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スウェーデン オーロラの旅 撮影技術編


スウェーデン オーロラの旅 撮影技術編

オーロラは、北極圏地域(北緯65~70度)で、秋~冬~春の間見ることができます。
日本ではまず見ることができないので、アラスカ、カナダ、北欧へのオーロラツアーなどに参加するのが一般的です。
そうしたツアーでは、オーロラに出会えるとラッキーと言われるほど、なかなか見ることができません。

しかし、実はオーロラは毎日出ています。
厚い雲が広がっていない、雪が降っていない時にだけ、私たちはオーロラを見ることができるのです。

オーロラを見ることのできる日が限られているのはそのためです。

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北極圏地域は冬の間は雪が降るため、地形的に雪の少ない、晴天率の高い場所がオーロラの見える可能性が高いところになります。

晴天率の高さから、スウェーデンのアビスコは世界でも最もオーロラ観測に適した場所の一つと言われています。

アビスコのホームページには、次のように記載されています。https://auroraskystation.se/en/start-en/

「オーロラ帯の真ん中にあるアビスコは、オーロラを見るのに地球上で最高の場所と考えられています。 澄み切った澄んだ空気と雲がほとんどない永久的な空、 ほとんど毎晩アクティブなオーロラが見られます。」

このことを知って、私はスウェーデンのアビスコにオーロラを撮影するため6回通い続けています。

備忘録として、オーロラの撮影方法をまとめてみました。

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オーロラを撮影するとは

オーロラの撮影は基本的に星空の撮影と同じです。

オーロラは徐々に見えてきたり、急に大きくなったりします。

感激のあまり、カメラの設定を誤ったまま撮影することがあります。

シャッターチャンスを逃さないためには、事前の準備や装備の設定が重要です。

撮影場所ですが、例えばキルナやロヴァニエミはオーロラで有名な北極圏の都市ですが、ホテルのある市街地では周囲が明るく、なかなかオーロラを見ることができません。

オーロラ撮影は、山、森、湖などの自然に囲まれた明かりに邪魔されないところへ行く必要があります。

ホテルが山間部などの暗い場所にある場合は撮影できます。

天候は、晴天の日が望ましく、晴れていることが重要なポイントです。

部分的な薄い雲であればオーロラが見えることもありますが、雪や厚い雲の日は見えません。

そのため、最低3日間、できれば、5日間は滞在する日程がおすすめです。

オーロラは場所によって、出現する時間帯は概ね決まっています。

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アビスコでは、18時頃、北の空から見え始め、形や大きさを変化させながら深夜1時頃去って行きます。

イェローナイフでは、深夜 1時~2時頃と言われています。

北米よりも北欧の方がオーロラの現れる時間帯が早いので、体力的にも楽かと思います。

初めてオーロラツアーに参加したとき、北の空にオーロラが現れたと聞き、その方向を見ると白い雲のようでした。

それをカメラで撮影したら、緑色に写り感激したことを覚えています。

何か明るい白いものが見えた時、それはオーロラかもしれません。

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また、オーロラの場合、上空にある星がオーロラの向こうに見えます。

しかし、雲がある場合は、星はほとんど手前の雲に隠されて見えません。

オーロラは小さい弱い光のものから、大きくて強い光で激しく動くものまで、いろいろあります。

被写体として、明るさはかなり変化し、動き方も遅いものから速いものまであります。

従って、撮影中は、オーロラの変化にも気を配り、適正露出に調整することが大切になります。

突如としてオーロラが一気に広がる現象をブレイクアップ、とか爆発と言います。

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この時は、オーロラの光は強く明るく、動きも速くなります。

オーロラは通常は緑色をしています。しかし、強いオーロラになると赤や黄色が混ざってきます。

オーロラの形は、高速道路や橋のように空を横断するもの、カーテンのようにゆらゆら動くもの、筒状のもの、稲妻のように縦型に発光するもの、薄い緑色の霧のようなものがあります。

