『ザ・クリスタルボール』①在庫管理の最適化を考える
4冊目のゴールドラット本の紹介となってしまった。今回取り上げるのは『ザ・クリスタルボール』。
『ザ・クリスタルボール』
エリヤフ・ゴールドラット 著
今回の舞台は製造業ではなく、小売業。在庫や物流の考え方も製造業とは異なる部分が多いので、どこまで本書の知見を製造業に生かせるかは未知数。
だが、在庫管理の最適化は製造業でも共通するものだ。部分的にでも著者の教えを活用できる方法を考えていきたい。
物語としての面白さはシリーズの中でも高いほうだと思う。読み物として楽しむ価値は十分にある。
本書による在庫管理の知恵
本書の教えの中から特に重要と思った内容を2つ抜粋したい。
①在庫管理の中央集約化
店舗や拠点単位で在庫管理を行うのではなく、中央で集中的に在庫管理を行うのが良いとする。欠品が発生する前に、中央から商品を届ける仕組みをつくる。そうすることで欠品率を低く抑えることができる。
店舗や拠点単位レベルで在庫を管理してしまうとどうなるか?保管できる在庫量には限りがあるので、多くの種類の製品を取り入れられない。箱単位・ダース単位などで仕入れる製品は、それだけで入荷が難しくなる。
何より厄介なのは、在庫を管理する単位が小さければ、需要予測の精度が低くなることだ。特定の製品が全く売れない週もあれば、100個売れるような週もある。在庫管理に付きまとう「不確実性」に対応できないだろう。
中央で在庫管理をすることにより、上記のようなデメリットは解消される。スケールメリットを生かした仕入れにはコスト削減も期待できる。在庫管理の手法統一や改革にも移しやすいだろう。
②多頻度少数の納品
中央での集中的な在庫管理を達成するために、必要となるのが多頻度少数での納品だ。これは各店舗や地域への納入と、仕入れ先からの納入の両方で行う必要がある。
まずは、各店舗や地域への納入について。
需要予測を完璧に行う方法は存在しない。AIなど最新のテクノロジーを駆使しても、それは過去のデータから未来予測するに過ぎない。「不確実性」に対応するためには、反応速度を速め、遅れをなくしていくことだ。
店舗での欠品に対して迅速な納品を中央から行う。この仕組みが完成していれば、欠品による売上機会損失を最小まで食い止めることができる。
次に、仕入れ先からの納入について。
中央で在庫管理するとしても、肝心の中央在庫が欠品していれば、各店舗へ納品をすることができない。すなわち、中央には常に在庫があるようにしておくことが理想。
ここでネックになってくるのは供給メーカー側の事情だ。メーカーでも製品を製造するための時間は必要だし、輸送にも時間がかかる。都合の良いときに製品が揃っている保証はない。
ゴールドラット博士が推奨する方法は、メーカーに分納を依頼するという方法だ。通常の納品単位を小さく分割し、製品が在庫として「ある」状態にしておく。
小売側の事情としては、在庫が0と1なのでは大きく違う。1あれば、欠品リスクの高い店舗に供給が可能だ。それにより売上機会損失の防止が見込めるからだ。
一方で、これはメーカー側にとってもメリットのある話だ。分納によって納品タイミングが部分的にでも早まれば、より早い売上金回収が可能だからだ。
キャッシュ回転を早めることで、売上を増加させる。これは過去のゴールドラット博士の著書でる『ザ・ゴール』でも語られていた。
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