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古代の英雄、蕭何に学ぶバックオフィスの働き方

司馬遼太郎による小説『項羽と劉邦』は、ビジネスの教材としてもよく使われる。古代中国を舞台とした物語ではあるが、現代日本のビジネスにも通じる部分があるからだ。

マネジメントやリーダーシップをはじめ、人望論や成績考課なども含めた組織運用について、項羽と劉邦という全くタイプが異なる英雄の対比を通して学ぶことができる。

今回は漢の初代皇帝となった劉邦に仕えた蕭何を題材に、バックオフィスの働き方について考えてみたいと思う。

蕭何とは

蕭 何(しょう か、? - 紀元前193年)は、秦末から前漢初期にかけての政治家。劉邦の天下統一を支えた漢の三傑の一人。

蕭何の経歴を列挙してくと記事がそれだけで終わってしまうので、詳しくはWikipedia参照ということで許していただきたい。

概略だけ説明すると、

・蕭何は軍人ではなく文官であった。
・戦場には立つことなく、内政や後方支援で劉邦に貢献した。
・主な業務内容は物資や兵の輸送/ 法令や歴史書などドキュメント管理/ 法律や制度を通した仕組みづくり

ぶっちゃけて言ってしまうと、かなり地味なお仕事を担当されていたようですね。

戦国の世では武将のほうがカッコイイ気がしますし、寡兵をもって奇跡的勝利を収めたような人が英雄扱いされそうなものです。

しかし主君の劉邦は蕭何の功績を強く認識し、漢王朝成立の第一功と評価されるに至っている。

後世の評価

特に兵站(ロジスティクス)での功績は大きく評価されている。蕭何が兵糧の輸送を続けたことによって、劉邦は戦いに専念することができた。

兵糧を侵攻先で現地調達することが当たり前だった時代、兵糧の供給は不安定であり、現地の人々の反乱を招くことも多かった。蕭何による支援は、戦ののちの安定統治にも貢献することになった。

兵站(ロジスティクス)の重要性に気づき、仕組みづくりまで完成させた蕭何。僕もプロセス屋の端くれとして非常に学ばせていただくところがあります。

蕭何の真の凄さとは

と、ここまでは様々なコンテンツで既に語られていることではあるが、僕自身が思うにこれらは蕭何が歴史に名を残すことになった最大の要因ではないように思う。

むしろ、劉邦という自身の功績を正しく評価してくれる主君を見つけたことこそが最大の要因であり、蕭何の最大の成果だと考える。

バックオフィス業務というのは従来地味で目立たない。そしてそれ自体が直接利益を生むことはない。もちろんコスト削減を提言することはできるが、それも前線での活動があってのことである。

前線の活躍無くして、後方の業績が認められるのは難しい。勝利時には前線に手柄を取られ、敗北時には責任を擦り付けられる可能性すらある。

古代でも現代でも、バックオフィスの人間は、「いいね!」と言ってくれる組織でなければ輝くことができない。組織上層部はもちろん、前線の人間がバックオフィス活動のありがたさに気づいていることが重要だ。

蕭何はその環境を自らの手で作り上げた。地方のごろつきであった劉邦(もちろん格下)を自らの上司に担ぎ上げることによって、自分自身の活躍できる環境を整えていった。これも常人には真似できない荒業だろう。

余談であるが、蕭何は人を見る目にも定評があった。蕭何と並んで漢の三傑の一人に数えられる韓信を劉邦に推挙したのも彼だった。

むすびに

バックオフィス部署は、組織の上層部がその重要性を理解しているか否かで待遇が大きく異なる。花形部署ばかりを贔屓する組織においては、バックオフィス担当者が報われることはないだろう。

待遇の不満は、ひょっとしたら環境が変われば改善されるものかもしれない。経営組織が変われば、上司が変われば、あるいは前線に理解者が増えれば改善されていくかもしれない。すべての業務で当てはまることではあるが、バックオフィス業務では特に周囲からの認識が待遇に影響すると思う。

所属組織の上層部や前線部署は後方支援の重要性を認めてくれているだろうか?目の前の業務を処理していくことだけではなく、自らの環境を良くしていくことを考えることもバックオフィスの働き方なのではないだろうか。

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