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閑散録

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2021年2月の記事一覧

浪人していた頃の些細な話

 長いような短いような浪人生活を終え、大学に入学してから2年以上が経った今になって、当時について様々思い返すことがある。多分浪人していた頃は無力感と周囲からの圧力(所詮自分が作り出したものに過ぎないが)で、自分でも気が付かないほど必死だったから、自分を取り巻く周囲の状況を冷静に眺めてみることができなかったのだろう。
 浪人の話はすでに『火中日記』で触れていて、そっちに加筆する形で書こうかとも考えた

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牛

 「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」という『草枕』の冒頭は、今ではあまりに有名になった夏目漱石の麗筆である。

 かねてより私は、奥妙で、時にユーモラスな文章表現や、細緻な人間心理の観察、そしてその巧みな描写に魅了され、漱石を敬愛して久しい。出会いは高等学校の現代文の授業で『こころ』を読んだというおそよ平凡で一般的なものだが、これ以来悉皆漱

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