見出し画像

【ネタバレ有】映画『プラットフォーム』/インタビューで拾った話のまとめと感想

今年前半、映画『プラットフォーム』を観て、ずっと感想を書きかけていたのだけど。
日本のNetflixでも配信が開始になったようで、ようやくまとめる次第…。

以下、公式サイトから引用したあらすじ。

ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が"プラットフォーム"と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!果たして、彼は生きてここから出られるのか!?

予告が面白そうだったので、劇場に行くことにしたのだった↓

特に現在の自己責任論強すぎ日本で生きてる身としては考えることがいっぱいで・・・、今年観たことにすごく意味があったなと思う。

以降は、既にご覧になった方と、ネタバレ気にしない方向けの記事ですので、これから観たいと思ってる方はご注意ください!

インタビュー記事等で拾った話のまとめ

(…に入る前に、どうやって海外のインタビュー記事を読んだかについて。本題から読みたい方は、次の太字まで飛んでください。)

映画を観たら制作裏話を読むのが好きなんですが、この映画については、日本語で読める情報が少ない…!スペイン語の映画だから、スペイン語だったら読めるんだろうなあ…!でも私のスペイン語力ではまとまった長文を読むのはかなり厳しいしなあ…!

…困ったときのテクノロジー、ということで。AI翻訳を駆使してスペイン語のインタビューから情報を得ることにしました。
私が使った方法は以下の通り。

①「El Hoyo(※1) Entrevista(※2)」でGoogle検索
(※1)『プラットフォーム』の原題、つまりスペイン語のタイトル。ちなみに、スペイン語のタイトルは、「穴」という意味。
(※2)スペイン語で「インタビュー」という意味

②気になるインタビューを開く(大体監督とか俳優さんの名前が記事名に出てるので、それをヒントに)

③記事をコピペ

DeepLで日本語訳。無料版だと訳せる文字数の制限があるので、細切れに何度も繰り返す

DeepLはGoogle翻訳よりだいぶ読みやすい訳を提供してくれるので、この方法を使うと記事の内容がまあまあ把握できます。他の言語でも同じ方法で未邦訳のインタビューを読むことができると思うので、ご興味のある方はよかったら試してみてください。

ということで、ここからようやく、インタビューから得た『プラットフォーム』裏話(?)まとめです。

・もともとは演劇用の脚本だったものをプロデューサーが発見し、映画化に至った。

※情報ソース
https://www.eitb.eus/es/cultura/cine/detalle/6802686/entrevista-galder-gazteluurrutia-pelicula-el-hoyo-/

ーー

・予算がなかったので、撮影は6週間で行われた。その短い間に、主人公ゴレン役を演じたイバン・マサゲさんは12kgも(!)減量した。

※情報ソースhttps://www.eitb.eus/es/cultura/cine/detalle/6802686/entrevista-galder-gazteluurrutia-pelicula-el-hoyo-/

ーー

・当初、Obvioじいさん(と私(けそ)が勝手に呼んでいる。ちなみにこのセリフはやはりスペイン語圏で流行ったっぽい)のトリマカシは、別の俳優が演じる予定となっていた。それが急遽NGになったので、撮影に入る1週間前にソリオン・エギレオールさんに連絡が行き、彼が演じることになった。

※情報ソース
https://www.eitb.eus/es/cultura/cine/detalle/6802686/entrevista-galder-gazteluurrutia-pelicula-el-hoyo-/

ーー

・ソリオンさんは、50歳になった後に映画デビューした。

※情報ソース
https://es.vida-estilo.yahoo.com/netflix-el-hoyo-zorion-eguileor-trimagasi-fenomeno-actor-exito-172531009.html

ーー

・ソリオンさん、台の上の食事を見境なく口にする演技の最中に、うっかり堅い海老を口に入れてしまい、中が切れてしまった。

※情報ソース
https://es.vida-estilo.yahoo.com/netflix-el-hoyo-zorion-eguileor-trimagasi-fenomeno-actor-exito-172531009.html

ーー

・撮影は、ビルバオにある赤十字の建物で行われた。一般的な工事用の足場のような垂直な構造物を作り、中央には木の構造物を作り、それを内側で縛ってセメントのように見せている。

※情報ソース
https://www.fotogramas.es/noticias-cine/a31801054/el-hoyo-como-se-rodo/

ーー

・本作の結末については、監督自身が明らかにしている。333階層は実在せず、そこに台がたどりついた段階ではすでにゴレンは亡くなっていた。

※情報ソース
https://www.revistagq.com/noticias/articulo/el-hoyo-pelicula-netflix-final-explicado

ーー

どこに書いてあったか忘れちゃったんですが…。主人公を演じたイバンさんはもともとコメディ俳優だということも読みました。重いテーマの映画だけど若干の軽快さがあるのは、彼が出ていたことが大きいかもしれません。大泉洋氏みたいなポジションの人なのかもしれない。あ、このインタビューで、「お笑いではやったことがないことをしてみたかった」と話しているな。

