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「DIG」経営者が考える”働く場”を深掘り 002-株式会社UMITO Partners 村上 春二さん


■What’s DIG?

スタートアップを中心に数々の企業のオフィス作りをお手伝いしているTRAIL HEADS。
オフィス空間とひとくちに言っても、単なる働く場にとどまらず、その企業が目指す姿、理想のチームや働き方、そして大切にする価値観がしっかりと込められています。
そんな「オフィス作りを通して見えてくる企業の価値観や美意識、哲学から未来像までを、経営者インタビューを通して掘り下げていこうという企画「DIG」。
インタビューは、TRAIL HEADSの栗井がつとめます。普段はクライアント企業のオフィス作りのデザインディレクション・プロジェクトマネジメントとして携わっています。
これからの働き方を考えたい方、オフィスを創ろうと考えている方の参考になればと思っています!

第2回にあたる今回は、「おいしい漁業が、続く社会を。」をコンセプトに、海と漁業のサステナブルを推進する株式会社UMITO Partnersの代表取締役 村上 春二さんにお話を伺いました。

▼プロフィール
株式会社UMITO Partners 代表取締役 村上春二さん
福岡県出身。サンフランシスコ州立大学にて自然地理学とビジネスを専攻し帰国後、パタゴニア日本支社で勤務及びフリーランスライターとして活動。その後、米国所在の国際環境NGO Wild Salmon Centerの日本コーディネーターとして勤務。その後、国際環境NGOオーシャン・アウトカムズ(O2)の設立メンバーとして日本支部長に就任し、2018年に株式会社シーフードレガシーと合併、取締役副社長/COOとしてサステナブルな漁業・地域・事業を創出する部署を統括。2021年に株式会社UMITO Partnersを設立し、漁業者・企業・シェフ・自治体などと連携し、サステナブルな漁業や地域のために伴走する。
・Asia Pacific FIP Community of Practice Council Member
・Fisheryprogress.org Advisory Committee Member
・Global Seafood Alliance FIP Task Force Member
・養殖業成長産業化推進協議会委員

UMITO Partners様より情報提供
株式会社UMITO Partners 代表取締役 村上春二さん

■シェアオフィスから自社オフィスを構えた理由

栗井)
本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。
スタートアップの会社さんがまず自分たちのオフィスを構える前にシェアオフィスを借りることが昨今増えておりますが、御社も移転前はシェアオフィスでしたよね?

村上)
そうですね。以前は渋谷キャストにあるco-labのシェアオフィスにいました。クリエイターや公益性に意識の高い人たちが集まっている場所でした。

栗井)
なるほど。ただ間借りしているのではなく、他に働いている人たちがいるから新しい繋がりも生まれそうですね。実際にそういうこともあるのでしょうか。

村上)
ありましたね。そういう繋がりができていくのはシェアオフィスに入って良かった点だと思います。ただオフィスとしての機能を考えると、メインが作業する場所になっていた気がします。その状態からもう少し発展していきたいと思い始めたのが今回、自分たちの拠点を持とうと考えた始まりでした。

栗井)
もう少し”発展していきたい”という気持ちを深掘りしたいです。
具体的に今回オフィスを構えた理由を伺えますでしょうか?

村上)
理由は大きく3つあります。

まずは幅広い方々に課題や解決策など触れる機会がつくれて各々に何ができるか気づきが得られる場所をつくりたい。
2つ目に、心地よい拠点を持つことでクリエイティビティやチームビルディングに繋げたい。
そして、クライアントにUMITO Partnersがやっている事業内容/メッセージをしっかり訴求したい。
という3点です。

結論、僕たちのPurposeである”ウミとヒトのポジティブな関係性を創り出す”という想いが伝わる場所にしたいという気持ちですね。

栗井)
自分たちの世界観や考え方を伝える場所にしたいという気持ちがあったんですね。そういう発信をしていく場という意味でいくと、エリアの選定も難しそうですね。以前の渋谷から今の神保町エリアに決めた理由はなんだったのでしょうか。

村上)
まず最初になぜ渋谷に場所を構えたのかお話をすると、一緒に仕事をしていく漁師さんらへの刺激が一つの目的でした。
若い世代が多く、先進性やサスティナビリティに多感な街に拠点を持つことで、オフィスにきた時に触発されて「UMITO Partnersとやると感度の高い人たちと繋がれる。」そんなソフトな刺激を受け取ってもらいサスティナビリティに一歩でも近づいてほしいと考えていました。
そんな刺激的な街から出て、今の場所にオフィスを構えたのは物件との相性でしたね。

