ビジネスプロセスを『天才を殺す凡人』から考える

遅ればせながら、北野唯我 氏の『天才を殺す凡人』を読了した。

『天才を殺す凡人』北野唯我

本書の内容については、既に多くのビジネスYoutuberやビジネスBloggerに紹介されているので、とりわけ詳細に説明するつもりはない。

僕は僕自身の観点から本書を語るために、
ビジネスプロセス × 天才・秀才・凡人のフレームワーク
でnote記事を書いてみようと思う。

「天才・秀才・凡人」のフレームワーク

本書を詳しく紹介しない、といってもこのフレームワークの説明は避けては通れない。

人間は大きく「天才・秀才・凡人」の3つに分類できる。そして、分類ごとに得意な領域や好む言葉が異なる、というのが本書の趣旨だ。

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※ 上図は『天才を殺す凡人』北野唯我 の内容を元に作成

分類ごとに比率が大きく異なっているのも特徴で、凡人の数が圧倒的に多い。秀才は凡人よりも数が少なく、天才はごく少数しか存在しない。

プロセスを「創る人・管理する人・改善する人」

本書が面白いのは、天才・秀才・凡人をそれぞれ純粋な優劣関係ではなく、それぞれの長所・短所で説明しているところ。そして、三者の意見が交わらないのは、それぞれの価値観・軸が異なるからだと説明しているところだ。非常に簡潔でわかりやすく、説得力がある。過去の経験と照らし合わせて納得できるところも大きい。

僕自身もかなり共感できる内容だった。そして、何より、過去のプロセスマネジメントの経験を振り返って、思い当たる節があったのだ。

「天才・秀才・凡才」のフレームワークをビジネスプロセスに当てはめると、プロセスを「創る人・管理する人・改善する人」に言い換えられると思う。詳しくは下図のとおりだ。

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ビジネスプロセスは、類似プロセスの模倣、既存プロセスをベースにした改善で創られることが多い。これらは秀才の得意とする領域だろう。

しかし世の中には天才と称される人が稀におり、彼ら(彼女ら)はほとんどゼロベースからビジネスプロセスを生み出すことがある。

天才によって独自の世界観で生み出されたプロセスは、極めて属人的で感覚的だ。だから個人事業フェーズ、立ち上げフェーズでうまくいくことはあっても、拡大フェーズになれば秀才や凡人の力を借りて形式知化していくことになる。

つまり、新規ビジネスプロセスは、
天才によって創造され、秀才によってマネジメントされ、凡人によって運用・改善されていくと言い換えることもできる。

天才・秀才・凡人の対立

本書で説明されているとおり、異なる三者の意見は交わらない。これはビジネスプロセスの観点でも同じだ。

具体的に、それぞれのパターンを見てみたい。

天才 VS 秀才
天才は新たなプロセスを創造できるが、それを他者に直感でしか説明できない場合が多い。理論立てて説明ができないので、天才の創ったプロセスは再現性に欠ける。秀才はプロセスの再現性を重視するので、形式知化できず属人化するプロセスを嫌い、天才と対立する。

秀才 VS 凡人
秀才は組織としてプロセスがどうあるべきかを考えるが、凡人は個人や同僚の気持ちで考える。秀才は凡人が、主観的な判断でわがままを言っているように感じる。一方で、凡人は秀才が現場をわかっていないと感じる。

凡人 VS 天才
凡人にとって天才は理解不能なので、天才のプロセスだけに注目する。プロセスがうまく回っていれば高評価、回っていなければ低評価。天才は凡人の対応によって手のひらを返したような評価を受ける。

互いに平行軸、しかし、相互理解は可能

さて、ここまで天才・秀才・凡人の枠組みでプロセスを考えてみたものの、これら三者は完全にきれいに分類できるわけではない。天才っぽい秀才がいれば、秀才っぽい凡人もいる。凡人の気持ちがわかる天才もいる。要はあくまで傾向でしかないのだ。

そのため、ビジネスプロセスに関する議論が平行軸だと感じたとき、相手がどの傾向が強いのかをイメージしてみるだけで解決する糸口が見つかるのではないだろうか。

僕自身、これまでいくつか似たようなケースがある。紹介したい。

『社長失格』しくじり起業家の独白
とある社長の失敗談が語られた本を読んで、僕は全く彼の価値観が理解できなかった。今思えば、ここで紹介されている社長は紛れもない「天才」で、僕は「秀才」寄り。軸が異なるので対立するのは当たり前だ。天才の価値観を知れば、理解はできるかもしれない。

プロセスマップに対する、ネガティブな反応への対処を考えてみる。
これもプロセスを組織で維持・管理したいと考える視点での考察。プロセスを個人レベルで楽に回したいと考える凡人にとって、なぜわざわざそれを形式知化する必要があるのかわからない。めんどくさい。こうした状況で、理屈で説明しようとするとかえってドツボにはまるのかもしれない。

まとめ プロセスマネジメントの苦労

あらためてビジネスプロセスマネジメントは再現性を重視する「秀才」にとって得意領域な仕事だと思う。

一方で、天才・凡人にプロセスマネジメントの重要性を説くのは簡単でない理由も、本書の内容から理解することができる。天才はそもそも自身の生み出したビジネスプロセスを形式知化することが得意でなく、凡人は手間がかかることをやりたくないのだ。

マネージャーが苦労するのは、多くの人ができない・やりたくないことをどうやって推進していくかを考えなければならないからだ。そして、そのために異なる分類の人の視点を勉強する必要もある。

改めてプロセスマネジメントは大変なお仕事。これからも誇りを持って取り組んでいきたいと思う。



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