===

以降は、

私の感想

ネタバレ有。

「罪を犯す人がいたら、もっと罰を厳しくしなくてはならない」と主張する人に特に観てほしい作品だと思う。この作品の中で、もうほかに食べるものがないから同室の人間の肉を食べることを決める描写があるが、これと同じことはいろいろなところで起こっていると思う。毎日暴力を振るわれていて逃げ場もなく経済力もなく、どうしようもなかったから相手を殺した人。食べるものがないからコンビニでお菓子を盗む人。暴力から逃げる場所がないなら、飢えずに食べていくための仕組みができないなら、同じことは何回でも起こるだろう。罰を厳しくしたからといって、こうした事件は防げるものではない。ゴレンは48階層にいたときは、人肉を食らう可能性なんてこれっぽっちも考えていなかったのだ。

・ゴレンたちが想像しているよりも、もっと下に下に階層があった、というのは、現実社会でもそうだなと…。自分が想像できる範囲って、自分に接している範囲のことでしかなくて…。

・最後にゴレンたちがメッセージを届けようとする先が、「この建物のシステムをつくった人たち」でなく、「料理をつくっている人たち」だというのにううむとうなった。突然の自分語りになるけれど、正社員として勤め人をしていたあるとき、自分の比較的恵まれた待遇(給料とかクビになることを気にせず働けることとか)は非正規社員の人が弱い立場で働いていること(期限付きで雇用されていることとか給料に対して妥当と思われる以上の仕事が要求されていることとか)なしに得られていないと気づいて、自分も不当な「不公平」に実は加担していることが苦しくなった。「この仕組みは、自分が始めたわけじゃない」と主張しても、不公平に加担している事実は変わらない。不公平に加担せず生きていくことは特に資本主義の社会ではほとんど困難で、だから毎日苦しいのだけど。

料理をつくっている人たちは、毎日料理をつくることに一生懸命で、その料理がどのように使われているのかは(おそらく)知らない。知らないから、働き続けられているのだと思う。でもやっぱり、料理を作るからには、それがその先どのように世界に作用するのか、考えないといけないと思う。

・久々に、「スペイン語、ちょっとでも勉強しててよかったぜ~」と思った。(大学で数年やっておいて「ちょっと」というずるさ…とほほ)

スペイン語には、"El que calla otorga(直訳すると「黙る者は認める」)"という諺がある。「沈黙しているということは、同意していることと同じだ」という意味。すごく好きな諺。

ゴレンとトリマカシとの会話で、「もう黙れ、エネルギーを消費してしまう」と言うトリマカシに「黙らない」とゴレンが反発するシーンがたしかあったと思うけど、この諺が背景にあると思うのだよね。

・下層階を経験した人が、下層階の人のために食べ物をとっておくとは限らず、「せっかく今は上層階まで来たんだ、ゆったり食べられる今のうちにたらふく食べてやるんだ!」という態度に陥ってしまう描写、文筆家の鈴木涼美さんが菅首相について書いていた話のことを思い出した。

鈴木さんは新著「ニッポンのおじさん」(KADOKAWA)で、“令和おじさん”としてなかなか親しまれてはいない菅首相について、「苦労してきたから庶民や弱者の気持ちが分かりそう、という時の〈そう〉こそがミソ」とつづっている。

〔中略〕

秋田の裕福なイチゴ農家のお坊ちゃんだったとされる菅さんですが、確かに2世や財閥の出身なら当たり前のように持つ地盤はなく、とりわけ自民党内では苦労した部類に入るのでしょう。ですが、苦労した人が必ずしも、他の人の痛みを少なくしようと考える聖人になるとは限りません。むしろ叩き上げや成り上がり系の人の方が、自分が逆境で苦労して勝ち残ってきたプライドがあるぶん、往々にしてもともと富んでいた人以上に冷徹で、過度に実力主義に走る傾向が見られるのも事実。

日刊現代DIGITALの記事「“菅義偉おじさん”の正体は「『可愛い』になりきれない昭和の男」…作家・鈴木涼美氏が考察」より引用

・ただの道徳的な映画にしなかったところが、冷めなくてよかった。だって世界はそうじゃないんだもんね…。資本主義の限界を示す映画だと思うけど、共産主義を手放しに推奨するものでもなくて、そこもよかった。

・ゴレンたちが革命を起こそうとしたとき、やっぱり暴力なしにはそれができなくて、悲しい気持ちにもなった。
そして何かを変えようと思ったら、「今、とても困っている人じゃない側/非・当事者」が関わる必要がある、っていうのも示唆的だったと思う。困ってる人は疲れ切ってるんだもの。性的少数者、障害者、経済的に困窮している人、などなど…、その「当事者」が声をあげるだけじゃ、世界って変わらないんだよな…変えられないんだよな…と改めて。
何度も書くようだけど、それが「当事者のため」ってなると聖人にしかできないように思うけど、そうじゃなくて。「誰かが生まれた環境とか生まれ持った性質だけで、不利になっちゃう世界で生きることが耐えられないから」だ。私にとっては。そして、人はいつでも部分的に弱者だと思うし強者だと思うからだ。

Siempre va a haber un político corrupto, un megaempresario que contamina mucho… Pero ¿vamos a seguir usando eso como excusa para rehuir nuestra responsabilidad?

(EITB(このサイト)の監督インタビューより。以下はDeepLによる翻訳)

腐敗した政治家や、汚染しまくっている巨大ビジネスマンはいつでもいるでしょう......しかし、私たちはそれを言い訳にして責任を回避し続けるのでしょうか?



いただいたサポートは、ますます漫画や本を読んだり、映画を観たりする資金にさせていただきますm(__)m よろしくお願いします!