下記は、オーロラの動きをご覧になれるショートムービーです。

撮影機材や用品について

次に撮影機材や用品と準備、撮影中や前後に関することについてお話しします。

カメラ

カメラは、レンズ交換できる一眼レフかミラーレスカメラがいいでしょう。

マイナス20度くらいの低温環境で使うので、場合によっては撮影中に動作しなくなる可能性があり、万が一に備えるには、予備機を持っていきます。

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レンズ

レンズは、フルサイズ換算で、焦点距離 14mm~24mm の超広角~広角のズームレンズか単焦点レンズを使用します。

レンズの明るさは明るいF2.8のレンズがおすすめです。

F4、F5.6などの少し暗いレンズまたは設定でも使えないことはありません。

デジタルカメラの場合は、ISO感度を上げることで対応できます。

三脚、レリーズ

カメラ振れ防止のため三脚、レリーズは必須です。

雲台は、自由雲台がおすすめです。

自由雲台はいろいろな構図で撮影するのには使いやすいです。

暗くて寒いところでカメラをセットするので、カメラに雲台に合ったクイックシューやLブラケットをつけておくと便利です。

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バッテリー

カメラのバッテリーは気温が零度以下になると急速に能力が低下し、バッテリー切れになりやすいので、予備バッテリーを複数個、用意します。

予備バッテリーは、ジャケットのポケットに布で保護して入れておきます。
できれば、使い捨てカイロなどもポケットに入れておくといいでしょう。

ライト

暗い夜道を歩くので、懐中電灯、LEDライト、ヘッドライトなどが必要になります。

ライトは、星空の撮影でも同じですが、撮影現場で照らすのは、他の撮影者の撮影を邪魔することになります。

しかし、暗い中でカメラの設定確認、調整は必ず必要になりますので、小さなLEDライトをポケットに入れておきます。

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ヘッドライトや懐中電灯の使用は原則として撮影現場に行くまでとします。

撮影現場でこれらを使用すると他の撮影者の撮影を邪魔することになります。とくに、撮影している人の前方を照らすのはしないようにします。

しかし、どうしても使いたい場合は、一声かけて、了承をもらってから使います。

ヘッドライトは、行き帰り歩くときは白色光を使いますが、撮影現場では了承をもらって使う場合でも、明るすぎるので赤色光を使います。

赤色光や光の明るさの強弱が切り替えられる物がおすすめです。

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衣類

防寒服はスキー、冬山登山用などに使用するアウタージャケット、厚手のセーター、シャツ、下着、靴下、帽子、手袋、スノーブーツが必要です。

氷点下20度以下になると顔、耳、手足の先が痛くなります。

寒さ対策として、手袋、靴下は二重に履いておく。使い捨てカイロも靴に入れておくといいでしょう。

カメラ操作時に手袋を付けたままでも操作できる薄手のカメラ用手袋があればベストです。

手袋を脱ぐと寒さで指先が痛くなります。

その他

結露防止のため、フリーザーバッグとレンズヒーターと電源用モバイルバッテリーを持参します。

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冷え切ったカメラ、レンズを室内に持ち込むと瞬時に結露します。 

