コンテンツ月記(令和三年、葉月)
読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します。完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。
すでに長めのレビューを書いてるものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。
毎日たくさん面白いものに触れていて、感想書くのが全然間に合わない。ほんの一部の感想なのにめちゃくちゃ長いーー。
==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==
■本
ぜんぶ運命だったんかい \(^o^)/
日々少しずつ学びながら、自分の言葉で発信するフェミニストの会社員・笛美さん(大好きです!)初のエッセイ本。広告代理店でいわゆる「バリキャリ」女性として仕事に邁進し、「おじさん」社会が求める女性像を内面化していく中でだんだん混乱して疲れ切っていってしまう笛美さんのエピソード、途中からずっと泣きながら読んだ。日本版&ノンフィクション版&ひとりから始める民主主義を考える版のキム・ジヨンだなと思った。
ユーモラスで柔らかく、豊かなたとえが生き生きした文体で、(内容は苦しいけど)とても読みやすい。「フェミニストの本って血気盛んでとっつきにくいんだよな~」と思っている人が最初に読むのにぴったりな本だ。
Amazonのレビュー、最初ミソジニーでしかないでしょ…っていう誹謗中傷コメントばっかりあったんだけど、笛美さんの呼びかけ(↓)で、で前向きなコメントも増えていて、
そこを読んでいるだけで今の日本の現在地について考えさせられる。
日本は男女平等だって思っている方、ぜひ笛美さんのTwitterのコメント欄を見てみてほしい。Twitterでちょっとつぶやくだけで、すぐにアンチが袋叩きに来る地獄みたいな様相。絶対に、笛美さんをひとりぼっちにしないぞ😢後方支援していくぞ!!
■マンガ
あ、本編に入る前に、最近気づいたことを。
この頃、出版社各社は、よほど名前が知れてる作者じゃない限り試し読みなしに売れないと判断したのか、
(そういえばかっぴーさんのマンガでもこういうくだりがあった)
Kindleで「期間限定無料」で検索すると、少し前に話題になった漫画とか、結構読める。
作者さんが創作を続けていくために、お金に余裕があるときはぜひ作品を買うべきだと思うけれど、そうじゃない時や新しい作品に挑戦してみたいときにはぜひ。
ベルリンうわの空\(^o^)/
香山哲さんによる、ベルリンに暮らす中で社会について考えたことを綴ったマンガ。無料で読める範囲のところだけ読んでいて申し訳ないんだけど…社会への絶望に差し込む一筋の光…!
絵も大好き。私もこういうマンガが描けるようになりたい。
外国語学部にいた大学生の時、とにかく外国に暮らしてみたくて、親に留学したいと言ったら「それ相応の目的がないとダメ」と言われた。留学ってとんでもなくお金がかかるから、そりゃそう言われるよなーと当時も思ったけど、でもやっぱり「特別な目的なく、ただそうしたいから気になった場所に住んでみたい」という気持ちは消えなかった。だって、子どもの時は将来のために勉強して受験して、社会人になったら老後のために働いてお金ためて、私たちの人生にはあまりにも、「何かのため」にしていることが多すぎると思うのだ。実際には、寄り道の中で発見されるものがたくさんあるはずなのに。(早速脱線するけど、最近試し読みで最初の方だけ読んだ『ひとのこ』というマンガは、こういう目的第一主義みたいな社会をおちょくった作品で面白かった)
そんなわけで、このマンガの冒頭を読んでびっくりした。ベルリンの紹介から始まるんだけど…
(『ベルリンうわの空』より引用)
わ、これこそ、私が求めていたもの!
(一般的なマンガのテクニック?で言えば、最後の「あんまり何もしていない!」のところで香山さんのアップになりそうなものだが、そこでカメラ引くゆるい感じもとても良い。タイトルの「うわの空」もいいよなー)
香山さんは、日本でもこういう感じで、気になったところにしばらくの間滞在したりしていたそうだ。
(『ベルリンうわの空』より引用)
うーん、いい人生!
