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【インタビュー前編】栗田親方/スト2ハイスコア全一も 入学祝い金を使い込み 挙句、想定外の留年で 人生の岐路に立たされ……

 こんにちは。とよまんです。もうちょい早く更新できるかなーと思ったら、スト5対戦会やら何やらあって、またまただいぶ時間が空いてしまいました。とはいえ、「がんばりすぎない」を座右の銘に生きてるのでご勘弁ください。

 そんなわけで、ゲーマーインタビュー「あなたのゲーマー人生、教えてください」の第4回は、栗田親方です。1997年に開催された『バーチャファイター3』公式全国大会“JAVA TEA バトル甲子園”で優勝した鷹嵐使い。現在2022年で50歳ながら、ゲームへの熱意は増すばかりの栗田親方に、そのゲーマー人生を伺いました。てか、50年も生きてるのでゲーマー人生長すぎ問題が発生したので、前編後編の2回に分けてお届けします。ということで、前編では栗田親方の知られざるハイスコアラー時代を掘り下げます。 

栗田親方
 『バーチャファイター3』公式全国大会“JAVA TEA バトル甲子園”で優勝。
ハイスコア界では「T.Clue-ISD」というプレイヤーネームで活躍。格闘ゲームタイトルを中心にハイスコア全一を複数獲得。2022年50歳を迎え、ゲーム系ライター・編集を務める傍ら、個人の活動にも力を入れてる。
よかったら親方のYouTube登録してあげてください⇒ https://www.youtube.com/channel/UCcfGIBBCVmpBhhTXGA3aH6w/videos

※動画版もぜひご覧ください。更新のモチベになりますので、ぜひチャンネル登録よろしくお願いします。

スト2以前はハイスコアがメインストリーム

――仕事とかを通じて話してると、親方は超長い間ゲームやってたりするから1回しっかりお話聞きたいなと思って、今回こういう時間もらいました。よろしくお願いします。「バーチャ」のイメージしかないけど、元々はどんな感じだったんですか?

栗田親方 自分で言うのもあれだけど、むしろ「バーチャファイター」はスコアラーとしてゲーマーのピークを迎えて、その余生で取り組んだぐらいのものなんですよ。一応、気持ち的にはいまが一番ピークですけど。

――スコアラーって、昔ゲームセンターでシューティングゲームとかアクションゲームで点数を競うやつですよね?

栗田親方 そう。昔、ゲーセンのゲームのカテゴリーが「スト2」、「バーチャ」が出てガラっと変わったんですよ。メインストリームが、点数とかタイムを稼ぐゲームから人を倒すゲームに。

――確かに、「スト2」以前のゲーセンは一人用で遊ぶとか、協力プレイでアクションゲームを遊ぶのが中心でしたよね。

栗田親方 人と戦わないんですよ。でも闘争心はあるんで、何で戦うかって言うと「俺の方がゲームうめーぞ」と言うのをハイスコアとかタイムで示すっていうのが昔だったんですよ。

――そんな感じだったんですね。

栗田親方 だから「点数高い方がうまいぞ」っていう。しかもね、対戦だと「俺はあいつに勝てるよ」とか、全員がそれぞれの対戦結果を知ってる訳じゃないからなんでも言えるじゃないですか。でもスコアはもう完全にデジタルなんですよ。俺は何点、お前は何点、俺の勝ち、俺が偉いって

――なるほど。数字として出ちゃうんだ。

栗田親方 俺が言うのもなんだけど、大会で勝ったとしても「その日運が良かっただけだろ」みたいなのを言えるわけじゃないですか。そんなあやふやの世界よりもハイスコアの方がデジタルできっちり決まってていいだろうと、かつては思ってましたけど。いまやメインストリームの勢いが…。ぶっちゃけ格ゲーおもしろいんで完全に格ゲーの人になりましたけど。

――ハイスコアやってたのは、いつぐらいの時代話なんですか?


栗田親方 俺が最初にスコアを申請したのは、多分ダライアスなんですよ。初代だけら86年とかかな? だから中2くらい。

――ゲーセン行き出したのもそのころなんですか?

栗田親方
 そもそもゲーセンに行き出したのは小4とかかな? 10歳だから40年前。ゲーセンて存在に気付いた時は、「ディグダグ」、「インベーダー」、「ゼビウス」。「ゼビウス」のブーム中なのかな多分。ナムコが全盛期みたいな。そのころは、もう本当によちよち…。よちよちって言わないか、小2とか小3だったので(笑)。

――最初はどんなゲーセンに行ってたんですか?

