心臓と第二胸椎と肩関節周囲炎

時折、内臓由来と思しき肩関節の故障を診ます。
さて今日は、そんな肩の故障を負ったAさんの話です。
(ご本人に許可をいただいての掲載です。)

50代女性、バリバリのキャリアウーマンのAさん。
Aさんは狭心症の既往があり、数年前に冠動脈にステントを入れているのですが、術後は元気いっぱいスポーツ(テニスとウエイトトレーニング)を楽しんでいる、アクティブな方です。

一月ほど前、ウエイトトレーニングの後(ベンチプレス)から肩の痛みが現れ、夜間痛のため眠れなくなり、シャツを脱ぎ着するのも一苦労といった状況になってしまったとご相談いただきました。

初見時、Aさんの肩は二頭筋長頭腱炎と腱板炎を併発していました。
まだ炎症が落ち着ききっていないので、カウンターストレインという手法で筋痙攣を治め、テーピングで固定し、日中は三角巾で腕を吊り安静を保つよう指示して帰しました。

Aさんの脊柱には第2胸椎の機能障害(歪み)が見つかりました。
第二胸椎の左へと、痛めた肩からそっぽを向くように捻じれています。
※捻じれていました、なんて書くと同業の先生から笑われてしまいそうなので、「T2/type2/SRl」と書いときます。
この第二胸椎は第二肋骨の土台の一つで、肩の動きに非常に大きな影響を与えます。
なので、ここの歪みは肩関節の故障の原因として見落としたくないポイントとなります。
一方で、第二胸椎の高さの脊髄(胸髄)には心臓へ向かう交感神経の中枢があります。
なのでここの故障は心臓への悪影響をしばしばおこします。
たとえば、頻脈による動悸、不整脈によるめまい(浮遊感・めまい感=不意にクラッとくる感じ)そんな症状を起こします。
これを体性内臓反射といいます。
またその逆もあって、内臓から筋肉や関節や皮膚などに影響を及ぼすケースは内臓体制反射というのですが、Aさんの既往症には狭心症がありましたので、冒頭にあるように内臓体制反射を想起したわけです。
とはいえ、すでにステントも入れてるし、今は運動しても狭心痛は起きていない。
ちゃんと治っているわけです。
となると、胸椎に残っているのは痕跡としての拘縮だろうということになります。
これならちゃんと治療をすれば落ち着くはずです。

Aさんの場合、第二胸椎と肋骨のリングが左を向いているので、ラケットのスイングでのテイクバックでもウエイトトレーニングのプレス動作でも右肩の前がより引き伸ばされるシチュエーションが生じやすくなりますから、胸椎の歪みの方向と肩の故障の在り様にも矛盾がありません。

その後、2週ごとに3回ほど治療を行いましたが、問題なくテニスを楽しむことができるまでに回復されました。
あとはベンチのスコアが戻れば卒業です。

重複しますが、
Aさんの治療を通じて興味深く感じられたのは第二胸椎のねじれが既往症の狭心症の痕跡と考えられ、
そしてそれが運動器である肩関節に明確な損傷を引き起こしているという点です。

これ、心臓にステントはいっていなかったらきっとこんなすんなり治らなかったろうな、と思うんですよ。
実際、子宮筋腫由来と思われる腰痛(仙腸関節部)なんかは治療の効果がなかなか長続きしませんしね。

何が言いたいのかと申しますと…
もし仮に、医師との連携が取れるならば、もっと多くの苦痛を解くことができる可能性を感じずにはいられないのです。
でも、なかなかそうはうまくゆかないもので…

現状、鍼灸師やマッサージ師では医師の信用を勝ち取れるような状況にはないのですが、あきらめずにコツコツ積み上げてゆこうと思います。

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