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#16【オスグッド】Osgood-Shlatter病の病態・評価・施術について

今回はオスグッド・シュラッター病(以下、オスグッド)について書きます。
成長期の代表的な怪我で、頻度はかなり多いと感じています。

オスグッドも根本的な原因を取り除くことが予後の状態を左右しますので、何故怪我をしてしまうのかをしっかり理解しておきましょう。他の膝の疾患にも応用できる考え方になります。


1.オスグッド・シュラッター病とは何か

オスグッドは、11~13際の発育期の男子競技者に多く見られるスポーツ障害です。膝蓋骨の下方、脛骨粗面部の疼痛、腫脹、圧痛を特徴とします。
バレーボール、バスケットボール、サッカーなどのスポーツで多く見られます。

脛骨粗面 Thanks to @visiblebody

脛骨には、膝蓋骨の下方に出っ張った部分があり、これを脛骨粗面と言います。左の丸の所を見ていただければわずかに盛り上がっているのがわかるかと思います。ここは大腿四頭筋の腱が付着するために盛り上がっています。青くハイライトをしているのが大腿四頭筋で、大腿四頭筋が集まって脛骨粗面部に付着しているのが見てわかります。

オスグッドは、成長期にこの脛骨粗面の膝蓋腱付着部の骨軟骨が大腿四頭筋の牽引力に繰り返しさらされることで、発症します。脛骨粗面の一部が剥離と修復を繰り返し、炎症を起こすものと考えられています。

繰り返しになりますが、発症するのは発育期の競技者で、脛骨粗面部の疼痛、腫脹、圧痛を認めます。特に脛骨粗面部が膨隆するとともにその部分に圧痛を有するのが特徴的です。
痛みは運動により憎悪し、安静により軽快します。またエリーテスト(尻上がりテスト)で陽性が見られることもあります。

骨軟骨が分離しているとレントゲン上で骨片を認めることがありますが、それは症状がかなり進行してからになります。

2.オスグッド・シュラッター病の力学的な評価について

オスグッドの力学的な評価について考えていきましょう。

先程説明した通り、オスグッドの直接の原因は脛骨粗面が大腿四頭筋によって繰り返し牽引されることです。そしてスポーツ活動がその引き金となっているのは確かでしょう。
ではスポーツ活動中のどういった場面で大腿四頭筋による牽引が起こるのでしょうか。

オスグッドに関してスポーツ中に問題となる動作は、パワーポジションです。私はこう呼んでいるのですが、他の呼び方もあるかもしれません。

パワーポジション

ストップ動作や、ジャンプからの着地動作などでこのように重心を落とした姿勢をとることが多いです。この姿勢を取ると、重心が低くなることで次の動きに素早く移行することが可能になります。サッカーやバスケットのディフェンスでは相手のオフェンスに素早く対応するために、パワーポジションを取ることが多くあります。

パワーポジションというのは、これ自体は理想的な体の使い方です。股関節と膝関節を約90度曲げたこの姿勢は各関節に負荷がバランスよく分散するので、正確にこのポジションが取れればオスグッドになることはあまり無いと考えます。
しかし誤ったパワーポジションの取り方になっている場合、オスグッドのリスクがぐんと上がってしまう可能性があります。

オスグッドのリスクを上昇させるパワーポジションとは、股関節の屈曲が不十分なパワーポジションです。
股関節の屈曲が不十分になると、骨盤は前傾することができません。骨盤が前傾できないということは、パワーポジションを取った際に大腿四頭筋の起始部である下前腸骨棘が停止部である脛骨粗面から遠くなるということです。

起始部の下前腸骨棘と停止部の脛骨粗面との距離が近ければ近いほど、大腿四頭筋はコンセントリックに収縮することができます。反対にこの起始部と停止部の距離が離れてしまうと、大腿四頭筋はエキセントリックに収縮することになります。
エキセントリックに収縮するということは、大腿四頭筋には強い負荷が加わっているということで、それは脛骨粗面への牽引力を高めてしまいます。

ですので、スポーツ活動で発症したオスグッドの最大の要因は股関節の屈曲制限なのです。
実際にオスグッドの選手は股関節の屈曲制限があることが多いです。特にハムストリングの柔軟性不足が最大の鍵ではないかと僕は考えています。SLRの可動域が極端に悪い子をよく見ます。
オスグッドの施術では股関節の屈曲制限を解消することを目標にします。そして、その際僕はハムストリングの柔軟性を改善することを重要視しています。

3.オスグッド・シュラッター病の施術について

評価ができれば施術方針は自然と決定します。
股関節の屈曲制限を取ること。その為にハムストリングの柔軟性を改善することです。

SLRの可動域が落ちている可能性が考えられますので、SLRの可動域改善を第一のゴールにします。
その為に屈曲筋である腸腰筋と拮抗筋であるハムストリングをしっかり揉捻して筋の滑走を促します。ハムストリングについては少々強めに刺激を入れることもあります。
プラスでハムストリングのストレッチを指導します。

SLRの可動域が広がるだけでも、しゃがむのが痛いと言っていた子がその場で痛みなくしゃがめるようになることもあります。
痛みが取れれば本人も体の柔軟性不足が原因だったと自覚できますので、積極的にケアに取り組んでくれるはずです。
1回の施術でスッキリ治るわけでもないので、本人のケアがとても重要になってくるということをしっかり伝えましょう。

以上、オスグッドについての評価と施術についてでした。

今年もぼちぼち更新していきますので、よろしくお願いします。
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