栗田親方 遊園地のゲームコーナーみたいな地元の遊園地に連れていってもらって、大型遊戯に乗らずにゲーセンコーナー行ってたんですよ。たぶん、「やべえ子供だな」と思われてたと思う。デパートのゲームコーナーで家庭用機の試遊台がある所だったら、そこにもう一日中張り付くみたいな(笑)。

初めての全一獲得はスト2のダルシム

――そこからハイスコアをやるようになると。

栗田親方
 私、石川県金沢市。まあまあ地方ながら日本海側ではわりとデカめの都市で、観光地としてはもちろん有名なんですけど、一応そこそこ人もいたんで、たぶん何店舗かあったのかな? 集計店(※)が。

※スコア集計を行っているゲームセンター。ゲーメストなど当時のゲーム雑誌で行われていたハイスコア集計に申請を行う。

 俺が最初にハイスコアというものに気づいたのが、一番の繁華街である香林坊というところにある「ビッグキャロット金沢店」だったかな? ハイスコアとプレイヤーネームが書かれたハイスコアボードと言われるホワイトボードがゲーセンの壁にあるんですけど、ハイスコア系のゲーセンて、やっぱりハイスコアメインだからわりと目立つところにあるんですよ。

――格ゲーの大会結果が貼りだしてあるような感じですよね。

栗田親方 あそこに載ってるのがゲームがうまい人。いまといっしょですよ。格ゲーでやるじゃないですか、誰が強いんだと。「俺がそいつを倒せば一番だ」みたいな。向上心というか闘争心。それが形を変えただけですね。あのスコアを抜けば1位なんだって。

――それを抜いてみたいと思って始めたんですか?

栗田親方 仲間内で一緒にゲームしてて「俺の方がうめえ」とかよくやるじゃない。わちゃわちゃ。それの流れで、「他にうまい人がいるらしい」。「そいつらを倒してやるぜ」みたいな気持ちで、無邪気に。でも金もないんで、まともに戦うのが難しいんですけど。

――ハイスコアラーとして、上位で争えるようになったのはいつころなんですか?

栗田親方 それは明確にあって、中高のころは小遣い的な問題もあって難しくて、あともうちょっとぐらいはありつつ、実際に全一スコアというのを取ったのは「スト2」のダルシム。「スト2」が、ちょうど高校卒業して大学に行く間ぐらいに出たんですよ。

――タイミングよかったですね。

栗田親方 大学入学祝いの小遣いを親に10万ぐらいもらって、それを全部つぎ込んで……。マネーパワーと時間のあったところだったんですよ。

――全額(笑)。

栗田親方 全一取ったのは「スト2」の初回で、キャラ別集計ってやつなんですよ。ダルシムでオールパーフェクトで全一獲れて。でも、まだ点数効率とか全然甘かったんで、その次の月からサクッと抜かれてましたけど(笑)。

――スト2の最初の頃って対戦ていうか一人用中心でしたよね。

栗田親方 基本1人用じゃないですか。対戦が流行り出したのは結構経ってからの印象ですね。いきなり戦い出した人っていないと思うんですよ。最初は四天王を倒そうみたいな状態じゃないですか。

――それまでのゲーセン文化的に一人用中心だから、ゲーセンの仕組みもそういうのに合わせて対戦台とかじゃないし。

栗田親方 当時、協力プレイは結構いろんなゲームがあったんで、1Pと2Pが横並びだったんですよ。だから、ちょっと対戦もやってみるかってなると、人が座ってるとこに行って「すいません対戦いいですか?」って横に座らないといけないんですよ。急に座られてもやばい人なんで(笑)。

ハイスコアは攻略力が重要

――スコアラーの人ってパターンはどうやって見つけてくんですか?

栗田親方
 ゲームにもよるんですけど、シューティングゲームとかだと、敵の出現パターンがだいたい決まってるので、ゲームのシステムを理解するところからじゃないですかね。全部倒せば点数を得られるのかとか。点数がどうやって入るのかの仕組みを理解する

――ここ倒すと点が入るとか、それを繰り返していくんですね。

栗田親方 最近でもNAL(ホームステイアキラ)が、たぶん「怒首領蜂」でちょっとバグっぽいんだけど、点数が伸びるやり方を見つけたみたいなんですよ。ただ、すげえ超テクニックがないとできないバグらしく、ビタで1フレーム目押しで倒すとか言ってた気がするんだけど、そういうのを上手く見つけた人が勝つみたいな世界。だから、格闘ゲームと一番違うのは、人間性能より攻略力が重要。

