、うちの県でも教職員人事異動が発表され、離任式が行われました。 この時期には、転出や退任する先生に会いに卒業生たちが学校を訪れます。今日も5,6人来ておりました。本稿はその中の一人、化学工場に就職した卒業生男子との会話からです。
「一年働いてみてどうだい?」
「仕事はきついけど、まあ、なんとかやれています。」
「夜勤は?」
「ボクの部署は夜勤はないんすよ。ありのところに配属されたヤツらはみんな辞めたがってます。」
「キミはどうなん?辞めたいとか思ってない?」
「ないわけじゃないすけど、まだ辞めるまではいかないです。でも・・・」
「でも?」
「ボクの班のリーダーの先輩がすっげえいい人なんですけど、今度別の部署に異動になってしまって、あの人がいなくなると、ボク、続けられる自信が正直ないんです。」
「そっかあ・・・不安なのな。でも、彼の異動は彼がキミら新人をちゃんと育ててくれたで、彼は彼でまた新しいところで活躍させたいってのが会社の考えなんじゃないのかな。彼は何歳?」
「たしか23歳だと思います。」
「ほう、23歳で。すごいな。ということは、キミもそのうち彼みたいになることを期待されているわけだ。」
「そうなんすかね?」
「いや、そうに決まってるじゃん。ところで、どんな仕事してんの?」
「えーっと、薬品を90度に熱くしてスクラップの鉄板なんかを入れて高圧電流を流すんです。」
「はあ、結構危なくない?」
「めっちゃ危険っす。」
「工場の中は暑い?」
「エアコンはあるんですけど、高温のタンクだらけなんで体感温度は常に30度以上っすね。」
「きっついな。」
「きっついす。」
「辞めたい理由って、どんなんな?」
「えっと、先輩たちもみんな言ってるんですけど、基本給が低いのと土日に休みが当たる日がなかなか回ってこなくて友達と合わないことっすね。それと夏はあっついし、冬は寒いし。工場の敷地がめっちゃ広いんですけど、駐車場から仕事場まで結構遠いんすよ。吹雪の日はヤバいっすよ。」
「そうだな。」
「(クルマを)上の人は近くに停めて、下っ端は遠いところに置くじゃないすか。」
「まあな。そういう気持ちって、みんな同じなん?」
「だいたい同じっす。実際、それが嫌で辞める人も結構います。」
「もったいなくない?」
「そうっすね。今は結構すぐ別の会社があるらしいっす。」
「まあ、今はそうだな。でもな・・・」
このあと、このような話をしました。
キミらが辞めたいと気持ちには、会社を良くする改善のヒントがたくさん詰まっている。実は宝の山みたいなものだ。
だから、「これ嫌だ」→「辞めたい」→「辞める」っていうふうに一気にジャンプするんじゃなくて
「これ嫌だ」→「ここをこうすれば嫌じゃなくなる」→「会社が良くなる」→「辞めたくなくなる」→「自分も会社もハッピーになる」
というような前向きな考え方をすると、きっともっといい仕事ができる。そういう考え方ができる人になれば、キミはもっと必要とされる社員になれるはずだ。
「辞めたい」っていう気持ちが出たら、そっちに引っ張られないように、改善のヒントに持って行くといいぞ。
こうやってオレにしゃべれるぐらいに言葉にできているんだから、もうちょっと頑張ればきっと会社の上の人に話せるようになれるぞ。
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高卒就職者の3年以内離職率4割、業種によっては6割、7割というところもある。その理由や背景は多様で、一概にこうだと言い切れないものです。しかしながら、直接の当事者は彼らと雇用者なので双方の関係性による部分が大きいことは間違いない。
雇用者の方々にご理解いただきたいのは、彼らはまだ二十歳になるかならないかの年齢で、言葉の力がまだまだ未成熟であるということだ。
自分の感情や思考を他者に理解してもらえるように言葉で表現するという動作はどの年代、誰にとっても難しいことだ。ネガティブな内容についてはとくにそう。
感受性だけは豊かだが、語彙や論理的表現力が追いついていないというのが若い世代の特徴だ。感情や思考の複雑化に表現力が遅れを取ることは幾つになっても同じかもしれないが、若いうちの離れ具合はとくに激しいもの。
失礼を承知で申し上げるが、若い社員に辞められたくなかったら
まず十分な給料と休日を確保すること
次に
彼らのネガティブな感情を会社の改善のヒントと捉え、それを掬いあげ活かす仕組みを作ること
この2点をお考えいただきたい。
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