神田エリアの路面にオフィスを構える

栗井)
何かイメージされていた雰囲気があったんですね。

村上)
はい。イメージとして持っていたのは「ちょっと兄ちゃんコーヒーあげるから話聞いてよ」くらいができる路面店のような空間でした。それに合わせてオフィスとしての機能も持ち、自分たちの表現ができる場所を探していたところ、今の物件に出会いました。
質問に答えると、きてくれた人たちへ刺激を与えるというところから、自分たちの世界観を感じてもらう場所に目的が切り替わったので、エリアは最重要課題ではなかったですね。

■物件の特徴を活かした空間構成

栗井)
確かにそうですね。
ちなみに、今回の物件の決め手の一つでもある2階のシェアキッチンは今後どういう運用を検討されているのでしょうか。

村上)
そうですね。
シェアキッチンは、ここを利用して飲食イベントの開催を考えています。そういったウミとヒトの関係性が近づくためのコンテンツ作りをこの場所を通してしていくつもりです。

栗井)
移転後のお披露目会では、実際に事業に関係した海産物を調理していただきましたね。
すごく美味しかったです!

移転後のイベントでは事業に関係した海産物をさらに美味しく調理

村上)
ありがとうございます。
食のコンテンツはもちろんですが、アートの展示イベントも検討してます。1階にギャラリーの機能を持たせて、僕たちと温度感の近い方々のアートやメッセージを発信していける場になると良いなと思っております。

栗井)
周りの人たちも巻き込んでいくんですね。すごく魅力的な空間になりそうです。今はUMITO Partnersさんの展示ですが、迫力がすごいですよね。プロジェクト進行中に「牡蠣を吊るしたい」というお話をもらった時は想像がつかなくてびっくりした記憶があります。

1階のスペースには事業がわかる展示がされている
随時新しい展示をしていく

村上)
なかなか牡蠣を吊るしたいというクライアントさんはいないですよね。
もっと昆布とかも吊るして、海の中にいるという表現をしようと思っています。

栗井)
まだまだアップデートされるんですね。今後の展示も目が離せません!

■村上さんが考える組織作りについて

栗井)
ここまで世界観の発信についてお話を伺ってきましたが、実際に働かれている方々はどういう働き方をされているのでしょうか。

村上)
働き方としては、週2出社にしていますが実は今模索中なんです。
少し質問の答えから離れてしまうかもしれないのですが、
理想は”みんなが自分の会社という目線を持っていてほしい”と考えています。
つまり、会社を主語にみんなが話し合える関係性を構築するということですね。
何か課題や事業に関して検討するときに、利益ではなく会社が表現したいVisionやPurposeを実現するためには「これをした方がいいです」という意見を全員が持って働いていくことが理想です。

栗井)
すごく勉強になります。一人一人が経営者目線を持つことが、会社のVisionやPurposeを体現していくことに繋がるということですね。

村上)
はい。最終的には発起人である僕がいなくても成り立つ状態であることが良いと考えています。僕がいなくても同じことが表現できる。UMITO Partnersという人格が育って、そこに常に火をくべる人がいる。そんなみんなが自走できるような有機的な発展が理想ですね。

栗井)
とても濃いお話を聞けてありがたいです。
お話を伺っていると、UMITO Partnersという組織として働く上で個人をすごく大事にされている印象を受けたのですが、何か会社として取り組んでいることはあるのでしょうか。

村上)
おっしゃる通りで、個の集合体が組織なのでこのパフォーマンスを最大限にしていくことが大事だと考えています。そのために福利厚生を充実させることに努めています。

<福利厚生の一例>
コーチング:
ウミとヒトと向き合うためにはまず自分の内面の健やかさを育もうということで、外部コーチを一人ずつマッチングして、希望者全員にコーチングの半額補助をおこなっています。

ウミとヒト休暇:
休暇を利用して自然の中で過ごすことで、ウミとヒトのポジティブな関係性を作り出す・体現するのに必要な感覚を養おうという取り組みで、旅費交通費の補助もあります。