――攻略を見つける力ですか。

栗田親方 そう。たとえば、俺はもう攻略型なんですよ。当時の格闘ゲームだったらCPUが8人ぐらい出てくるとして、必殺技の当て方とかで点数が変わったりするので、いろんなパターンを編み出して、それを組み合わせていくっていうのが楽しくてやってたんですよ。

――パターンの構築が醍醐味ですよね。

栗田親方 そうですね。パターンが間違っていたら、どんだけうまいことやっても絶対ハイスコアは出ないんですよ。オレは「ストリートファイターZERO」シリーズのスコアやってた時期があるんですけど、タイムを95秒以上残して勝つとむちゃくちゃボーナス倍率がかかるんですよ。で、96秒だとさらに倍率かかるので、一面とかの弱い敵をいかに早く倒すかが重要なんです。だから本当にハイスコアを出す時は、10分の1でも決められるパターンがあったら、それ狙わないといけない。だから“電プチ”するんですけど、電プチってわかります?

――電源パターンみたいなのは聞いたことありますけど。

栗田親方 それとは違って、たとえば、開幕無理やりでも相手を転ばすっていうパターンを決めないといけないときに、運悪く転ばなかったらすぐ電源を落としてやり直し。

――電源落としてやり直すから電プチですか(笑)。

栗田親方 ふつうゲーセンは一般の人が電源を切れないんですけど、こたつのスイッチを改造したやつを付けてもらって、開幕決まらなかったらプチってやって、また五十円入れて…そんな感じですよ(笑)。

――スコアラーって1人用だから長くできるのかなと思いつつ、スコアやってると秒で50円がなくなりそうですね(笑)。

栗田親方 当時、ハイスコアの集計をゲーメストというアーケードゲーム専門誌がやってたんですけど、月末締め切りだったんですよ。だから月末が近づくまではお金がもったいないので、失敗しても練習とか新しいパターンの構築のために最後までやって。その時から電源プチしてたらマジで月いくらかかるんだろってなるんで(笑)。

――本気でやるのは月末?

栗田親方 本気で繋げるまでやるのはもう締め切り日。もしくは締め切りの前日。

ハイスコアとテクノロジーの進化

栗田親方 電源パターンも一応説明しておくと、電源を入れたあとに「シンクロ連」という1フレームごとにオンオフが切り替わる連射装置があるんですけど、それをスタートボタンに付けるんです。それで電源を一回切って、お金を入れて、連射でスタートボタンをずっと押してると、毎回同じタイミングでゲームを始められるんですよ。

――タイミングが重要なんですか?

栗田親方 昔のゲームって戦う相手の順番がランダムだったじゃないですか。でも電源パターンを使うと、1人目の相手を必ず同じ相手にできるので、稼ぎやすい順番にある程度パターン化できるゲームがあったんですよ。

――すごいっすね。

栗田親方 その派生テクニックで、1回デモを回してからスタートするとか、2コインテンパと言われるものもありましたね。

――2コインテンパってなんですか?

栗田親方 1コイン目に全部連射で特定のキャラで初めて、負けて、次のコインで最速スタートすると、同じパターンを選べるとかそういう感じのですね。

――すごいな。そういうのをゲームごとに誰かが発見するんですね。

栗田親方 連射装置とかテクノロジーの進化との戦いという面もある文化でしたね。

思い出のタイトルは「ヴァンパイア」

――ハイスコアでゲームにのめり込んだと思うんですけど、何か思い出に残ってる作品てあります?

栗田親方 思い出でいけば初代「ヴァンパイア」ですかね。大学2年まではストレートで順調に行ってたんですけど、想定外のことが起きて(笑)。

――進学的な話?

栗田親方 ちょっと進学できなかったケースがありまして(笑)。

――(笑)それはゲームのやりすぎで?

栗田親方 俺、効率よく生きてたんですよ。テスト前日しか、基本勉強しなかったんですよね。テストが2科目なら徹夜で可は取れるんです。でも3科目がキツくて(笑)。3科目があった時に先輩からこの教科は再テストをしてくれる先生っていう情報が出てくるので、「明日の一回戦は捨てて、再テストで取ろう」みたいなことを考えるんですけど、俺が受けた年だけ再テストがなくて…詰んだんです(笑)。

――留年?

栗田親方 そうですね。そこから長いゲーマー生活が(笑)。それがなかったらいまの俺はないぐらいの出来事でしたね。

――(笑)。

栗田親方 まあ結果オーライですね。あれが俺の人生の岐路でしたよ。あの先生が再試をしなかったことによって、私のゲーマー人生が大きく開けたと言えるかもしれない(笑)。

――よくありますよね。大学行って時間があるからゲームやってそのまま8年在籍して、卒業しないで終わるみたいな(笑)。

栗田親方 そのときに、ちょっとゲーム真面目にやろうと思って、ゲーメストのスコアって団体戦もあるんですけど、それをやり込んだんですよね。

――1人用のゲームなのに団体戦??