撮影終了後に、フリーザーバッグに入れ、空気を除いて密封、それをカメラバッグに入れて室内に持ち込みます。

5~6時間そのままにしておき、常温に戻ってからカメラを取り出します。

オーロラは北の空から見えてきます。

カメラのセッティング時にコンパスかスマホのコンパスアプリがあればいいと思います。

雪面の上での撮影になりますので、カメラに雪や水滴が付着した時や急な降雪時のため、タオルを持参します。

レンズの交換や埃とりのためにブロアーも必要です。 

オーロラ撮影の流れをお話しします。

撮影の流れ

ホテル出発前までに、必要機材の点検をしておきます。

とくに、バッテリーやSDカードが装填されているか、必要な用品は入っているかチェックします。

カメラの設定は事前設定できるものはすませ、確認しておきます。

また、現地日時、時間への変更を忘れないようにしておきます。

撮影ポイントに到着したら、三脚にカメラを据え付けます。レリーズもセットします。 

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三脚は脚を伸ばさないで、低くセットします。

風対策、転倒防止、安定性がその理由です。

マイナス15~20度くらいになります。

素手で三脚の金属部を持つと手がくっついてしまいます。

素手のままで触ると凍傷になる可能性があるので、手袋をします。

レンズが結露する場合があるので、レンズヒーターも取り付けておきます。 
カメラをおおよその方向に向け、ズームレンズの場合、焦点距離を決めます。

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カメラ設定

私の場合、大体いつもこのような設定をします。

・ズーム:14mmm

・撮影モード: マニュアル

・ISO: 3200

・絞り: F2.8~F5.6

・シャッタースピード: 15秒

・画質モード RAW

・ホワイトバランス AUTO
    (青みがかった空にする場合は、蛍光灯、ケルビン調整する)

オーロラの明るさにより、シャッタースピードを3秒から30秒の範囲で調整します。

長秒時ノイズ低減はオンにすると、露光時間と同じくらいノイズ処理時間がかかるのでオフにします。

三脚にカメラを取り付けて撮影するので、手ぶれ防止をオフにしておきます。

オーロラは大きくて明るいものと小さなオーロラでは明るさに大きな幅があります。

シャッタースピードはとりあえず、15秒を設定し、実際にオーロラが現れた時点で調整します。

フォーカスは基本的に星に合わせます。

MFで明るい星をライブビューで拡大し、星が最も小さくなるところでピントが合っている状態になります。

暗い中で、レンズのピントリングをいじっていてずれてしまうことがありますので、テープで固定しておきます。 

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オーロラだけ撮影しても、あまりいい写真になりません。

林、山、建物、人、湖などを下部に入れておくと雰囲気が出ます。

手前に建物や木を大きめにいれる構図にする場合は、建物や木にピントを合わせます。

遠くにある場合は、星にピント合わせで撮影します。

カメラの防寒・降雪対策: 防水カバーかタオルでカメラにかけて保護します。

小屋にいると降雪していてもわからないことがあります。

機材のセッティング中に、フォーカスやズームリングに触れて、ずれてしまうこともあります。

ピントを再確認して待機することをおすすめします。

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セッティングが完了したら、バッテリーを抜き、ポケットに懐炉と一緒に入れておきます。

オーロラが現れたらバッテリーをセットして撮影を開始します。

レリーズの露出時間はオーロラの明るさに応じて3秒から30秒で調整し、レリーズで撮影していきます。

明るいオーロラは動きも速く出来るだけ短くシャッタースピードは3秒から5秒あたりがいいと思います。

液晶ディスプレイでトーンカーブを確認します。

液晶画面で確認しながら、明るめのもの、普通のもの、暗めのものなど撮っておくか、AEブラケット機能を使うといいでしょう。

また、いろんな構図や露出調整しながら、撮影を続けます。

人物なども入れるといいでしょう。

リモコンがあれば、自分を入れて撮ってみるのもいいでしょう。

三脚の転倒を避けるため、他の撮影者との間隔を十分にとります。

カメラの取り付け取り外しは慎重に落下に注意します。

風の強い場合は、三脚に重りをかけ、振動防止をしておく方がいいでしょう。

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撮影終了後

撮影が終了したら、カメラを三脚からはずし、バッテリーを抜き、フリーザーバッグに空気を抜きながら入れます。

ジッパーをしっかり閉め、カメラバックに収納してから、部屋、車に戻ります。

ホテルに戻ったら、夜の間か朝起きてすぐ、バッテリーを充電と媒体のバックアップを取っておきます。

カメラは布やブラシで掃除、レンズはブロアーで埃を取っておきましょう。

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最後に、いくつか気づいた点を挙げます。

前半で書いたように、オーロラは北の空に現れますが、初めての場合は、白い雲や山の陰のように見え、気づきにくいので最初はオーロラ・ツアーに参加するのが良いでしょう。

初めてオーロラ撮影に行くときは、暗い中での撮影になれるため、出発するまでに星空の撮影をしておくことをおすすめします。

オーロラは現れても、すぐに消えることがあります。

待機中は飲食したりもしますが、できるだけ北の空を監視することが大切です。

交代で見張っているのも一案ですが、呼びに行っている間に消えてしまうこともあります。 

見逃さないためにも、ずっとカメラの前で待機するのが良いと思います。

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天候が良くても、オーロラの活動が弱かったり、オーロラの現れるのが待機時間とずれると見ることは出来ません。