(今の私は、そんな感じで暮らせるようにネットがあればできる仕事づくりを頑張っている)
(今、引用してて初めて気づいたけれども、鳥取の砂漠のイメージからピラミッドの絵が描かれているのかも…?かわいい)
社会についての香山さんのまなざしが優しくて、読んでいてほっとする。
(『ベルリンうわの空』より引用)
「暴力や差別だって架空の出来事じゃない」って言葉いいな。ねじ伏せてくる強い力を持った言葉や意志に対して、柔らかに抵抗しているのを感じる。
香山さんは、子供のことも「自分が知らないことに詳しい人」だと思っていて、そういうところが好き(作中、香山さんが街に貼られている謎のシールについて、何か知ってることがあるか子供に尋ねるシーンがある)。
そしてこのマンガの、人間じゃないっぽいキャラクターデザインがテーマに合っていると思う。人間で描くと、どうしてもその見た目とその人の行動が人種に結び付けられちゃうところがあると思うから(実際には、見た目とぶ文化的背景ってシンプルに結び付けられるもんじゃないのにね)。
(『ベルリンうわの空』より引用)
移民として描かれているわにがかわいい。
ebookのレビュー欄にもそう書いてる人がいたけれど、これを読むとベルリンに住みたくなる。
(『ベルリンうわの空』より引用)
(『ベルリンうわの空』より引用)
そういえば、旅行でベルリンに行ったとき、スーツケースを階段の上にあげてくれた人がいたな。知り合いじゃない人に優しくする人がいる社会が、私は好きだ。自分から少しずつできることをしていくのが大事かもしれないな。
1巻の無料公開期間が終わりそうなところの感想で申し訳ない😢のですが、ぜひ…(無料公開は8/31までですが、その後の続編とかでも読めるところが
あるので!)。
製品版のリンクも貼っておく。表紙の犬がでかくてかわいい。
■ドラマ
最高の離婚 \(^o^)/
フォロワーのこふくさんに勧めていただいて、配信(FOD/お試し)で観る(こふくさん、ありがとうございます!)。坂元裕二さんの脚本のドラマ。
盆栽が好きで卒業論文は『罪と罰』で書いたこだわりの多い男性・光生(演じるのは永山瑛太)と、富士山が見える場所で育ったから「おおらか」なのだと自称する社交的な女性・結夏(演じるのは尾野真千子)。それまで、ただの取引先の顔見知り程度だったが、東日本震災が起こった日に一緒に歩いて帰ったことから親しくなり、結婚した。しかし、毎日口げんかが絶えず、ついに離婚に至って…。この、離婚したところから始まるドラマ。この二人と、同じ街(中目黒)に暮らすもう一組の夫婦(光生の大学生時代の知人・灯里とその夫・諒)、四人を中心に物語は進む。
本編が終わった段階ではちょっと納得できないところがあったんだけど、スペシャルまで観てどすんと胸に残った。スペシャルがとてもよかった。それはもちろん、それまでの積み重ねがあったからこそのよさなんだけど。ドラマを観終わってからも、(一緒にドラマを観ていた)恋人と私は光生のことについて何度も話している。そしてドラマを観終わったあとに光生のことを考えて私は泣いてしまって、そんなことは初めてだった。
いてもたってもいられなくなって、結局坂元裕二特集のユリイカを買っちまったのだけれど、このドラマについて考える作業が大変はかどる(?)。
(いいこといっぱい書いてあるんすよ…。ネタバレに出くわさないように、観終わったドラマについて書いてあるところから少しずつ読んでいる)
光生ってことあるごとに文句言って、面倒くさくて、でもすごくかわいくて淋しそうな人。瑛太じゃなかったら、ただ嫌な人に見えていたと思う(光生がいつも縁石の上を歩くのがかわいいな、愛しいな、と思って観てたんだけど、ユリイカによれば、この行動は瑛太が街の人を見て取り入れたんだって)。ユリイカには、瑛太自身が、光生みたいな人が主役ってどうなんだと思ったり、脚本家の坂元さんの光生への愛があまりに強くて自分は坂元さんより光生を愛せていないと葛藤したりした、ということが書いてあった。そんな中でも「やっぱり光生は愛されてもいい人間なんじゃないかな」と感じるようになった、と。役者さんって、自分とはまったく違う価値観だったり理解できないと思う価値観の人を自分の身体で演じて、自分とはまったく違う言葉を自分の声で話すから、不思議な職業だね(という話をしたら、わが恋人は「そうかなあ。どの人も、人間ってそんなに自分自身のこと自分でわかってないんじゃないの」というようなことを返してきて、なるほどと思った)。
流行ってる音楽をちょっとバカにしていたのにアイドルを目の前にしてその熱量に夢中になっていっちゃうところとか、取引先との付き合いで仕方なく草野球に行ってたのにいつのまにか子供に教える立場になっちゃうところとか、もらったパジャマをずっと着てるところとか、調子に乗りやすいところとか。光生ってすごく人間らしい人で、結夏が大好きだなって思いながら見つめていた気持ちがよくわかる。彼のぴかぴかの笑顔を思い出すだけで、物語の中の人なのに、どうか今も幸せで暮らしていて欲しいと思う。
