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小規模特任校への進学を選んだ理由

二男三男はこの春(2023年の4月)から、小学3年生と小学1年生になりました。
二人の通っている小学校は、居住市内にある小規模特任校。
学区外(越境)登校になる場合は保護者が責任をもって送迎する必要はあるけれど
希望すれば、市内在住の子ども達は誰でも、進学できるようなシステム。

送迎は毎日のことだから、確かになかなかの手間だけれど
小学生の送迎は必須だったアメリカで長男の小学校生活を始めた我が家。
その後のベトナムも送り迎え文化だったから、
まぁ大変じゃないことはないけど、そんなこともあるかな、みたいな。
あまり大きな負担に感じずに済みました。

「せっかく日本に住んでいるのに?」
「やっと3兄弟全員小学生以上になったのに?」
と、まだ送迎を続けることを心配してくれる海外在住友達もいたけど
それ以上に大きな魅力と可能性をこの小規模特任校に感じられたから
二男も転校し、三男も入学することにしました。

二男三男の経緯と小規模特任校との出会い

我が家は2022年の9月に、山形県に転入してきました。
ここでは通学校の選択肢はない!と、勝手に私はそう思い込んでいたから、
あまりよく調べることなく居住学区の小学校へ二男は転入。

その居住学区の小学校は夫の母校。
家からもとても近くて、登下校の時間帯や、日中も子ども達の声が聞こえてきて
学校の様子をなんとなくでも感じられる距離感だったから
あまり心配することなく通わせていました。

でも、二男に行き渋り発生。

ここの前の学校に転入した時にも、
転入後の同じような時期に、似たような理由で行き渋りがあったから
お、また来たかな。
私はちょっとそんな気持ちでした。

二男は、アメリカ生まれ。
アメリカとベトナムでの生活がまだ人生の半分以上を占める彼の中では
いくら順応性が高い子どもの時期とはいえ
アイデンティティが迷子になってしまうようなことが時々起こります。

生育環境だけじゃなく、彼の気質にも関係することなのかもしれないし
もしくはその両方が原因になって、
彼の気持ちを迷子にさせて、不安にさせてしまう。
そんなようなことが時々起きて、彼は苦しくなってしまうのです。

周りの誰が悪いわけでもない。
もちろん彼自身が悪いわけでもない。
ただちょっと浮いてしまったり、
根のおろしどころがわからなくなってしまって
戸惑いをおぼて、悲しい気持ちに飲み込まれるようなことが起こってしまう。

そんなアイデンティティ迷子の二男は
色々思うことありながらも、お友達の力も借りながら
少しずつ学校には戻っていけました。

そしてその頃、実は三男も新しい園に順応しきれてないことが発覚。
彼は0歳で渡越して、1歳半からベトナムの幼稚園で育ててもらったようなもので
彼の中のいろんなルールが日本と違っていても
家族ではそのままを受け入れてしまっていて。
だから、ここの前の完全自由保育の幼稚園ではのびのびできていたけれど、
きちんとルールのあるここの園では適応に苦しんでるみたいでした。

二男と三男のこの気持ちに、母として一緒に向き合いたい。
この状況をどうにかしてあげたい。
今までは転勤で転校を繰り返してきてたから
3年以上同じところにとどまったことはなかったけど、
今回は、もう、そうはいかない。
夫が転職して転勤がなくなったから、基本的にはずっとここ暮らし。

自分たちで変わらないと、環境が変わらない。
その思いが、私の気持ちから少し余裕を奪っていたような中
二男が「小規模特任校進学・転校のすすめ」のチラシをもらってきました。

小規模特任校ってなに?