可能な範囲で観測日は長い方が良いでしょう。 

また、明るい月も影響しますので、新月の前後数日間に計画するのがいいでしょう。

昼間は、北極圏のアクティビティを楽しめます。
アビスコでは犬ぞり、スノーモービル、スノーシュー、スキーなど、北極圏ならではの遊びがあります。

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オーロラ・ツアーなど曜日によって催行していない場合がありますので、事前の確認が必要です。

以上がオーロラ撮影の方法についてでした。

オーロラの撮影方法やアビスコについてお知りになりたいことがありましたら、お気軽にご連絡ください。

最後に、撮影機材と衣類などの装備チェックリストを付けておきます。

カメラ関連チェックリスト

1. デジタル一眼レフカメラ
2. 予備カメラ (あれば、念のため)
3. カメラバッテリー充電器
4. レンズ 広角、広角ズーム 
5. 三脚
6. 雲台 できれば、自由雲台
7. ケーブルレリーズ
8. カメラ用 予備バッテリー 2個以上  充電器
9. フリーザーバッグ カメラの結露防止対策
10. 結露防止用レンズヒーター
11. カメラバッグまたはリュックサック"
12. ハンドタオル
13. バッテリーグリップ あれば、電池の消耗が早いので
14. エアブロアー
15. フィルター   とくにフィルターは不要ですが、
風景など撮影する場合は、PL、ND、クロス、ソフトン フィルター
16. 紙テープ (ニチバン透明版素行KP158)
17. 小型LEDライト
18. SD、CF、XQDカードなど予備 画像記録用
19. コンパス  (どうしても必要なものではない)
20. ノートパソコン 撮影データ保存用。 外付けポータブルHD、
21. パソコンの充電器 (PCを持っていく場合)
22. カードリーダー 撮影データ保存用。
(PCを持っていく場合)
23. 変換プラグ C型  充電時に必要(2から3個)
 C型はアビスコの場合
   国によって異なるので、確認が必要
24. テーブルタップ (コンセントが少ない場合に備え)


服装などチェックリスト

1. 防寒具 スキー用、登山用の上下、ダウンジャケット、ウィンドブレーカなど
(風が通りにくく、防水、厚めのもの)
2. 長袖シャツ
3. セーター
4. ズボン
5. タイツ
6. 毛糸の靴
7. 靴下
8. 下着
9. ハンカチ
10. パジャマ  (ホテルに寝間着等はない)
11. スカーフ、ネックウォーマー
12. 帽子 ヘッドバンド
13. マスク
14. 手袋
15. 靴 長めのもので底が滑り止めタイプ
16. 簡易アイゼン (ホテルででも入手可能)
17. 登山靴、雪靴など
18. 使い捨てカイロ
19. 折りたたみ傘 雪や雨に備えて
20. 洗面道具一式 歯磨き、歯ブラシ、びげそりなど
21. 筆記用具
22. サングラス
23. 日焼け止め
24. 電池  (電池を必要と思われる機械等があれば)
25. 常備薬 (必要な場合)
26. 時計  (現地につく前に現地時間に合わせる)
27. 健康保険証のコピー
28. ビニール袋
29. パスポートのコピー
30. タオル
31. スリッパ
32. ガイドブック
33. スマホ(現地の電話会社対応のもの、日本のスマホをそのまま現地で使用すると高額な通信料金を請求される場合があります。事前に機内モード、ローミングオフ、モバイル通信オフにしておく、詳しくは電話会社に聞いてください。) 

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