栗田親方 店舗ごとに全一をとった星の数を年間で競って、一番を取ったところはゲーメスト大賞で表彰されるっていう。ゲーメスト大賞は、「スト2」とかそういうメーカーとか表彰する場で、店舗も同列で表彰されるんですよ。さすがに「素人ですみません」て感じですけど、声優さんがちゃんと司会してみたいな。あの頃なんで映像とか残ってないけど。

――僕はゲーメストで読んだことありますよ。

栗田親方 そう。「ヴァンパイア」がなぜ思い出に残るかっていうと、マンガの「男塾」とか敵を仲間にしてくじゃないですか。あんな感じで「ちょっと全一狙おうと思うんだけど、一緒にやんない?」と、金沢市内の競合ゲーセンの常連たちに声を掛けて、仲間を増やしていったんですよ。

――完全にマンガっすね(笑)。

栗田親方 それでみんなで力を合わせて「ヴァンパイア」をやり込んで、ほとんど全キャラうちの店で星を稼いだ結果、ハイスコア店の1位が取れたんですよ。当時、「T.Clue-ISD」という名前でやってたんですけど、そのころにハイスコアラーの中でぼちぼち知れ渡る感じになったのかな。

――すごいですね。ちなみに、ハイスコアは格闘ゲーム中心だったんですか?

栗田親方 そうですね。「スト2」のあと「マッスルボマー」、「エイリアン対プレデター」は3キャラぐらい全一を獲りました。一応、あの当時なんで確証はないですけど、ダッチ・シェイファーで初めて1コインクリアーしたのは俺らしいですよ。自分でも全然知らなかったですけど(笑)。「D&D」も初代のやつは全一獲りましたね。格闘ゲームが多かったのはシステム的に全一を稼ぎやすかったから。

――全一を稼ぎやすいといいますと?

栗田親方 キャラ別で集計してくれるので、同じシステムでキャラ変えるだけなので効率よかったんですよ。だから、それで1位を取って次の年は2位、3年目に3位を取って、そろそろもう満足かなって。

――シューティングはやらなかったんですか?

栗田親方 シューティングはコストが高かったからあまりやってなかったんですけど、一応「ソルディバイド」というゲームで全一を取ったりしました。その頃にちょうど「バーチャ」も全一を取ったんですよ。

格ゲーコミュニティーとスコアラーコミュニティーの違いは?

――格ゲーの話に行く前に、スコアラーのコミュニティーや文化について聞きたいのですが、どんな感じだったんですか?

栗田親方 さっきいろんな店舗の話とか出てたけど、トータルは格ゲーと似た感じ。やっぱり各地に名前だけ知ってるすげえやつがいて、ゲーメストがあったんでプレイヤー名とすごい店みたいなのは情報があったんですよ。だから連絡を取る時もゲーメストにある店の電話番号とかに突然かけて「すいませんちょっと行っていいですか?」みたいにやってる人もたぶんいたんじゃないすかね。俺が初めて東京に来た時は、町田のUFOってゲーセンの乱丸さんのところに居候したんですけど、そういう感じで遠征なんかもいろいろありましたよ。

――店に電話するってヤバいっすね(笑)。

栗田親方 店に電話はちょっと盛りすぎたかも(笑)。むしろ直接行って話しかけるとかで、多分知り合った人がこう点を線にするみたいな感じだったと思う。たとえば「ヴァンパイア」だったら、いい点とってる人のゲーセンに行って、「このキャラで稼いでるから、この人かな?」みたいな感じで。

――顔がわからないからそんなですよね格ゲーも(笑)。

栗田親方 京都のゲームズウィルという相当昔から競合のゲーセンがあって、そこによくお世話になっていたんですよ。仲が良かったから2か月に1回ぐらい遠征して、四畳半ぐらいの部屋に5、6人寝て……とかいう経験も格ゲーと一緒じゃないですか。

――遠征あるあるですね(笑)。

栗田親方 格ゲーコミュニティと一番違うのは、ハイスコアはパターンを構築するのが重要なので、1回パターンを見られちゃうと人間性能高いやつがコピーして終わりなんですよ。だから、NAL(ホームステイアキラ)さんは「パターンを見たら俺の点抜くんだけど」みたいな苦情を言われてたのを覚えてる(笑)。NALさんは人間性能が高くて、ほかの人が頑張って作り上げたパターンを軽くパクってコピーできる能力を持ってるんですよ。格ゲーでいうふ〜どみたいなもん。

――素人ながらの質問ですけど、ハイスコア狙ってるときにパターンを見せないようにしたりするんですか?