私はそれまで小規模特任校のことは、名前程度の知識しかなかったのですが
そのチラシを見て、もしかしてなにかヒントがあるのかしれない!
そう直感的に思って、少し小規模特任校について調べてみました。

「特任校制度」というのは、文科省が定めている学校選択制の一つ。
文科省Webサイトの用語解説を引用すると、
「従来の通学区域は残したままで、特定の学校について、
 通学区域に関係なく、当該市町村内のどこからでも選択を認めるもの」
その特任校制度を小規模校で実施するのが「小規模特任校制度」なんだとか。

一般的に特任校への進学を選択する理由には、
通学の利便性や希望する部活動の有無、いじめの問題などがあるようで。
一定の理由の中から一定の期間内に進学の希望を表明し、採択してもらう方法や、
保護者の意向や子どもの状況に応じて保護者が市町村教育委員会に申立する方法
などなど難しそうなケースも色々とありました。

今回の二男がもらってきたチラシによると、
この小規模特任校への進学に特に難しい手続きはなし。
進学を検討する家庭は、市の学校教育を担当する部門に見学希望をだして
見学の後に、改めて家庭の意向をその学校教育担当部門に表明すればOK。
とても簡単そうでした。

調べていくと、全国には小規模特任校がたくさんあって
それぞれ特色を出して、PRされてるWebサイトもたくさんあって
小規模校と言われる中でも、さらに人数の少ない学校のことを
過小規模校と呼ぶことも知りました。

文科省の定めでは小学校の適正学級数は、12-18学級。
各学年、2-3学級作れる人数がいることが望ましいそう。
それ以下の6-11学級(各学年1-2学級程度)の学校を小規模校と呼び、
各学年に1学級を作れず複式学級を必要とする規模の学校が過小規模校
と、呼ばれるらしい。

過小規模校になった学校が、複式学級をさけるために、
小規模特任校を申請し、どうにか市内から児童を集めて小規模校の維持に成功!
なんてアピールしているWebサイトもちらほらあって、
ここの小規模特任校はどうなの?そもそも複式学級ってそんなにネガティブなの?
と、いろんな疑問がわきあがってきたので、
まずはここの小規模特任校を見学してみることにしました。

見学して体感した魅力

市の学校教育を担当する課に見学の希望を申し出るととても歓迎してくれました。
すぐに日程をアレンジしてくださり、夫とともに学校を訪問すると、
ここでもまた温かく歓迎していただきました。

校長先生が直接、この学校の魅力について説明してくださり、
実際に授業も見学させてもらいました。
学校内を見学している中で、校長先生が児童一人一人に、
名前で声をかけていることに気がつきました。
この学校は名札がないにも関わらず、校長先生だけではなく、
すべての先生が、すべての児童の名前を認識できているそうです。

名前で呼びかけられ、気持ちよく挨拶をかわしあう環境が、
私にはとても魅力的に感じられました。
また、児童たちはどこの誰かも知らない私たちに対しても、
とても積極的に声をかけ、距離を縮めてくれました。

これは私の想像でしかないけれど、
このコミュニティでは誰かを警戒する必要なく、
彼らはきちんと安心を得ることができ、
お互いにお互いを認め合える場所でのびのびと過ごしているからこそ、
新しくきた人に対しても真っ直ぐに向かっていけるのかな?
と、感じて、とても印象がよかったです。

校長先生のお話によると、
ここの小規模特任校は「地域協働」を掲げていて
学校のみならず地域全体で子どもたちを育てているのだそう。

私が集団教育の場に保護者として足を踏み入れたのは、
長男が幼稚園の年少に入園してからなのでちょうど10年が経ったところ。
この10年の間、3兄弟あわせると20以上の園や学校などに保護者として参加して、
それこそいろいろな形を見てきたと思う中で、
私が、感じ、思っていることは、至極当然なことだけれど、
子どもというのは家庭だけでも、学校だけでも育てられないということ。

どちらの場所でも、また可能であるのならばそれ以外の場所でも、
子どもにとっていきいきと過ごせる環境が提供されてこそ、
子どもたちはより一層、多くの可能性をもって
自分たちの力で育っていけるのではないかと思っています。
なので、地域の方々との関わりも多くもちながら学校生活を送れるその学校は
この点においても、とても魅力的に感じました。