ユリイカに書いてあった情報によると、坂元さんの頭の中にはもう1本続きの構想があるらしい。すごく観たい~!『大豆田とわ子と三人の元夫』の中に出てくる慎森と光生はすごく似ていて、慎森は光生の人生の別ルートみたいだな、もうこれがその続きなのかな、と思ったりはしたのだけど。
あ、あとエンディングがすごく好き。演じている人の遊び心が大いに反映されているところと、「なんで人間ってこんなに滑稽なんだろうねえ」っていう淋しいコミカルさを感じるから。スペシャルのエンディングは、特に好き。一つの街を舞台にドラマが進む意味を感じた。街も出演者だった。
一つ気になったところもある。今の坂元さんだったら、AVをああいう形でドラマに出さないんじゃないかな。知らない人が出てるAVだったら人間だと思わずに消費できる感じは、残酷だと思う。
それでも、生きてゆく \(^o^)/
引き続き坂元裕二脚本作品。こちらもFODで観る。
基本的にコメディの『最高の離婚』に続けて観たらびっくりするほど重かったんだけど、でもあまりにも素晴らしかった。生涯ベスト5に入るな、というドラマ。
15年前に妹を殺された深見洋貴(永山瑛太)と、その事件の加害者の家族である遠山双葉(満島ひかり)の交流を中心に描かれる物語。
俳優陣が互いに本気を引き出しあっていて、毎回引き込まれて観てしまった。瑛太と満島ひかりの演技もものすごくものすごくよかったんだけど、とにかくすごかったのが、被害者の母親役(つまり瑛太演じる洋貴の母親でもある)だった大竹しのぶ!ああ、これを大御所と呼ぶのね…と、体の芯から150%納得させられる名演技。どこかで読んだインタビューで、坂元さんが「舞台の大竹しのぶをテレビでも観たいと思って長台詞を書いた」と言っていたけど、大竹しのぶの本気ってこんなに破壊力があるのか…。あるエピソードで大竹しのぶが5分くらいずーっと話し続けるシーンがあるんだけど、完全にくぎ付けになってしまった、一瞬たりとも目を逸らせなかった。15年間苦しんできた人の重さが画面からにじみ出てくるみたいだった。ただ観ているだけなのに、ものすごくカロリーを使った。あと、かざまん(風間俊介)。これもどこかで読んだインタビュー情報だけど、坂元さんが「この登場人物(かざまんが演じる、ある人物)はどうしてもつかめないんだよなあ…」と思って脚本が書けなかったところが、かざまんの演技を観て書けるようになったとのこと。
洋貴と双葉は、ドラマの冒頭ではふたりとも子供みたいな恰好をしている。時間が止まってしまった二人。見た目でも、少しずつ二人の時間が動き出していくところがわかる。11話のドラマだけど、長い長い時間を感じる物語だった。坂元さんは、何かのインタビューで(そればっかり!)、あるときから敬語を意図的に脚本に入れるようにし出した、と話されていた。仲良しの人たちが話す流ちょうな会話を書くことには興味がなくて、ぽつぽつ話される、親疎の距離感が伸び縮みするような関係の人たちを描くことが好きだと。いろんな出来事に振り回されて、距離感が伸び縮みする二人の豊かな表情に引き込まれ、振り回されてしまう理不尽さに悲しくなった。よくもわるくも運命共同体になってしまうのが家族、特にきょうだいだな(←子供は自分できょうだいを持つかどうかを選べない、親の意向で共同体のメンバーになっちゃう、という点で)。
個人的には、被害者家族が、「あんなに悲しい事件があったのに、ポジティブな感情を持つなんて」と、自身が楽しむこととか喜びを感じることに罪悪感を覚えている(ように見える)ところにすごく共感した。亡くなった母ががん闘病中だったときに、(立場は違うけど)私も同じように思っていたから。母はおいしいものが食べられないのに私は食べていいんだろうかとか、飲み会で馬鹿騒ぎとか今はできないな…とか(途中から少しだけ、「私が禁欲的だったところで別に母がよくなるわけではない。いつもそんな感じでは私も潰れてしまう」と思えるようになったけれど、他に何もできないからせめてそうしたくなっちゃうんだよな)。ドラマでは、「被害者家族も加害者家族も、自分がしたこととは別のところで自分の日常がすっかり奪われてしまうという点で共通している」ということが繰り返し描かれるけど、こんなところで自分とも共通していると感じるなんて、びっくりした。
今朝読んだ、『大黒柱妻の日常』の田房永子さんと『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』の花田菜々子さんの対談(↓)でこういう会話があった。
田房
(前略)目に見える問題が起こったときに、これはいったい何なんだ、なんで自分はこんな目に遭ってるんだっていうところから始まって、被害から遡っていかないと自分の加害を認識できないから。
花田
自分が被害を受け入れていない状態で改心することはできない、と?
