エピソードに乾杯
長らく更新してませんでしたが、本のお気に入りの言葉を久々に紹介します!今日は言葉というよりも、お気に入りのシーン、ですね。『82年生まれ、キム・ジヨン』(この本、装丁も好き)より。
印象的なエピソードのある小説が書きたい。
例えば、レイモンド・カーヴァー「ダンスしないか?」。私の憧れた外国がぎゅっと詰まっている、大好きなエピソードが入っている。
「悲しい」と残すよりも強烈に悲しくなるエピソードが、「寂しい」と記すよりも強烈に寂しくなるエピソードが書きたい。気の利いた、花言葉みたいに。
(私は基本的に、ネガティブな感情をなんとか美しく見えるように織り上げて、彼らに「あんたらも生まれてきてよかったんだよ」と言ってやるために物を書いてるから、明るい感情に対してはこのような思いを抱きにくい。書いてるうちに明るい方におさまることはあるけど)
一つ光るエピソードがある物語は、心の奥底にしぶとく居座り続けることができると思う。
エピソードがスイカなら、ちょっとの塩も必要だ。わずかな滑稽さが、入っている方がいい。
とことんかわいそうだと、かえって嘘くさくなって、疑う気持ちが生じてしまうから。
その意味で、このエピソードは完璧だと思う。
どうしてこんなバカみたいなことに私達は生涯振り回されるんだろう、と、あまりにもやりきれなくってアートだから、このエピソードはぜひ最後まで(そもそも物語の終盤に出てくるのだけど)読んでほしい。
※100%の敵よりも、あなたのことはわかってるよ、と一点の曇りもなく信じている近しい人のほうが、きっとあなたを苦しめる。
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