またもう1点、私が見学でとても魅かれたのは児童達の関係性でした。
その様子を窺い知れたのは、みんなが私のところに寄ってきて、
それぞれを紹介してくれた時のこと。

自分で紹介してくれる子もいれば、
シャイな子などは他のお友達が紹介してくれたりして、
みんながそれぞれの得意と不得意を把握して、
それを助け合っている日頃の関係性がその紹介の中で感じられました。

例えば、
「この子は恥ずかしがり屋さんだからごめんなさい、
 今はちょっと話せないんだけど、とっても面倒見がよくて、
 さすが三姉妹のお姉ちゃんなの!」
 とある友達が紹介してくれたり。

また別の子が誇らしげに
「私はすっごく足が速くて上級生よりも速いの!」というと、
その横で「でもそそっかしいんだよ」っていう声があがって
その足の速い子が
「そうなの。だから給食の時はいつも助けてもらうの」
 (配膳の時になにかこぼしてしまったことがあるらしい)
なんてちょっとハニカミながらも、でも助けてくれる友達に感謝したり、
助けてあげる友達もそれは当然に捉えていたりする関係性があって
「みんなそれぞれに違う得意がある」「不得手なことは助け合う」
これが当たり前に浸透しているこの環境で、
我が子達も過ごしてほしいなと、心から思いました。

複式学級への思い

文科省の定めがあり小学校の場合、
二学年で16人以下となる場合は複式学級となるそう。
1年生を含む場合は二学年で8人以下という特例もあるんだとか。

二男三男の通う学校は、三男が属する1年生は6人なので1学級。
2,3年生はちょうどぴったり16人なので今年度は複式学級になりました。

複式学級へのメリット、デメリットはネット上でもどちらもよく見られます。
多くの意見や考え方がある中で、私の思う一番のメリットに近いと感じたのは
縦のつながりも自然と生まれ、教え合う関係を築けることでした。

教えることは、さらに学びが深まることだと思っているので、
勉強だけじゃなく、日頃の生活の中でも色々と関わり支え合う機会が多いことは
私が思う魅力的な学級に近いものでした。

そして、デメリットについては、、、今の所まだ思い当たらないです。

ネット上でよくみかけるデメリットには、切磋琢磨する機会がないことや
合唱など大人数でこそ取り組める活動を経験することができない
と、いうようなことがありました。

全てのデメリットを網羅したわけではないのですが、私がみた中では
デメリットの多くは、「複式学級の」というよりかは、
小規模もしくは過小規模の場合のデメリットのなのかな?と感じました。

私がデメリットに気が止まらない理由としては
私たちが暮らすこのあたりは中学校になると、
まだ適正規模の人数を確保できる環境があるから
小学生で経験できなくても中学時代があるかな?という思いがあり
人数が少ないことを私が気にしていないだけなのかもしれません。
そして、私が子ども達に与えたいものとして
大人数の中で経験できることよりも、大切にしたいことがある
ということもあると思います。

この話をするとさらに複式学級の良し悪しとは論点がずれてしまいそうだけれど、
我が子達には、自尊心を育める環境にいてほしいし、
また、多くの大人の姿やいろんな生き方、考え方に
小学生時代の真っ直ぐな気持ちで触れて、知ってほしいと思っています。

学校に関わる大人の人数でいえば、
大きな学校の方が純粋に保護者の数も教師の数も多いかもしれません。
でも、大きな学校に我が子が通っている時の自分のことを振り返ると、
把握できる子どもの人数や関わりには限界があって、
全員を知ることができなかったし、
また、1保護者として学校に関わることのできる限界も感じていました。

そのような学級以外の面も考慮すると、
大きな規模よりも小さい規模の環境が我が家にあっているように感じて、
複式学級で感じるデメリットも気にならなくさせているのかもしれません。

これからへの思い

どのような環境に身を置いていても、順風満帆なことばかりではないし
我が子達も、また、私自身もこれからいろんなことがあるかなと思います。
それは小規模特任校ならではのものなのかそれ以外のことなのか
今はまだわからないけど、その都度向き合い乗り越えていきながら
多くのことを考えていきたいなぁと思うのでした。

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