田房
うん、無理だと思う。セクハラしてる人とかに、お前は加害者だってずっと言ってもあんまり意味ない。指摘をきっかけに本人が「なんで俺はこんなことしちゃうんだろう」って自分を振り返ってくれたらいちばんいいけど、そういう思考回路がない人に言い続けてもさらに加害してくるだけだから。
小説丸の「ゲスト/田房永子さん◇書店員が気になった本!の著者と本のテーマについて語りまくって日々のモヤモヤを解きほぐしながらこれからの生き方と社会について考える対談◇第4回」より
このドラマの加害者についても同じことが言えると思う。
ずっと誰も味方になってくれなくて、自分のつらさに寄り添ってくれなくて、自分が大事だと思えないから他の人も大事だと思えなくて、すっと攻撃に移っちゃうんだ、と。(それは、「事情があるんだから、被害者は加害者をゆるせ」って話ではない。被害者に、加害者を癒す役割を押し付けるのは恐ろしい。加害の瀬戸際にいる人が攻撃に移っちゃう前に、自分の被害者性についてじっくり考える機会が第三者から得られるような社会にしたいよね、ってこと。お金と時間にある程度余裕がある人だけがそうできるのが、今の社会だと思う)
これは最近自分自身についてもよく考えているテーマであった。「私はすぐ人を傷つけてしまうが、それはまず自分の(機能不全家族で育った)被害者性を底の底まで見つめなおさないとどうにもならないだろうな」と。私たちにめちゃくちゃなモラハラをしてきた父も、きっと彼自身の被害者性に蓋をしちゃってるのだろうと思う。
■映画
あしがらさん \(^o^)/
もっと早くお知らせできたらよかったんですが…今日(8/31)までの限定公開…。
あしがらさんは、新宿の路上で暮らす60代の男性。いつもたくさんの荷物を持っていて、キャップを何重にもしてかぶり、下を向いている。虫がついてかゆいから、足踏みする動作を何度もする。
体調を崩して入院することになったあしがらさんが手続きのために区役所に向かったとき、支援者の方が荷物の一部を持とうとしたが、彼は決して渡そうとしない。「誰も信用していないんだ、あしがらさんの人生があったんだ」というようなことを、支援者の方は話す。あばらが痛むと訴えるあしがらさんが、後で静かに「暴行を受けた」と話すところ、すごくつらかった。
その後、生活保護を受けてグループホームに入ったあしがらさんの表情やたたずまいは、まるで違う人のようだった。買ってきたみかんを、(ドキュメンタリーを撮影している)飯田さんに勧めるあしがらさん。グループホームに入るとき、よろしくお願いしますって何度も何度も深くお辞儀をしていたあしがらさんのことを思い出しながら、このシーンを観た。「もらう」ばっかりの人生はあまりにも苦しい。もらったりあげたりしながら人と関われることが、どんなに人の自尊心を支えるか。
一緒に観た恋人が(私たちは日々一緒にいろんなものを観ている)、「ホームレスはくさいって言われるけど、くさくなりたくてそうなってる人なんて、いないよね」と話していた。「ふつうの」生活は、繋がる人がいなかったら本当に簡単に失われてしまう。
9月末まで、同じ飯田基晴監督の「『ホームレス』と出会う子どもたち」も無料公開されているそうなので、来月はこちらも観ようと思う。
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