ウミのギフト:
実際に社員にも食べて、周りにおいしさや魅力を伝えられるように、ウミとヒトに優しい漁業・養殖業で生産された海産物を年に1回社員に送っています。

UMITO Partners様より情報提供

自分を知るプロセスは、自分の最大限のパフォーマンスはどういう状態なのかを把握する上で重要になるので、コーチングは特にお勧めしていますね。実際に僕もコーチングは受けています。

栗井)
僕も最近パフォーマンスを上げるにはどうしたら良いのか、どんな時調子が良いかを記録するようにしています。ここまでのお話を聞いてコーチングを受けてみたいと思いました。
話はそれますが、ウミとヒト休暇って響きも、休暇の使われ方もいいですね。

村上)
やはり僕たちは自然と向き合う時間を持つことは重要ですね。
人によっては業務で時間を作れない方もいるので枠を作りました。利用の仕方はみんなに任せていますが、海へ遊びに行ったりする人もいれば、研究視察へ行くために使う人もいて個性が出ておもしろいと感じています。

栗井)
与えられた時間の使い方もUMITO Partnersさんらしさが出ていて良いですね。
かなりカルチャーフィットした方が多く働いている印象ですが、採用面はどういうこと意識されているのでしょうか。

村上)
完全に人柄採用な部分はありますが、社会への違和感として持っている質感が私たちの世界観と近い人が多いかもしれないです。具体的にいうと人は自然が人を求める以上に自然を必要としていることを体感していて、資本主義のどうしようもない仕組みをポジティブに利用して経済発展で壊された自然をビジネスで回復し持続させたい、みたいなことに共感してくれる人たちって感じです。
自分たちのカルチャーを保つためには採用面は意識しているポイントの一つですね。

■チームとしての働き方とこれから目指す先

栗井)
UMITO Partnersさんと一緒に仕事している中でもどこかみなさん考え方や人柄に近いものを持っている印象を受けました。
そんな同じ志を持ったメンバーが集まれる場を今回作ることができましたが、シェアオフィスの頃から変化したことはありますか。

村上)
やはり場があることで会話する機会が増えましたね。特にクリエイティブな話をすることが増えて、アイディアが生まれやすくなった気がします。
先ほど週2出社と話をしましたが、それ以上に来ている人もいてシェアオフィスの時には見られなかったことも起き始めていますね。

コミュニケーションを取りやすくするために円卓を採用
状況に合わせて可変しやすい家具をチョイス

栗井)
そこに行けば他のメンバーに会えるという期待感があるのかもしれないですね。
自分の話になってしまいますが、僕が割と自分のオフィスが好きで長居しているかもしれません。
そこに行けば、誰かと仕事とは関係のない話をしたり、置いてある本を読んだりできるので、仕事とは別のオフィスへ行く目的があるのかもしれません。
UMITOさんのオフィスにもそういう空気が漂っていそうですね。

最後に、今後どんなチーム/組織にしていきたいか伺えますでしょうか。

村上)

僕がイメージしている組織作りの世界観は「生態系」です。
アリを例に説明すると、アリ1匹にも役割がある。しかもその役割に無駄がない。
そしてそのアリは他の生き物に頼って頼られている。
そういう個同士の繋がりやそれぞれの強みをみんなが理解をする。つまり、個が立っている生態系の成り立ちが一つの組織の集合体であると考えてます。
そんな生態系のようなチームをこれからも目指していきたいと思います。

栗井)
なるほど。生態系のようなチームを目指しているからこそ、メンバーに対して個々のパフォーマンスを上げるための取り組みを会社として実施しているのですね。
まずは自分がどういう強みを持っていて、どんな役割を果たせるのか。
生態系の一部に自分はどこに当たるのかを知ること。
僕もTRAIL HEADSという生態系の中でどこにいるのか考えてみたくなりました。

ここまでオフィス移転の話から組織作りの話へ派生していきました。
オフィス移転の理由として、メンバーの増員が主な理由であることがありますが
今回のUMITO Partnersさんのように、
・社外に対しての見せ方を変えるため
・組織作りの一環のため
といった目的を定めると、より意味のあるオフィスを作れるのかもしれません。

村上さん、貴重なお時間ありがとうございました!

(左)UMITO Partners 村上 (右)TRAIL HEADS 栗井

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