見出し画像

高卒就職問題は国の重要課題 高卒賃金を上げることの重要性について

 高卒就職問題研究のtransactorlabです。問題改善のための調査研究と提言を行っております。

私の主張は以下のとおり。

---------------------------------------------------------------------------
 高卒就職問題には様々あるが諸々の問題の根源は厚生労働省労働局所管の「高卒就職情報WEB提供サービス」の情報提供のあり方であり、次の二点の改善が必要。その改善が実現すれば、多くの問題が一気に改善にされる。

改善点1 
 情報提供の方式を現在の紙の形式を廃し、統計処理可能なデジタルデータベースの形にすること。

改善2 
 情報へのアクセス権を現在の教職員限定を改め、一般公開とすること。賃金・休日数などの待遇条件の相場が分かりやすい情報を求人事業者がいつでも入手できる状態を実現すること。
------------------------------------------------------------------------------

 問題の根元は、給与や労働時間などの待遇の相場が分かる情報が流れていない点にあります。その改善はそれほど難しいことではなく、所管官庁である厚生労働省労働局が上の2点について本気で取り組んでくださればよいだけのことです。

 求められる「相場がわかる情報」とはこういうものです。時折発表される初任給の平均値だけではざっくりしすぎていて、教員も生徒も全体の実情を把握することは困難です。まして求人事業者の方々にはほぼ不可能です。情報の流れの外に置かれているからです。

東京2021全求人

2021年7月 東京都全求人  地域別最低賃金 ¥1,013
データ総数 4,485 件
月給平均 ¥193,880 円  最高 ¥350,000  最低 ¥28,364
年間休日数平均 111 日 最高 317 最低 53
最賃レベル件数 320 件 ( 7.13% )

岩手2021全求人

2021年7月 岩手県 全求人 地域別最低賃金 ¥793
データ総数 1,996 件
月給平均 ¥160,095 円  最高 ¥300,000  最低 ¥97,600
年間休日数平均 105 日  最高 191   最低 52
最賃レベル件数 107 件 ( 5.36% )

 上のふたつのグラフは今年7月に私が行った全国公開高卒求人調査の東京都と岩手県の結果です。公開されている全ての求人票の年間休日数と月給でプロットしたもので、縦軸が年間休日数、横軸が月給です。

 グラフの下に統計数値を付記しましたが、統計結果の数値というものはグラフがないといかに頼りないかがお分かりいただけると思います。平均値だけでは全体像はつかめません。

 今年(2021年)9月末の求人倍率は、東京都は5.93倍 岩手県では2.95倍となっています。それほど高卒人材の需要が高まっているのですが、給与の統計を見ると相変わらず最低賃金の2割増し程度(最低賃金×175時間×1.2)の求人票が大量に出されており、需要の高まりに応じた給与の上昇が起きていないのが現状です。生徒数が減っている上に進学率が上がり、高卒就職希望者数は年々減っています。高卒就職希望の生徒の稀少性が年々高まっているのですが、残念なことに賃金に反映されておらず、高卒就職市場が不健全であると言わざるをえません。一刻も早く相場がわかる情報を市場に流すべきです。

 それがなぜ大事かというと、高卒初任給が全ての労働者の賃金体系のベースであり、とくに若い世代の収入に強い影響を及ぼすものだからです。

画像3

 上は日本の人口ピラミッドですが、このように若年層の人口は減少していきます。年金、医療保険、国土維持や防衛、学校教育・・・その他多くの国民生活の基盤維持には経済規模と税収の維持が必要です。人口が減っていくのですから、一人あたりが使えるお金を増やさなければ維持は不可能です。だって、私(1970年生まれ)の同学年は200万人以上いましたが、今の高校生はひと学年100万人を切りそうなんですよ。

 とくに重要なのは生産年齢人口の中の若い方の世代の収入を上げることだと私は思います。なぜならば、これから子どもを産み育ててくれる可能性のある年齢層だからです。

 少子高齢化・人口減少および地域経済の縮小の進行が著しい地方においては、若年層の収入を上げることの重要性はとくに高いはずです。「若い人の給料をあげましょう」といったスローガンを事業者に投げかけてもそう簡単にはいくはずもありません。やはり競争原理を働かせるべきだと思います。

 まず、高卒就職市場の相場がわかる情報を作り、そしてそれに誰もがアクセスできる状況を作ること。これは国の責任として、厚生労働省にはしっかり取り組んでいただきたいと思います。


高卒求人待遇相場情報をホームページで提供しています。都道府県ごと、業種ごとの給与や年間休日数などの相場が分かるグラフとデータをダウンロードできます。求人事業者や学校関係の方、どうぞご利用ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?