超短編小説『ナンセンス劇場』066
【特許出願中】
ミサトは傘の形状が気に入らなかった。
傘は左右前後対象に作られているが、体の中心で傘を持つことは出来ない。
そのためいつも背中や左右どちらかの肩が濡れてしまうんだとミサトは不満に思っていた。
そこで今までにない斬新な傘を自分で作ることにした。
ある雨の日。
「ねぇアオイ、ちょっと傘作ってみたんだけど使ってみて」
「え~、自分で作ったの? すごくな~い?」
「これなんだけどね」
「え? どうやって使うの?」
「そこの赤いボタン押してみて」
「これ?」
アオイがボタンを押すと重力制御装置が作動し雨粒がアオイの上に落ちてこなくなった。
「え~、ミサトマジすごくな~い?」
【記憶喪失】
ある男が交通事故に遭い病院に運び込まれた。
3日後に男は意識を回復した。
「クソッ、思い出せない」
「何をですか? 名前ですか? ご家族のことですか?」
「人間が何のためにこの世に生まれてきたのかが思い出せない」
「そんなこと知ってる人は誰もいませんよ」
しかし男が事故を起こす数時間前、神の使いが男の前に現れ人間がこの世に生まれてきた意味を説いていたのだ。
それは全人類、全宇宙にとってとても重要なことであった。
「あ~人間はなぜ生まれてきたんだっけ~! 思い出せない~!」
その頃、銀河の遥か彼方から邪悪な生命体が地球へと近づいて来ていた。
【記憶喪失 その2】
「それじゃ先週配ったプリント後ろから前に集めて持ってきなさい」
「先生、プリント持ってくるの忘れました」
「なに~、昨日忘れないようにって念を押したろーが」
「すみません」
「明日は必ず忘れずに持って来いよ」
「はい」
「じゃ~授業を始めるぞ。おい川田、プリント忘れた罰として宿題で出してた問題、前に出て解いてみろ」
「すみません、宿題やってくるのも忘れました」
「宿題も忘れただとぉ。お前、俺のこと舐めてるのか?」
「別にそんなことは・・・ところで先生、俺の名前ってなんでしたっけ?」
「名前も忘れただと」
「ここってどこでしたっけ?」
「自分のいる場所も忘れただと」
「オゴ、オゴオゴ、ウゴ?」
「日本語も忘れただと・・・完全に舐めてるな」
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