栗田親方 パターンは見せないですね。プレイをやめます。やめるか、あえて違うパターンをやってブラフかけたり。

――徹底してるんですね。ライバル店の人が偵察に来たりするんですか?

栗田親方 偵察はマジであるんですよ。「あれ?なんか今日変なやつが後で見てる」なみたいな。バレないようにすげえ遠くから見てるんですけど、常連が大体いるんで「あいつスパリ(※)に来たな」って、その人に気付かれないようにこっそり「あいつスパってるから気を付けろよ」って教えるんですよ。ゲーセンうるさいんで近寄って喋ってたら、たぶんスパりに来た人には聞こえないんで。

※スパる:スパイ活動すること。ライバルのパターンを盗みに来ること。

――そこもチーム力ですね(笑)。

栗田親方 ライバル店がわざわざ遠征費かけて来てスパリに行くんですよ。それだけパターンが重要っていうことなんですけど。

――格ゲーなんか昔は、一発勝負の全国大会前はライバルにプレイを見せたくないから捨てゲーするとかも聞いたことありますよね。

栗田親方 それの極端な感じで、ハイスコアのパターンは料理のレシピみたいなもんですからね。見られたら終わりますよ。そこが一番違うかな。点数でデジタルで戦うというのもあるけど、やっぱパターンが最重要でそれをつなげる時に人間性能がものを言うみたいな。俺は開発力があったんで短期間で星を稼ぐ能力は高かったんですけど、最後の身体能力の殴り合いになると、結構ダレてきて「もういいやって」。

――人間性能の競い合いになるときつそうですね。

栗田親方 だから、一番最後まで極まったいわゆる最終スコアまではあんまりやってなかった。そこまで行っちゃうとパターンが決まって、もうひたすら繰り返すだけ。精度高く、あとは運よく繋がるのを待つみたいな。

――そうなるともうすごい世界ですよ。

栗田親方
 スコアで最後に一個だけ文化として話しておきたいことが。ハイスコアの世界ってF1に近いところがあるんですよ。F1ってエンジンとかいろんな技術の戦いなんですけど、なんでもありにしたらエスカレートし過ぎて、高性能なマシンがぶち抜いて勝ってた時代があったらしく、それでレギュレーションである程度抑えるみたいなルールができたらしいんです。

――確かにそんなこと聞いたことありますね。

栗田親方 スコアも昔はレギュレーションがなかったんですよ。最初は連射装置ぐらいしかなかったんですけど、次第に「真空波動ボタン」とかマクロを組み始めて…。

――真空波動ボタン(笑)。

栗田親方
 だから「ストZERO」とかは俺も人づてに聞いて、真空波動ボタンをセットしてやってたんですよ。だから難しいコンボでも毎回安定して出るって感じで稼いでたんですけど、それの究極が大阪のNASAってゲーセンの「バーチャ2」。

――バーチャはクリアータイムでしたっけ。

栗田親方 そう。そこがタイムの全一を相当取ってたんですよ。遊びに行ってみたら、「バーチャ」って3ボタンとレバーだけじゃないですか。だけど、そこのゲーセンの「バーチャ2」は20ボタンくらい付いてるんですよ(笑)。

――20ボタン(笑)。

栗田親方 20は言い過ぎた。10ボタンぐらい付いてて「バックダッシュ→前ダッシュ→狐延落」ボタンみたいなやつとか。もう3ステップぐらい全部丸め込んだボタンがいっぱい付いていて、レバーを触らないんですよ。1面はこのボタンを押して、つぎにこのボタンを押して~みたいな。それがもう行き過ぎだみたいになって、それからレギュレーション的に「同時押しボタン」と「連射ボタン」はOKだけど、他は駄目ですよみたいに決まったの

――とんでもないすね(笑)。でも格ゲーも最近はいろいろルールができましたしね。

栗田親方 そうそんな感じで。まあすごかったですわ。NASAの科学力は世界一だっていうことで、衝撃的でしたね。あれ映像に残したかったな(笑)。


 という感じの親方のハイスコア時代でした! バーチャの親方しか知らなかったからだいぶ新鮮な気持ちでお話しを聞けました。次回の後編では、「バーチャ全一時代~親方の今後」についてをお届けします。まだ、なんも手をつけていないので、たぶん公開は2週間後かなw そんなわけで、TwitterやらYouTubeやらをフォローしてお待ちください! それではまた次回!!

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